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ゴミ焼却場が再エネ基地+スキー場に変身――映画『コペンハーゲンに山を』からみる未来をサステナブルに変える方法

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ゴミ焼却場の屋上が緑のスキー・スロープやハイキングコースとなった「コペンヒル」©2020 Good Company Pictures

「コペンハーゲンには山がない、でもゴミの山は作ることができる」。映画はこの建築家の発想を基に、老朽化したゴミ焼却場を、エネルギー基地とスキー場やクライミングウォールを備えたサステナブルな山「Copenhill(コペンヒル)」に変えた再開発ストーリーだ。2011年の設計コンペで、デンマークの建築家ビャルケ・インゲルス率いるBIG建築事務所が提案したこの奇抜な案が採用され、さまざまな問題をかかえながらも実現させ、市民や観光客が集う観光スポットになるまでをたどる。未来をサステナブルに変えるアイコンとなったコペンヒル誕生のドキュメンタリーである。(環境ライター箕輪弥生)

コペンハーゲンの灯台となったコペンヒル

デンマークの有名なマーメイド像から1.8キロメートル と、コペンハーゲンの中心部からさほど遠くない場所に立地する「コペンヒル」は、建築家ビャルケ・インゲルス氏の言葉で表現すれば「環境や都市計画を考える人にとって灯台のようなものになった」。

事実、コペンハーゲンは2025年までにカーボンニュートラルを実現することを宣言する世界的にも一歩進んだ環境都市である。コペンヒルはそのゴールをひとつの形として提示したとも言える。

建築界のイーロン・マスクとも評される建築家ビャルケ・インゲルス©2020 Good Company Pictures

50年前に建てられたごみ焼却場の建て替えにBIG建築事務所が提案したアイデアは、ゴミ焼却施設を山型にして、発電や熱供給のエネルギープラントと、スキー場とクライミングウォールなどのレクリエーション施設が融合したものにすることだった。コンペでは満場一致でこのアイデアが選ばれ、選考した人たちのこのアイデアへの興奮度、共感が映画からも伝わってくる。

コペンヒルはゴミを資源に、コペンハーゲン市内の年間3万世帯分の電力と7万2000世帯分の暖房用温水を供給するエネルギープラントだ。

同時に、コペンヒルは85メートルのクライミングウォールや9000平方メートルに及ぶスキー・スロープ、そしてスロープの周りには樹木や植物を配した「ルーフ・ナチュラルパーク」があり、ハイキングコースやスキーを楽しめる場所にもなっている。

山のないコペンハーゲンでは、頂上に立つと見渡せる市内の景観は、市民にとってもこれまで見たことのない魅力的な光景であり、新鮮なものだ。外壁はアルミニウム・レンガとガラス窓があり、自然光を内部へと誘導している。

さまざまな用途を持つ建築物は、安全性を担保しつつ廃棄物処理を行う©2020 Good Company Pictures

そのため、頂上に行くエレベーターからもしっかりとゴミ焼却施設が見える。環境教育のための施設としても機能していて、学校からの見学に来る生徒が絶えないという。廃棄物処理やエネルギープラントを実際に見て、体験する場所にもなっているのだ。

ゴミ処理から出る煙には通常有害物質が含まれるが、ここでは技術によりそれをほとんど除去している。施設上部から出る煙も、有害物質を含まず、クリーンな廃棄物処理場の象徴となっている。

映画では計画がスタートした2010年から2019年にオープンするまでを、会議から施工中の様子、完成した姿までを丹念に追う。プロジェクトには多くの課題が生まれ、経済的な問題も大きく立ちはだかる。建築家の理想と資金面のギャップを埋めていかなければならないプロジェクトメンバーの葛藤も描かれる。

建築家インゲルス氏は「これは世界的なプロジェクトだ。未来を変えることができるというメッセージを伝えられる」と妥協を許さない姿勢を示すが・・。

創造型の教育と先進的テクノロジーが作るサステナブルな未来

夢のようなアイデアを形にできるのは、デンマークの文化的土壌と先進的技術の融合から©2020 Good Company Pictures

渋谷のシアター・イメージフォーラムで初回の上映後、デンマーク・ロラン島在住のジャーナリスト・コーディネーターのニールセン北村朋子さんと環境エネルギー政策研究所(ISEP) の飯田哲也所長のトークショーも開かれた。

北村さんは「未来の廃棄物についての考え方を明確に示した映画だ。欧州ではゴミを熱や電気をつくるエネルギー源としてとらえており、コペンヒルは私たちの生活の循環が感じられる施設だ」と話す。

北欧のエネルギー事情に精通する飯田哲也所長は、「デンマークは電力の約8割を再生可能エネルギーで賄っている。70年代からゴミ焼却の熱利用が法律で決められており、コペンハーゲンの地域熱供給は9割を超える。廃棄物焼却の熱も石油ショックのあった70年代から使われている」と指摘する。

一方で、日本のごみ焼却施設の数は1000カ所を超え、他国に比べて圧倒的に多い。2008年のOECDのデータによると、世界の焼却炉の半分以上は日本にあるという。

しかし、発電設備のある施設はそのうちの3割強、熱利用をする施設も7割程度。それも温水プールなどのレジャー施設での利用が多く、本格的な熱利用からは程遠い。つまり、みすみす再生できるエネルギーを無駄にしているということになる。

飯田所長は、「デンマークの進んでいるところは、50年前から物理学の原則を大事にして熱利用なども積極的に行い、同時に洋上風力など最先端のクリエイティブなソリューションも追及していることだ」と分析する。

北村さんは「デンマークの教育ではどんなユニークなことを話してもばかにしない。答えは一つではないことを教えるし、創造型の教育が根付いている」と話す。

未来を変えていくような建造物が作られるのは、デンマークの教育、そして基本原則に基づきながらも目標を見据えた先進性をもった政策の決め方があるからであり、そういったものがコペンヒルを生み出す土壌となっているようだ。

コペンハーゲンに山を

1月14日より、シアター・イメージフォーラム他全国で公開中(配給:ユナイテッドピープル)

箕輪 弥生 (みのわ・やよい)

環境ライター・ジャーナリスト、NPO法人「そらべあ基金」理事。
東京の下町生まれ、立教大学卒。広告代理店を経てマーケティングプランナーとして独立。その後、持続可能なビジネスや社会の仕組み、生態系への関心がつのり環境分野へシフト。自然エネルギーや循環型ライフスタイルなどを中心に、幅広く環境関連の記事や書籍の執筆、編集を行う。著書に「地球のために今日から始めるエコシフト15」(文化出版局)「エネルギーシフトに向けて 節電・省エネの知恵123」「環境生活のススメ」(飛鳥新社)「LOHASで行こう!」(ソニーマガジンズ)ほか。自身も雨水や太陽熱、自然素材を使ったエコハウスに住む。

http://gogreen.hippy.jp/