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ブランドが社会とつながる、持続可能な未来へ  「サステナブル・ブランド ジャパン」 提携メディア:SB.com(Sustainable Brands, PBC)

生活者が考える、SDGs達成に貢献するブランドイメージ調査「JSBI2021」 上位企業の取り組みを聞く

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国内企業の持続可能な環境・社会への取り組みとブランドイメージを独自に調査するジャパン・サステナブルブランド・インデックス(Japan Sustainable Brands Index:JSBI)の最新版(2021年版)が、サステナブル・ブランド国際会議2022横浜で公表された。調査対象の企業は第1回(2020年版)の180社から300社へと大幅に増加。サンプル数も9000人から1万5000人へと拡大した。その結果から見えてきたのは、SDGs達成に対する生活者の期待にまだ多くの企業が応えられていないという現実で、企業が取りくむ余地は大きいということだ。(いからしひろき)

トヨタと良品計画が今年も1位、2位 業種別では消費財業界の健闘が目立つ

高島氏、田中氏、青木氏

ファシリテーター
青木茂樹・サステナブル・ブランド国際会議 アカデミックプロデューサー
パネリスト
高島太士・一般社団法人NEWHERO
田中理絵・電通 グローバル・ビジネス・センター シニア・マネジャー、電通グループ DJNサステナビリティ推進オフィス

JSBI調査の結果発表と概要説明は、2月24日のサステナブル・ブランド国際会議の基調講演で行なわれた。ファシリテーターを務めたのは青木茂樹氏、パネリストとして、広告映像を手がけるドキュメンタリストの高島太士氏と電通の田中理絵氏が登壇した。

JSBIでは、SDGsへの貢献イメージを指標化した「SDGs貢献イメージ得点」と、SDGsの17目標(質問数30)に照らし合わせて各企業の取り組み度合いを評価した「SDGs評価得点」の合計点を基準化し、総合得点を出している。

基調講演では上位20社が発表された。1位のトヨタと2位の良品計画は前年と同じ順位。3位には前年の25位から大きく順位を上げたスターバックスジャパンがランクインした。

電通の田中氏は、SDGsの注目領域である森林保全や農業などに取り組み、独自のコミュニケーションを実施する住友林業(4位)、クボタ(6位)、王子ネピア(11位)に注目。

NEWHEROの高島氏は、7位のP&Gの広告を例に挙げ、「トランスジェンダーや障がいを持つ方などを起用し、“応援したくなる人を企業として応援する”という広告が共感を得ているのではないか」と分析した。

会場では、企業のイメージ(SDGs貢献イメージ得点)と取り組み度合い(SDGs評価得点)の指標にギャップがある企業のランキングも発表された。

「SDGs貢献イメージ得点」より「SDGs評価得点」が高かった企業は、SDGs達成に取り組んでいるが消費者にそのイメージを持たれていない企業とも考えられる。その上位には東京電力、NHK、ワタミグループ、大和ハウス工業、大成建設といった企業が並んだ。青木氏は「知られるためのコミュニケーションが重要になる」と指摘。

一方、「SDGs評価得点」より「SDGs貢献イメージ得点」が高かった企業は、やっているというイメージが強いが、具体的に何をやっているかが認知されておらず伝えきれていないといえる。

業種別ランキングと傾向

さらには、調査対象の19業種300社の平均得点をもとにした業種別ランキングも紹介した。注目は3位の「化粧品・トイレタリー」(前年5位)と7位の「流通・小売業」(前年11位)で、消費活動がコロナから復活しつつあることを示していた。

SDGsの認知度、1年で58.1%から84.2%へ

同時に行ったSDGsの認知度調査では、前年58.1%だった認知度が今回は84.2%まで上昇した。

性別に基づき調査した「SDGs重要度」では、男性より女性の方がSDGsを重視している傾向にあることが分かった。特に目標1「貧困をなくそう」、目標5「ジェンダー平等を実現しよう」、目標6「安全な水とトイレを世界中に」、目標10「人や国の不平等をなくそう」、目標16「平和と公正をすべての人に」への関心が高く、そうした課題に女性が直面していることを示唆している。

SDGs評価得点を業種別に分類した「業種別SDGs企業評価」では、多くの業種が目標3「すべての人に健康と福祉を」、目標8「働きがいも経済成長も」への貢献イメージで高い評価を得ている一方、目標10「人や国の不平等をなくそう」や目標14「海の豊かさを守ろう」は総じて低く、企業が取り組むべき領域や課題はまだ多いことが分かる。

高島氏は「自分の業界がどこにあり、何に注目されているかを分析することが大事。『出版+教育、広告、印刷業』であれば、本業に関連する目標4『質の高い教育をみんなに』への貢献が高く評価され、表では赤色になっているが、他業種の目標4の取り組みを促進したり、色のついてない目標や点数の低い目標(青色)で、すでに取り組みをしていて広告を打てるところがあれば、新しい表現にチャレンジして、赤色に変える取り組みができるのではないか」と提案した。

青木氏は「SDGs貢献イメージ得点はマーケティングや広告、流通活動が反映され、SDGs評価得点は広報、サステナビリティ戦略、CSR活動が反映されていると考えられる。両者が連動することが重要で、そのためにも従来の企業の縦割り構造を変えていくことが必要だ。パーパスの下で、両者を連動させていく経営者層の意志が求められる」と締め括った。

上位企業が大切にしているのは、取り組みをわかりやすく伝えること

秋吉氏、北村氏、岩﨑氏、青木氏 (左上から時計まわり)

ファシリテーター
青木茂樹・サステナブル・ブランド国際会議 アカデミックプロデューサー
パネリスト
秋吉武士・良品計画 無印良品 東京有明 副店長
岩﨑有里子・イケア・ジャパン Communication Country Communication Manager (オンライン)
北村暢康・サントリーホールディングス サステナビリティ経営推進本部 サステナビリティ推進部長

翌日のセッションでは、「サステナブルな世界を生み出すリーダー企業の『解体新書』」をテーマに、JSBIで高得点を獲得した3社を招き、青木氏が取り組みについて話を聞いた。登壇したのは、全体2位の良品計画、16位(飲料・嗜好品部門2位)のサントリーホールディングス、37位のイケア・ジャパンだ。

まずは3社の社内での取り組みについて聞いた。

良品計画の秋吉武士氏は、商品開発には3つのコンセプトがあると言う。それは「素材の選択、行程の点検、包装の簡略化」だ。無駄を省いて本質とは関係ないことはやめるというシンプルなものであり、それが環境に対する取り組みに結びついている。

サントリーの北村暢康氏は、「評価の源泉は何をやっているのかというファクト」だと語った。サステナビリティは言うだけではなく、やらなければいけないものであり、「それは企業の責務」という言葉に非常な重みを感じた。

イケアの岩﨑有里子氏は、社内研修の重要性を説いた。同社では「従業員全員がサステナビリティのアンバサダー」(岩﨑氏)だと考えており、採用の際はサステナビリティの考え方を含むイケアのバリューと合うかどうかも重視しているという。

次に、顧客接点をつくるための取り組みについて聞いた。各社ともBtoC企業であり、SDGs貢献イメージ得点も非常に高いからだ。

良品計画の秋吉氏は、「そもそも“役に立つ”ということを大戦略として掲げている」と述べた。それは個々の客だけでなく地域にも当てはまるといい、実際各店舗にはある程度の権限を与えられ、それぞれの地域のニーズ開拓に力を入れている。

サントリーについて、北村氏は「大事なのは情報開示と情報発信。ただし、サステナビリティの場合は盛ることなく、相手に合わせた接点かつ相手に合わせたやりかたで説明をしていかなくてはならない。それが社会からの信認獲得につながる。ファクトをベースに“わかりやすく”伝えることも必要になる」と説明した。

イケアは実店舗を使ったコミュニケーションに力を入れている。例えばクライメートフットプリントが通常のミートボールより9割少ない植物由来の「プラントボール」を販売する際には、売り場に目立つのぼりを掲げ、いわゆる顔ハメ写真パネルなどを設置し、分かりやすく伝える工夫をしたという。

3社の取り組みに共通するのは「わかりやすさ」。サステナビリティの取り組みの発信にどう取り組んでいけばいいのか分からないという企業にとって大いに参考になるものだった。

いからし ひろき

プロライター。2人の女児の父であることから育児や環境問題、DEIに関心。2023年にライターの労働環境改善やサステナビリティ向上を主目的とする「きいてかく合同会社」を設立、代表を務める。