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第4回未来まちづくりフォーラム⑤ 2022年以降のまちづくりを考える これからの地域と企業の連携とは

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「第4回未来まちづくりフォーラム」のクロージングでは2つの特別セッションが行われた。一つ目のセッションは、札幌市における地域循環型のサステナブルなまちづくりの取り組みをテーマに、同地でまちづくり事業に携わる企業が今後の課題やビジョンについて語った。二つ目のセッションでは、SDGs時代のライフイノベーションとは何かをテーマに、企業とメディアから3人のパネリストを迎えて議論した。(岩﨑唱)

札幌が仕掛ける、地域循環型サステナブルなまちづくり

田口氏、長谷川氏、熊沢氏

パネリスト
内川亜紀・札幌駅前通まちづくり 統括マネージャー (オンライン登壇)
熊沢祥太・三菱地所 北海道支店 コマーシャル不動産事業ユニット 統括
長谷川隆三・フロントヤード 代表取締役
ファシリテーター
田口真司・エコッツェリア協会 (一般社団法人大丸有環境共生型まちづくり推進協会) 事務局次長SDGsビジネス・プロデューサー

北海道の人口約500万人のうち約200万人が住む札幌市は、北海道の行政、経済、文化の中心を担っている。このセッションではエコッツェリア協会の田口真司氏がファシリテーターを務め、公共空間を生かしまちづくりを実践している札幌駅前通まちづくりの内川亜紀氏、北海道を体感できる新しいホテルの建設・運営によりまちづくりに取り組む三菱地所の熊沢祥太氏、札幌のまちづくりのコンサルティングに長く携わっているフロントヤードの長谷川隆三氏の3人をパネリストに招き、札幌のまちづくりについて話し合った。

最初に長谷川氏が、2016年に制定した「札幌市第2次都心まちづくり計画」について説明。「札幌は、地域循環型で環境的にも経済的にもサステナブルなまちづくりを志向している。その中で重視しているのが“ヒトやモノが出会って交わる場”をつくること。まちのあらゆる空間をショーケースにして交わりを意図的につくり、何かが生まれるきっかけをつくろうとしている」と述べ、今後は「より経済とまちづくりの結び付きを強くしていく必要がある」と指摘した。

続けて、「公共空間を中心に変化してきた札幌駅前通地区のまちづくり」をテーマに、札幌駅前通まちづくりの内川氏が取り組みを紹介した。内川氏によると、札幌駅前通地区は官公庁や銀行、商社、ホテルなどが建ち並ぶビジネス街だが、「賑わいに乏しい」といわれ、さらに大部分のビルが建物の耐震化等の更新時期を迎えて建て替えも加速している。都市の顔としてふさわしい街並みをつくり、次世代につなげていくことを目的に2010年、エリアマネジメント組織「札幌駅前通まちづくり株式会社」が設立された。

現在、同社では札幌駅前通地下歩行空間(チ・カ・ホ)と札幌市北3条広場(アカプラ)で、さまざまなイベントやマルシェ、ワークショップのほか、人材育成なども手掛ける。「チ・カ・ホで開催しているKurachè(クラシェ)というマルシェでは生産者とお客様のコミュニケーションを重視し、両者のつながりをつくることを目指している。アカプラでは、2014年からサッポロフラワーカーペットというイベントを夏に開催し、花びらや自然素材を用いて市民の手で一つの大きな絵を作り上げている。老若男女、国籍を問わず参加でき、初夏の札幌観光の目玉となり、道内の花き産業の振興にもつなげていきたい」と紹介した。

「まちづくりは多様な方の参加がキーワードになる。公共空間を活用し、そこに関わる人たちとの対話、連携を促すハブとなるのが私たちの会社の役割。そのために必要な事業を実践していく」(内川氏)

三菱地所は2021年10月に大通公園前に「北海道を体感する」をコンセプトとし、9階から11階に純木造フロアを有する木造ハイブリット構造のホテル「ザ ロイヤルパーク キャンバス 札幌大通公園」を開業した。ラウンジや客室にも北海道産の木材がふんだんに使われている。熊沢氏は「北海道産の木材を建物はもちろん内装や家具にも活用し、レストランでも北海道各地の新鮮な食材、お酒を提供し地産地消を目指している。地域の魅力と体験、空間を掛け合わせ、北海道の良さをモノだけでなくストーリーとしても伝えていきたい」と話す。

ホテル2階にはギャラリー空間を設け、地元アーティストの作品を紹介。そのアートや道産材製の家具、植栽などをホテルで宿泊者が購入できる仕組みになっている。また、興味深い取り組みとしては屋上をイベントスペースにして焚き火体験やシネマ上演などを行っている。熊沢氏は「道内におけるモノ・コト・ヒトがつながる仕掛けをつくり、それ自体をホテルの商品価値にできないかと考えている。イノベーションが生まれるサステナブルなまちづくりを行いたい」と述べた。

その後、ディスカッションが行われ、田口氏が「まちづくりと経済の組み合わせは難しい。一民間企業としてまちづくりに携わってみてどうか」と問うと、熊沢氏は「北海道の魅力を発信しきれていない実情がある」とし、ホテル滞在中のほんの隙間時間に、短期の旅行では知り得ない、北海道の奥深い魅力を空間を通して伝えることが、ホテルのブランディングや価値創出につながっていると説明した。

さらに田口氏が「まちづくりはNPOや社団法人などが行うことが多いが、株式会社として取り組む思いは」とたずねると、内川氏は「まちづくりのキーワードは財源確保。いろいろな事業を展開することで、収益を生み出し、さらにまちづくりに還元できるという点がメリットだ。株式会社として取り組むことによる自由度もある。札幌には、まちづくりに取り組む企業が他にもある」と語った。田口氏は「皆さんの地域でも今日の議論を生かしたまちづくりに取り組んでいただきたい」と締め括った。

SDGs時代のライフイノベーションとは

髙津氏、庵原氏、笹谷氏

パネリスト
庵原悠・オカムラ ワークデザインストラテジー部 コンサルティングセンター
髙津尚子・日本製紙クレシア 営業推進本部 取締役 本部長
南麻理江・BuzzFeed Japan ハフポスト日本版 コンテンツデザインチーム コンテンツリード (オンライン登壇)
ファシリテーター
笹谷秀光・未来まちづくりフォーラム 実行委員長

続くセッションでは、未来まちづくりフォーラム実行委員長の笹谷秀光氏がファシリテーターを務め、オカムラの庵原悠氏、日本製紙クレシアの髙津尚子氏が自社の取り組みを紹介し、メディア側からの視点としてハフポスト日本版の南麻理江氏がコメントをする形でセッションを進めた。

最初に庵原氏がオカムラの取り組みを紹介した。オカムラは家具づくりから、その家具を収める空間づくり、オフィスづくりを行い、さらにオフィスだけではなくそこで働く人の働き方改革にまで事業領域を広げている。

庵原氏は「2015年にWORK MILLという、働く環境を変え、働き方を変え、生き方を変える活動を始め、Forbes JAPANと共創する形で雑誌を発刊したり、ウェブマガジンによって情報発信をしたりしている。また、これからの働き方や働く場の在り方を考える共創空間を運営している。この活動はSDGsのいろいろなゴールにもつながっている。これまでは仕事をするためにオフィスがあったが、コロナ禍の経験を経て仕事をする場はオフィスだけではなくなった。こうした社会変化の中でワーク・イン・ライフ環境をどうつくるかが求められている」と述べた。

そして釜石市と連携して実施するワーケーション施設「Nemaru Port(ねまるポート)」について紹介。このワーケーション事業では、同社と釜石市、かまいしDMC、日鉄興和不動産が連携しており、地方創生とこれからのワークスタイルの研究・提案を行うことを目指している。

ハフポスト日本版で「SDGsで世界をリ・デザインする」というプロジェクトをリードしている南氏は、「日本ではSDGsというと環境問題に結びつける言説が多かった。それは重要だが、いま私たちが直面している地球の危機は個人の努力だけでは解決できるものではない。解決していくためには、グレート・リセット、資本主義のトランスフォーメーションが必要だ。目先の経済合理性と環境や人権への配慮などがぶつかってしまう、矛盾に陥ることもあるが、そこから目をそらさず、ジレンマから見る、日常会話からSDGsを始めることを大切にしている」と話した。オカムラの取り組みに関しては「SDGsを17個の目標とのリンケージで捉えている活動であることが素晴らしい」と答えた。

次に髙津氏が日本製紙グループの取り組みを紹介した。日本製紙グループでは2030ビジョンにおいて「木とともに未来を拓く総合バイオマス企業」を目指し、「持続可能な森林資源の循環」、「技術力で多種多様に利用する木質資源の循環」、「積極的な製品リサイクル」により木質資源を最大限に活用し、カーボンニュートラルなビジネスモデルに取り組んでいる。

同社では、牛乳パックなどの製造時にでる損紙を再利用するほか、紙パックに使われているポリフィルムを自社技術で取り除き、高品質なパルプを取り出し、有効活用している。さらに、工場近隣の学校、スーパー、取引先のホテルなどと提携し、紙パックを回収しリサイクルする取り組みも行っている。

髙津氏は「リサイクル原料の活用、商品の使用時・使用後の工夫を進めているが、使用後のリサイクルまでまだ手が回っていない実情がある。サステナブルな社会に貢献するには、メーカーとしても使用後のリサイクル工程に参加していくことが今後の責任になっていく」と説明。「ゴミとなった紙製品の回収事業は企業だけでは実施できないので各自治体との協力が重要になる。製紙業はゴミの分別や行方をしっかり啓発することで、カーボンニュートラルや循環型事業を確立できる。今後、各自治体と共創して未来のまちづくりに取り組んでいきたい」と語った。

南氏は「リサイクルは1社だけで実現するのは難しい。ラストワンマイルは消費者にかかっている。自治体や消費者への情報発信が重要となり、私たちメディアにも大きな宿題が与えられたと感じた」とコメントした。また情報発信に関して「広告出稿やメディアを通じた情報発信は大事だが、社員というステークホルダーからの情報発信が重要だと思っている。社員一人ひとりに自社のSDGsアクションを理解してもらい、そこからSNSなどによりコミュニティへ広げていく情報経路を従来のパブリックリレーションズとパラレルで考えていく必要がある」と意見を述べた。

最後に笹谷氏が「SDGsを使って拡散力と訴求力を高めていきたい。今の日本には、コロナ禍からのより良き回復(Build Back Better)のためのヒントがぎっしり詰まっている」と語りセッションを終えた。

岩﨑 唱 (いわさき・となお)

コピーライター、准木材コーディネーター
東京都豊島区生まれ、日本大学理工学部電気工学科卒。いくつかの広告代理店、広告制作会社で自動車、IT関連機器、通信事業者などの広告企画制作に携わり、1995年に独立しフリーランスに。「緑の雇用」事業の広告PRに携わったことを契機に森林、林業に関心を抱き、2011年から21018年まで森林整備のNPO活動にも参画。森林を健全にし、林業・木材業を持続産業化するには、木材のサプライチェーン(川上から川下まで)のコーディネイトが重要と考えている。