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ブランドが社会とつながる、持続可能な未来へ  「サステナブル・ブランド ジャパン」 提携メディア:SB.com(Sustainable Brands, PBC)

自社ではじめるリジェネレーション――第3回SB-Japanフォーラムレポート

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サステナブル・ブランド ジャパンは、法人会員コミュニティの2021年度プログラム「第3回SB-Japanフォーラム」を11月24日、オフライン(博展本社、東京・中央区)とオンラインを併用し、開催した。7月の初回、9月の第2回に続き、第3回の今回は、10月に開催されたサステナブル・ブランド国際会議サンディエゴの報告や、京都市で量り売りの小売事業を展開する斗々屋を招いたトークセッションの後、参加者らが「自社ではじめるRegeneration(リジェネレーション:再生)」についてアイデアを出し合うワークショップが行われた。(横田伸治)

冒頭では、サステナブル・ブランド国際会議アカデミックプロデューサーを務める青木茂樹氏が、第2回の概要を振り返った。参加者のコメントを紹介しながら、消費者側から企業へのイメージを指標化したジャパン・サステナブルブランド・インデックス(JSBI)の概要や、企業が消費者とのコミュニケーションを重視しながら社会にインパクトを生むことの重要性などを説明した。

サステナブル・ブランド国際会議サンディエゴ テーマはリジェネレーション

SB国際会議サンディエゴについてはまず、サステナブル・ブランド ジャパンの鈴木紳介カントリーディレクターが、同会議の発祥の地である米サンディエゴで10月、4日間の日程で行われ、オンラインを含めて約3600人が参加したことを報告した。サステナビリティに取り組む世界の企業から185人のスピーカーが登壇し、84にのぼる基調講演やセッションが行われたほか、ランチやパーティー、ヨガなど参加者同士のネットワーキングを促進するプログラムも盛り込まれた。

続いて青木氏が「イベント全体を通して、ゼロから新しく価値を作り世界を変えていくという姿勢があった」と総括した上で、印象的だったセッションを紹介。ウィンストン・エコ・ストラテジーズ創設者のアンドリュー・ウィンストン(Andrew Winston)氏の講演では、株主資本主義からステークホルダー資本主義への転換を前提として、自社の利益のみを追求せず社会貢献を目指す意義が示されたという。またサイモン・メインウェアリング(Simon Mainwaring)氏の講演で、P&GがBLM(ブラック・ライブス・マター)運動の際に人種差別への考え方を動画として表明したことについて「商品と直接結びつかないからやらない、ではなく、社会の構造に対して自分たちがどうアクションを起こすかを常に考えている」と強調していたことも引用。その上で、サステナブルなブランドをつくるには、売り手・買い手だけでなく、社会からの見え方も意識した「三面鏡」のような構造であるべきだと提唱した。

一方、サステナブル・ブランド国際会議D&Iプロデューサーの山岡仁美氏は、ジョンソン・エンド・ジョンソンとエスティ・ローダーの両社によるセッションで示された「地球が健全であることを中心に据えないと企業としての信頼性を保てない」「グラスを逆さまにするような、セクターを超えたパートナーシップを模索しなければならない時」などの観点をもとに、「悪くならないようにすることと、良くすることは違う」とする本質的なリジェネレーションの必要性を訴えた。

またサステナブル・ブランド国際会議サステナビリティプロデューサーの足立直樹氏は「リジェネレーションとはなにか?どうやるのか?」と問いを投げ、そのヒントは自然の生態系やシステムの中にあると強調。バイオミミクリー3.8(Biomimicry3.8)のマネージングディレクターであるニコール・ミラー(Nicole Miller)氏の講演に触れ、道路の舗装を土のように透水性のある素材にすることで洪水リスクを下げられることや、有機物で汚れた水を植物の力で浄化する技術などを例に、「社会問題を解決する方法は、自然のサイクルの中にすでにある。人間はそれを真似すればいい」とまとめた。

量り売りスーパー「斗々屋」の事業に学ぶ、リジェネレーションとサーキュラーエコノミーの実践

フォーラム後半は、京都市などで小売事業を展開する斗々屋(東京・国分寺、2017年設立)のノイハウス萌菜氏と、サーキュラーエコノミー研究家でCircular Initiatives & Partners代表の安居昭博氏をゲストに、山岡氏がファシリテーターを務めたセッション「自社ではじめるリジェネレーション 」が行われ、ノイハウス氏が斗々屋の取り組みを紹介。同社は2019年から、ゼロ・ウェイスト、オーガニック、フェアトレードの3つを基準に、「商品をパッケージ無しで買えたら?」と提案する量り売りの食料品店を展開している。個包装を廃止することで、▽資源の節約と経済発展の両立▽包装やごみ捨てにかかる経費・手間などのコスト削減▽環境への負荷減少――と、売り手・買い手・社会・環境のそれぞれにメリットが生まれていることを説明した。

扱う食料品についても、地域の生産者から仕入れたオーガニック食品にこだわるほか、「他企業や団体にも量り売りを始めてほしい」との思いから、ノウハウの横展開と従業員の意識研修を盛り込んだプログラムも開発・提供しているという。

こうした取り組みに対し、安居氏は「言うは易く行うは難し、というが、斗々屋さんはあらゆるアイデアを実践されていて素晴らしい」と評価。京都在住の同氏は実際に店舗を利用していることから「普通のスーパーと同様に活用でき、地域の産品も手に入るので、つかいやすい」と顧客側のメリットも実例を挙げて示した。

自身の専門であるサーキュラーエコノミーの観点からは、「サーキュラーエコノミーの原則の中にリジェネレーションは含まれており、その上で、人間が自然にいかにポジティブなインパクトを与えるかが問題。斗々屋が事業を展開し、個人や企業がそれに賛同する、または応援することがインパクトを生むことにつながる」とサーキュラーエコノミーとリジェネレーション、斗々屋の事業との間に親和性があることを強調した。さらに「人類の課題である環境問題については、Less Bad(悪い影響を減らす)ではなくMore Good(良い影響を増やす)が必要」と、SB国際会議サンディエゴの報告でも話題に出た考え方を踏まえながら、ごみをリサイクルするのではなく、ごみを出さずにいかに人が豊かに生活するかを考える斗々屋の姿勢を称賛。ノイハウス氏も「ごみのリサイクルは、結局地球(へのインパクト)に対してはニュートラル。『以前よりは害を与えていない』ではなく、一歩進んで、ポジティブなインパクトを」と同調した。

安居氏はセッションの最後に、自身のドイツでの経験を紹介。引っ越し先を検討する際に「量り売りの店がある地域が良い」と考える知人たちの動機が「環境に良いことをしたいから」ではなく、「ごみが出ない方が楽」「地域の食材が手に入りやすい方が豊かだから」であったという。国内での取り組みに関しても、義務感ではなく「やったら楽になる・豊かになる」という意識で始めていくことが重要だと、参加者にエールを送った。

この後、参加者のワークショップが行われ、Regeneration Mapから▽健康とヒーリング▽種・食・土▽生態系の再生・修復▽分かち合うこと――を抜粋し、各参加者らが自社でできる取り組みのWhat(何を)とHow(どうやる)を検討。そして生まれたアイデアを社会の緊急度と企業の重要度を縦横軸に置いて優先順位付けし、マッピングした。

参加者からは、「エシカルな取り組みには、企業としてはどうしてもコストが生まれる。だが、Z世代も含めた消費者とのコミュニケーションを丁寧に行うことで、消費者もハイコストを喜んで受け入れてくれるようになるはず」と、前回までのフォーラム内容も生かした意見が飛び交った。

第4回のSB-Japanフォーラムは2022年1月12日、博展本社とオンラインのハイブリッドで開催される。

横田伸治(よこた・しんじ)

東京都練馬区出身。東京大学文学部卒業後、毎日新聞社記者、認定NPO法人カタリバを経てフリーライター。若者の居場所づくり・社会参画、まちづくりの領域でも活動中。