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難題の空き家対策として、自治体向けに所有者と事業者のマッチングサービスが登場 タレント・バービーさんともタッグ

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左から和田社長、栗山町・金丸さん(リモート)、バービーさん、世田谷区の空き家担当・千葉さん

全国で空き家の増大が社会的な問題として浮上しているが、全国16万件以上の空き家情報を提供する専門企業の空き家活用(東京・港)は自治体向けに、空き家所有者と事業者をマッチングする新サービス「空き家活用ナビ」を11月1日から開始した。同サービスは、利活用の意思決定の段階で停滞する所有者の行動変容を促すとして期待される。また、オンライン記者発表会ではタレントのバービーさんがゲスト出演。5年ほど前から故郷の町おこしを率先して行い、将来は空き家を部屋に見立て町ごとホテルにするのが夢だそう。今後は同社と協力して夢の実現を目指す。(いからしひろき)

「空き家活用ナビ」の第1弾は、東京都世田谷区。総務省による2018年の住宅・土地統計調査によれば、同区には約4万9000戸数もの空き家があり、全国でもトップクラスの多さ。65歳以上の世帯比率が増え、さらに不動産価値が高いため若い世代が物件に手を出せない悪循環が原因だ。

同区は空き家活用との連携により広報活動を強化し、セミナー開催などを通じて周知啓発活動を行っていく予定。月に30件の相談数を目指す。

同社の「空き家活用ナビ」が注目される理由は、空き家問題のネックとなっている「事前課題」の解消に役立ちそうだからだ。事前課題とは、空き家を貸すのか、売るのか、取り壊すのかという意思決定が中々まとまらないこと。権利者が複雑だったり、所有者が遠くに居たり、ゴミ屋敷になっていたりと面倒な問題が山積し、利活用のまな板にのせるまでに至っていない空き家が多いのだ。

10月26日に行われたオンライン記者発表会には、故郷の北海道栗山町で町おこしを行うタレントのバービーさんと、栗山町役場で移住を支援する金丸佳代さんが出席(金丸さんはリモート)。バービーさんはすでに自費で空き家を2軒購入しているが、「3軒目がなかなか決まらない。いたるところに空き家があるのに流通していない。Uターンする同級生も空き家が見つからず、アパートを借りざるをえない」と嘆く。金丸さんは、「町外からの移住希望者は年々増えているが、空き家バンクに登録されている空き家はわずか2軒。需要に供給が追いついていない」と打ち明けた。

「空き家活用ナビ」では、こうした問題に対して「チューター(仲介役)」という専任スタッフを置くことで対処する。所有者ごとに困りごとの相談に乗り、活用方法や事業者の選定などまで導く。同社の和田貴光代表は、「多くの空き家所有者が利活用以前の段階で立ち止まっている。お隣さんのように同じ目線で考え、一緒に悩み、背中を押してあげる存在になりたい」と抱負を語った。

周知啓発活動という点では、バービーさんのような著名人の活動にも期待がかかる。前記した通り購入した2軒の空き家のうち、1軒はDIY途中で、もう1軒は更地にして事業での活用を計画している。今後は空き家活用の協力も得ながら、空き家購入を進める予定だ。

将来的には、空き家を一つの部屋に見立て、町ごとホテルにすることを目指している。こうしたアイディアは、イタリアで1980年代に被災した小さな村を復興するためのプロジェクトとして始まり、最近は日本でも山梨県の小菅村などで取り組みが進められている。こうした流れの一つとしても、バービーさん並びに同社の今後の動向を見守りたい。

いからし ひろき

プロライター。2人の女児の父であることから育児や環境問題、DEIに関心。2023年にライターの労働環境改善やサステナビリティ向上を主目的とする「きいてかく合同会社」を設立、代表を務める。