サステナブル・ブランド ジャパン | Sustainable Brands Japan のサイトです。ページの先頭です。

サステナブル・ブランド ジャパン | Sustainable Brands Japan のサイト

ブランドが社会とつながる、持続可能な未来へ  「サステナブル・ブランド ジャパン」 提携メディア:SB.com(Sustainable Life Media, Inc.)

大阪観光局、観光を通して高校生がサステナビリティを学ぶツアー開催に協力 留学生交え異文化コミュニケーションを体験

  • Twitter
  • Facebook

Presented by 大阪観光局

グリーティングパレードに参加する高校生たち

大阪観光局は日本旅行(東京・中央)と連携して11月6日、高校生を招き、大阪市内を周遊しながらサステナビリティを学ぶ「Tourism for Tomorrow ~水都大阪 魅力発見プロジェクト~」を実施した。このツアーは、大阪観光局が運営する非接触型QRコード周遊パス「大阪楽遊パス Osaka e-Pass」を利用して行われた。購入することで市内の観光名所が入場無料となるもので、参加した高校生たちはゲスト講師らによるサステナビリティにまつわるプログラムを体験しながら、市内観光や水上バス乗船などを楽しんだ。(横田伸治)

留学生交え大阪の街でパレード&クリーン活動

参加したのは、神戸学院大学附属高校(神戸市)グローバルコース1年生の27人で、全員が2年次に国外留学を経験する予定の生徒だ。ツアーには在日外国人サポートなどを手掛けるYOLO JAPANの協力で、各国からの留学生など計6人の外国人も同行。高校生たちは初対面の留学生たちとも英語ですぐに打ち解け、ともに行程を楽しんだ。

「修学旅行みたい」と高校生たちが盛り上がっていた午前9時、集合場所となった娯楽施設「スパワールド」(大阪市浪速区)で最初のプログラム「グリーティング」が始まった。パフォーマーとしてパレードやサーカスなどを行う「ICHIZA」(東京・渋谷)が講師を務め、表情や身振りで相手とコミュニケーションを取り、言語やルーツが違う相手にも、挨拶を通じて心の距離を1歩縮めるコツを学ぶ内容だ。

高校生たちは、笑顔やジェスチャーの練習を経て、音楽に合わせたパレードの振り付けを練習。そして実際に、スパワールドを発着点に、通天閣を見上げながら新世界エリアを約20分かけて周るパレードを行った。パレード中に飲食店員や客、通行人などに手を振ると、「こんにちは」などとあいさつを返されたり、「どこから来たの?」と話しかけられたりと、さっそくグリーティングによるコミュニケーションを実感していた。講師を務めたICHIZAの児玉亜也さんらは「手を振り返されることは単純に嬉しいもので、それこそがグリーティングの楽しさ。挨拶を変えるだけで、世界がちょっと幸せになる。これからの日常を、少しでも豊かにしてほしい」と締めくくった。

スパワールドに戻り、続いて地域のクリーンアップを全国で展開するプロジェクトマナティ(沖縄・那覇)から講師を迎え、ごみ拾い活動に移る。同プロジェクトの二宮あみ氏が「海洋プラスチックが問題になっている。年間何万トン流出しているか知っている?」と問いかけると、会場の高校生は「数万トン?」と声が上がる。二宮氏は「正解は、1000万トンです。ごみは陸から海に流れるので、海をきれいにするためにも、街のごみを拾おう」と呼びかけ、プロジェクトマナティ専用のごみ袋を配った。

高校生たちは再び新世界を散策しながら、ごみを探す。街では大量のたばこの吸い殻や空き缶、ペットボトルなどのごみがそこかしこに見つかる。高校生たちが「そっちにも缶!」「吸い殻ってこんなに落ちているのか」と積極的にごみを集め、袋はあっという間に満杯に。

水上バスから学ぶ「水都大阪」のまちづくり

午後のプログラムは、大阪城公園(大阪市中央区)から出航する水上バス「アクアライナー」の乗船体験から再開した。アクアライナーの船内は特別に、高校生たちによる貸し切りとなった。ガイドを務めたのは、大阪市を拠点にまちづくり事業に取り組む一般社団法人「水辺ラボ」の杉本容子・代表理事だ。

アクアライナーが第二寝屋川を南へ出発すると、杉本氏は「大阪城を作ったのは誰でしょう?」とクイズを出題。高校生が「豊臣秀吉?」と答えると、「正解だけど、実は今見えている天守閣は、火事で燃えた後、大阪市民がお金を出し合ってもう一度建てたものなんです」と解説する。

大阪造幣局や帝国ホテル大阪周辺では、川沿いの桜並木も同様に市民が資金を集めて植樹したものであることを明かし、「SDGsは、一人ひとりが一人ひとりを大切にしようという考え方。大阪は以前から、市民自ら街のことを考える文化があって、水辺を生かしたまちづくり事例としても全国で一番有名な場所です」と話した。

この日、中之島周辺のアクアライナー航路では、「リバー・ザ・ワンダーランド」というイベントも行われており、「チンドン船」や「ジャズバンド船」が行き交うにぎやかな雰囲気。高校生たちは杉本氏の話に頷きながら、すれ違う船や川辺の通行人などに手を振り続け、ここでもグリーティングを楽しんでいた様子だった。アクアライナーは約1時間弱のクルージングを終え、淀屋橋港に到着した。

宇宙をテーマにコミュニケーションとイノベーション創出の方法探る

その後、高校生たちは各自地下鉄を利用して梅田駅へ向かい、梅田スカイビル(大阪市北区)に集合。ここでは、宇宙についての研究・教育に取り組む株式会社うちゅう(東京・墨田)CCOの宇宙星太郎氏を講師として、宇宙や月についての解説のほか、デザイン思考についてのワークショップに臨んだ。

中でも、「もしもあなたが月面着陸に失敗して不時着したとき、生き延びるために必要なものは?」をテーマに、酸素ボンベや食料など15のアイテムに順位付けをしていく「NASAゲーム」は大きな盛り上がりを見せた。高校生たちは「水と食料はどっちのほうが大事?」「方位磁石は要らないでしょ」などと、留学生も交えて議論しながら、班ごとに1位~15位を決めていく。NASAが定める「模範解答例」が発表されると、会場は「当たってる!」などと声が上がった。

宇宙氏は「このゲームは実は、得点を競うものではありません。宇宙空間で生き延びるために一番必要なことは、出身や言語、価値観がばらばらなチームが、スムーズに優先事項について合意形成することだ、ということを感じてほしかったんです」と、午前中にも示された「異文化とのコミュニケーションの重要性」のテーマを再度提示した。

デザイン思考のワークショップでは、イノベーションを起こすために必要な順序として、(1)ターゲットを定め(2)課題を調べ(3)どんなソリューションを提案できるか――のサイクルを回すことを実践形式で学んだ。「人工衛星を用いて、どんな職業のどんな課題を解決できるか?」という問いを与えられた高校生たちは、まず人工衛星の機能や活用例をインターネットで調べ、班ごとに議論を重ねた上で、「渋滞情報を観測してドライバーの仕事を円滑にする」「気温を観測することで、農作物の収穫を安定化させる」などのアイデアを発表した。

最後に、全員が梅田スカイビル屋上の「空中庭園展望台」へ。すっかり日が暮れた午後6時すぎ、地上170メートルから眺める大阪の夜景に、高校生たちは感動した様子。思い思いに夜景を眺め、この日のツアーは全行程を終了した。

参加した高校生は「グリーティングは緊張したけど、街の人にリアクションを返してもらえた。ごみ拾いでもお礼を言われて、コミュニケーションの嬉しさを感じました」と満足した様子。引率した神戸学院大学附属高校の吉岡努教諭も「身近な問題がたくさん盛り込まれた内容だった。2025年には大阪万博もある。参加した生徒には、これからさらに視野を広げて生活し、特に外国の方とは積極的に交流してほしい」と話した。

同ツアーは11月27日、12月19日にも行われる予定。今回のツアーの翌日の11月7日、関西大学千里山キャンパスでは「第2回 SB Student Ambassador ブロック大会」の西日本大会が開催された。同大会では大阪観光局も後援し、MICE政策統括官の田中嘉一氏が登壇。「次世代の観光」をテーマに参加高校生に向けて講演を行うなど、2025年に開催される大阪・関西万博に向けて若い世代を巻き込むまちづくり施策、観光施策が活発化している。

横田伸治(よこた・しんじ)

東京都練馬区出身。東京大学文学部卒業後、毎日新聞記者として愛知県・岐阜県の警察・行政・教育・スポーツなどを担当、執筆。退職後はフリーライターとして活動する一方、NPO法人カタリバで勤務中。