サステナブル・ブランド ジャパン | Sustainable Brands Japan のサイトです。ページの先頭です。

サステナブル・ブランド ジャパン | Sustainable Brands Japan のサイト

ブランドが社会とつながる、持続可能な未来へ  「サステナブル・ブランド ジャパン」 提携メディア:SB.com(Sustainable Brands, PBC)

国内初、電気・ガスともCO2実質排出量ゼロの分譲マンション 野村不動産が建築へ 2025年竣工予定

  • Twitter
  • Facebook

新築分譲マンションでは国内初となる、電気・ガスともにCO2排出量が実質ゼロのマンションを野村不動産が2025年3月、神奈川県相模原市に竣工予定だ。ガスは東京ガスによる「カーボンニュートラル都市ガス」と実質再生可能エネルギー100%の電気料金プランなどを採用するほか、電気自動車の普及を見据えて駐車場の全区画に充電用コンセントを設置するなど、脱炭素社会に対応した住まいを計画しており、同様のスキームを他の物件でも展開する。(廣末智子)

相模原市の旧伊勢丹跡地に分譲マンション「プラウドシリーズ」の一つとして建築が決定した「(仮称)相模大野4丁目計画」。鉄筋コンクリート造の地上41階地下3階の高層マンションで、687戸の全戸に、天然ガスの採掘から燃焼に至るまでの工程で発生する温室効果ガスをCO2クレジットで相殺し、燃焼しても地球規模ではCO2が発生しないとみなすLNG(液体天然ガス)を活用した東京ガスの「カーボンニュートラル都市ガス」を供給する。

東京ガスによると、世界的な脱炭素化の潮流の中、現在の技術では短期的な脱炭素化が困難な熱分野における実行可能な手段として2019年から、このLNGの輸入を始め、工場やビルなどの法人向けに日本で初めて供給を開始した。新築分譲マンション向けに供給を決めたのは今回が初めてとなる。

また電気については、全戸に再生可能エネルギー由来の非化石証書付きの電気料金プランである「さすてな電気」を供給し、CO2排出量を実質ゼロに。契約ごとに東京ガスが緑化事業を行う公益社団法人国土緑化推進機構を通じて植林を実施することで、さらなるCO2削減につなげる。共用部には相模原市内にある卒FIT太陽光由来の電力も用いる。

さらに設備面では、各戸に集合住宅向けのエネファーム(省エネ・省CO2といった環境性のほか電力のピークカットにも貢献する高効率なコージェネレーション=熱電併給=システムのこと)を設置し、高断熱化なども通じて住宅自体の省エネ性能を高める。

このほか2030年の電気自動車の普及を見据え、充電インフラ整備として屋内の平置き駐車場約200台分の全区画に充電用コンセントを設置。急速充電器付きの来客者用駐車場や、電気自動車のカーシェアなども予定している。地域の防災拠点としての観点から、マンションの広場には非常時に備えた防災設備を完備し、停電時の電力供給の一部には太陽光パネルなどの再生可能エネルギーを利用する計画だ。

工事中の仮設電力にも再エネ 使用

野村不動産によると、当初の計画では横に長い外観の“板状”分譲マンションを計画していたのが、住宅棟をタワー形式に変更し、また現在解体中の旧伊勢丹の既存の躯体を一部再利用することで、施工段階でのCO2排出量を当初計画から約35%削減した。来春に着工し(設計施工は三井住友建設)、工事中の仮設電力にも再生可能エネルギーを利用することでさらなる環境付加軽減を目指すという。

広報担当者によると、今回のような電気・ガスともにCO2排出量が実質ゼロのマンションについては「ガスの分野において、カーボンニュートラル都市ガスがまだまだ希少である」ことから、今後の広がりが未確定ではあるものの、川崎市で計画中の大規模物件が電気ガスともにCO2ゼロマンションの第2弾になる予定。また既に取り入れている“ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス、エネルギー収支が実質ゼロの住まい)マンション”や、スマートエネルギーシステムを採用したマンションなど、「今後はいくつかの事業に分散しながら、環境配慮型マンションの建築を推進していく」考えだ。

一方、東京ガスの広報担当者によると、法人部門への「カーボンニュートラル都市ガス」の供給は、「ESG経営を意識する顧客」を中心に引き合いが多く、契約数は約40社あるという。今後は、政府の温室効果ガス排出削減目標(2013年度比46%削減)の中で、家庭部門における2030年度までの削減目標が約39%から66%に引き上げられるなど高い削減率となっていることからも、「目標実現には新築住宅の脱炭素化が重要であり、各家庭へのカーボンニュートラル都市ガスの供給を進める」方針。今回の野村不動産との提携による新築分譲マンションへの同ガスの供給は、「新たな切り口の一つであり、これを契機に家庭での需要拡大に向け、さまざまな方策を検討していきたい」と話している。

廣末智子(ひろすえ・ともこ)

地方紙の記者として21年間、地域の生活に根差した取材活動を行う。2011年に退職し、フリーに。サステナビリティを通して、さまざまな現場の当事者の思いを発信中。