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北海道下川町:町民とともに持続可能なまちづくりを進める、北海道のSDGs未来都市

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2030年に向けて、多くの国や地域、企業やその他団体がSDGs達成のために取り組んでいます。SDGsが持続可能なまちづくりや地域活性化にも関係することから、内閣府はSDGsを原動力とした地方創生を推進しており、その一環として、優れた取り組みを提案する地方自治体を「SDGs未来都市」に選定・支援しています。

そんなSDGs未来都市の一つであり、2017年に第1回「ジャパンSDGsアワード」総理大臣賞を受賞したのが、北海道上川郡下川町です。受賞から4年、目標達成に向け取り組みを続ける下川町に、進捗状況や新たな取り組み・課題などをうかがいました。

過疎化を止め、持続可能な森林未来都市を目指すためのSDGs活用

下川町は北海道北部に位置する、人口約3200人の町だ。面積の9割が森林、基幹産業は農林業。かつては鉱山の町として栄えたが、休山などの影響で人口は減少、急速な過疎化が進んでいた。そんな状況を変えようと、2000年代から「持続可能な地域社会(森林未来都市)の実現」に向けた取り組みが始まった。「経済、社会、環境の調和による持続可能な地域社会づくり」をコンセプトとする取り組みは、SDGsが掲げる目標とも合致する。そこで下川町は、SDGsを基準に自分たちの活動を改めてチェックし、民間から10名、行政から10名が参加する会議で半年間議論を重ね、「2030年における下川町のありたい姿」として7つのゴールを生み出した。

下川町が持続可能な地域社会の実現のために動き出したのが2000年代。以来、積み重ねてきた取り組みにSDGsを加えたのは、新たな視点・手法を導入することでさらに活動を促進する狙いがあったからだ。SDGsの17の目標から地域を見つめ直すことで、新たに発見する課題や気づき。2030年という未来から俯瞰して今するべきことを考えるバックキャスティングの手法。さらに、SDGsの枠組みで地域の魅力や将来性を国内外へ発信し移住者や交流人口、企業や投資の呼び込みを増やすなど、下川町はSDGsをうまく取り入れ活用している。

具体的な指標を提示し、着実な成果につなげる「第2期下川町SDGs未来都市計画」

下川町は2021年4月、「第2期下川町SDGs未来都市計画(2021年〜2023年)」を発表した。

計画では具体的な数値を盛り込んだKPIが設定されている。2018年に発表した第1期計画では暫定的だったKPIの指標を見直し、より精緻なものへとブラッシュアップしているのだ。まだ完成には至っておらず、開発中ではあるが、注目したいのは社会側面に関するKPI指標だ。

日本の多くの企業・団体でサステナビリティに関するKPI指標を設定する際、社会側面は具体的な数値設定がしづらいと言われる。廃棄物発生量や農作物生産量ならばともかく、子育てのしやすさや暮らしやすさといった個人の感覚に拠る項目を、公正な基準で数値化するのは難しいからだ。

下川町はこの課題を、節目ごとにとる町民アンケートでクリアした。暮らしやすい町だと思うか、環境に満足しているかなどの質問への回答を集計することで、数値目標に対する実績検証を可能としたのだ。

また、第2期計画では情報発信と普及展開にも力を注ぐ。下川町がこれまでに行ってきたSDGsに関する活動実績や基盤を活かし、町内外の行政・企業・団体等との連携による課題解決を進めている。国内では地方創生SDGs官民連携プラットフォームや、他自治体との連携枠組みを通じた情報発信、イベントでの情報発信を行い、海外へ向けては国際協力機構(JICA)など国際機関と連携しての情報発信や、国際会議等への参加を行う。

下川町の挑戦はSDGsを足がかりに全国へ、世界へと広がっている。

移住者数・農業生産額の増加。一歩一歩実現に近づく「2030年のありたい姿」

下川町の取り組みの成果は、着実に実を結んでいる。

まず、移住者の増加。2020年の下川町への移住者数は32人だった。一見、少なく見えるかもしれないが、約3,200人の町における32人は人口の1%にあたる。人口約190万人の札幌市で考えると、1%は1万9,000人だ。地方の過疎化や人口減少が大きな社会問題とされる現代日本では、非常に高い数値と言えるだろう。まして、2020年から2021年現在にかけてはコロナ禍の影響もあり移住が難しい状況だった。下川町では将来的な移住相談の件数も増えているというから、コロナ禍が落ち着けばさらに多くの移住者がやって来るのかもしれない。

さらに、農業生産額も大幅に増加している。2017年には26億円だったのが2020年には34億円となり、農家戸数で見ても142戸から157戸へと増えている。

これらの成果は、SDGsをはじめとする持続可能なまちづくりへの取り組みが、さまざまな人々へ届き、評価された証だ。木工芸や家具づくりなど林業にまつわる事業に夢を持つ人、子育てのしやすさ、環境にやさしい暮らしに魅力を感じる人などが集まり、下川町の一員としてまちづくりに参加することで、SDGs未来都市はまた一歩ずつ目標達成へ近づいていく。

下川町では現在、改めてSDGsの普及に注力しているという。もちろん、既に町内のSDGs認知度は100%近い。だがその中には、ただ単語として知っているだけで、実践には至っていない人々も含まれる。

昔から下川町で暮らしてきた人々、新たに下川町に加わった人々、その一人ひとりがSDGsを活用してそれぞれの持続可能なまちづくりを実践していけば、下川町の「2030年のありたい姿」実現、さらに持続可能な世界の実現への道程は着実に進んでいくはずだ。