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無印良品、不要になった保冷剤を回収しリユースへ 

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スイーツや生ものなどを買って帰る度に入れてもらい、知らず知らずに冷蔵庫などにたまってしまって処分するのにも困ってしまうものの筆頭に、「保冷剤」があるのではないだろうか。そんな保冷剤を回収し、リユースする取り組みを良品計画が今月10日から始めている。全国の無印良品126店舗で、同店で配布したものに限らず、汚れや臭いのないものであれば不要になった保冷剤をすべて引き取り、洗浄と殺菌処理を施した後、再度冷凍して、冷凍食品の持ち帰り用に再利用するというものだ。いろいろなリユース・リサイクルの取り組みがある中、保冷剤に焦点を当てたこのサービスはなぜ生まれたのか。(廣末智子)

国内の保冷剤メーカーでつくる「日本保冷剤工業会」のHPによると、一般的な保冷剤は水を少量の高吸収性ポリマーでゲル化させてつくられており、食品添加物と同等の防腐剤・安定剤が加えられている。防腐剤は、中のゲルにカビが生えたり、菌が増殖して万が一破れた場合、食品を汚染してしまうのを防ぐために、安定剤は含まれた水の安定した凍結を促すために入れられているが、いずれも「人体や環境には無害な原料からできている」という。

高吸収性ポリマーとは水と接触すると瞬時に吸収して膨らみ、全体をゲル状にする性質を持つ合成高分子のことで、簡単に言えば、保冷剤とはプラスチック素材と水とでできていることになる。もっともペットボトルや紙パックなどと違い、容器包装リサイクル法の対象外であることから、ごみとして分別する場合には「可燃物」に区分する自治体が多いものの、水分が多く焼却炉の温度を下げるといった理由から「不燃物」としている自治体もあり、それぞれの自治体に問い合わせることが肝心だ。

「役割を終えたモノの行く末を考える」

今回のサービスについて、良品計画の広報担当者は、「暮らしの困りごとで解決できることはないかを考える中で、持ち帰ってもどう処理をすれば良いものか困るものである保冷剤に着目した。考えても特に使い道がなく、冷凍庫に収まらないものは最終的にごみとして捨てることになるため、なんとかして保冷剤のごみを減らすことはできないかと考えた結果、再利用することを思いついた」と説明。今のタイミングになったことについては、コロナ禍でステイホームの時間が長くなるのに比例して、冷凍食品の売り上げが伸び、それに伴って必然的に保冷剤を配布する量も増えていったことにあったという。

回収する保冷剤は汚れや臭いのついていないものであれば全国の無印良品で配られたものでなくても構わないこともあり、サービスは10日に始まったばかりにもかかわらず、すでに多くの不要になった保冷剤が持ち込まれているそうで、「処理に困っていたので助かっている」「良い取り組みであると思う」といった声が多数寄せられているという。

回収した保冷剤は洗浄し、殺菌した上で、冷凍食品やチルドスイーツなどの購入時に商品と一緒に配布するが、「汚れや痛みによる液漏れが発生しない限り、何度でも繰り返し利用できると考えている」と言い、二度、三度とリユースされる場合もありそうだ。1人何個までといった制限もなければ、逆に、年間何千個ほどの保冷剤を回収していきたいといった目標も特に定めていないとしている。

良品計画ではサステナビリティの一環で、「モノをつくり、モノを売る立場として、役割を終えたモノたちの行く末を考えています。長年ご愛用いただいた無印良品の商品を、店頭にて回収。その上で、ムリ・ムダの少ないリサイクルや、先人の知恵を生かしたリユースをご提案しています」とする考えをHPにも明記。2010年から無印良品の商品に限り、下着や靴下を除いた繊維製品全般を回収し、服の原料などにリサイクルするほか、回収した製品の一部を染め直し加工などを施した上で再販売するアップサイクルの取り組みを行っており、回収品は年々増加しているという。

また2020年7月からはプラスチックごみ削減の一環として、使い終わった化粧水や乳液のボトル、また「自分で詰める水のボトル」が破損してしまったり、買い替えのタイミングに応じて、空のボトルを回収する取り組みも行っている。

もっとも保冷剤に関しては、クイーンズ伊勢丹など一部のスーパーチェーンでも、自店で配布したものに限って回収し、洗浄、消毒して再利用しているケースがある。

廣末智子(ひろすえ・ともこ)

地方紙の記者として21年間、地域の生活に根差した取材活動を行う。2011年に退職し、フリーに。サステナビリティを通して、さまざまな現場の当事者の思いを発信中。