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トヨタ、電動車普及へ加速 2030年までに電池コスト半減へ

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Scott Taylor on Unsplash

トヨタ自動車は7日、カーボンニュートラルの実現に向け、それぞれの地域のエネルギー事情などを考慮しつつ、電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHEV)の導入をさらに加速させ、電動車の選択肢を増やす方針をあらためて示した。中でも、1997年に初代プリウスを発売以降、電動車のフルラインナップを支えるコア技術の一つとして独自に開発を続けてきた電池の改良を一段と強化。2030年までに車両と電池を一体開発することによって、EV1台当たりの電池のコストを50%以下に低減させ、消費者のニーズに柔軟に対応できる供給体制の構築を目指す。投資額は約1.5兆円になる見通し。同日オンライン会見した前田昌彦最高技術責任者(CTO)は「クルマと電池は切り離せるものではない。電池開発にグループで取り組んできた自動車メーカーとして変化への適応力、自らの競争力を高め、もっといい電動車を本質的に普及させていきたい」と語った。(廣末智子)

地域に応じた車種の選択肢拡大へ

前田CTOは冒頭、カーボンニュートラルについて、あらためて「工業製品を例に挙げると、原料調達に始まり、つくる、運ぶ、使う、リサイクルして最後は廃棄する、製品のライフサイクル全体を通して発生するCO2をゼロにすることだ」と説明。同社の試算では「ハイブリッド車(HEV)3台のCO2削減効果はEV1台とほぼ同等」であることから、再生可能エネルギーがこれから普及していく地域では、現時点で比較的安価なHEVを活用する一方、再エネが豊富な地域ではEVや燃料電池自動車(FCEV)などゼロエミッションビークル(ZEV)の選択肢を広げることで、炭素の排出量を削減、もしくはゼロに近づけるような方策を取っていくという。

さらに、そのような選択肢の増強を含めて電動車の普及を加速させる上では、同社がこれまで電動車を量産する中で培ってきた強みをフルに生かしていくことを強調。中でもコア技術である電池について、今年7月、新型アクアに採用した、瞬発力を重視したニッケル水素電池の搭載車種を拡大するとともに、EV・PHEV用のリチウムイオン電池についてもコストと持久力の両立を図りつつ今後も改良を継続していく。また2020年代後半にはさらに進化させた新型リチウムイオン電池を登場させるベく、開発に力を入れていることを説明した。

前田CTOによると、同社が電池の開発において大切にしているのは、「安全・長寿命・高品質・良品廉価・高性能」という5つの要素をいかに高次元でバランス良く機能させるか、ということであり、地道で綿密な解析と対策を丁寧に積み重ねることで安全性や耐久性の向上につなげてきた。次世代EV用の電池としては、1996年にRAV4EVを発売以降、培ってきたEVの技術やHEVで培った電池・電動車両の最新技術を織り込んだ新型EV「TOYOTA bZ4X」をまもなく市場に投入する予定という。

走行距離や安全性の面から世界的に開発が進む全固体電池搭載車両も公開した

もっとも今後、EVをさらに普及するためにはコストを低減し、リーズナブルな車両価格を実現することが必須であることから、電池そのもののコストをレアメタルのコバルトニッケルなどを使用しない安価な材料を開発することなどによって30%以上低減。さらに、走行抵抗を減らす車両の開発と合わせて、電動車が1キロメートル走行するのに消費する電力の指標である“電費”をTOYOTA bZ4X以降は30%改善させることを表明した。このように、車両と電池の一体開発を行うことで、2020年代の後半には、TOYOTA bZ4Xと比較して1台当たりの電池コストの50%低減を目指す。

こうした電池の供給体制の整備と研究開発にかかる2030年までの投資額は約1.5兆円になる見込みというが、会見に同席した岡田政道最高生産責任者(CPO)によると、このうち1兆円は生産ライン用の投資で、「2025年までに10本のラインを入れ、26年〜30年までに年間10本のペースでトータル70本ほどのラインをEV用として用意する」という。このEV用のラインについては、HEV用の生産ラインのノウハウを生かしてコストを削減し、トータルの投資額を抑える考えで、「トヨタのグループを含む内製の電池生産チーム、およびパートナーと連携し、基本は地産地消で行う」と表明。同社はパナソニックと共同出資会社を持っており、自社のほか、海外企業を含む外部とも連携して生産を拡大する方向性を示唆した。

会見の最後に、前田CTOは「クルマと電池は切り離せるものではない。HEVだけでも1810万台を導入してきたトヨタは電池開発にグループで取り組んできた自動車メーカーであり、不確実な電動車の未来にも確かなステップで前進していきたい」と強調した。

廣末智子(ひろすえ・ともこ)

地方紙の記者として21年間、地域の生活に根差した取材活動を行う。2011年に退職し、フリーに。サステナビリティを通して、さまざまな現場の当事者の思いを発信中。