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ブランドが社会とつながる、持続可能な未来へ  「サステナブル・ブランド ジャパン」 提携メディア:SB.com(Sustainable Brands, PBC)

フジテレビとユネスコ機関が連携:若者の英語発信プログラムで持続可能な世界見据える

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フジテレビジョン(以下、フジテレビ)と、主に教育・文化分野でアジア太平洋地域の人材育成や地域協力・交流活動を行う公益財団法人ユネスコ・アジア文化センター(以下ACCU)が協働で主催するユニークなプログラムが今夏、始動する。「Voice of Youth Empowerment  サステナ英語プレゼンテーションチャレンジ」はSDGsをテーマに組み込んだ中・高校生世代が対象のプレゼンテーション大会だ。一連のイベントや参加者への課題には持続可能な未来に何が必要かを掘り下げて考えるためのヒントと機会があふれている。教育の専門機関と、エンターテインメントを得意とする民放の連携にはどのような思いがあり、そこから何が生まれるのか。仕掛け人の両企業・団体に聞いた。(サステナブル・ブランド ジャパン編集局)

Voice of Youth Empowerment サステナ英語プレゼンテーションチャレンジ

応募資格:中学生・高校生世代であること(学校の在学有無は不問)、英語を母語としないこと
応募単位:2~3名で1チーム※チームは、学校、学年が異なる者同士で組むことも可能
応募テーマ(課題):チームごとに英語による課題(文章3点、動画1点)を下記の通り作成し、提出

【必須課題①】
プログラムに応募する理由、意気込みを含めた自己紹介。
(英語で150 words以内)
【必須課題②】
プログラムにどのように貢献できるか。また、参加を通してどのように成長したいか。
(英語で150 words以内)
【必須課題③】
あなたが取り組んでいる活動または世界に向かって伝えたい思いは何か。それは、どのようにSDGsと関連しているか、その活動や思いを通して2030年以降どのような世界を実現したいかを含めて説明。(英語で300 words以内)
【動画課題】
あなたが取り組んでいる活動または世界に向かって伝えたい思いは何か。それは、どのようにSDGsと関連しているか、その活動や思いを通して2030年以降どのような世界を実現したいかを含め、あなたらしい見せ方で3分以内の動画で紹介。
※Future Voices本番のプレゼンテーションは8分以内で行う。
【審査基準】
英語力のみならず、独自性、やる気、本気度を考慮して総合的に審査。
また、全国に広く国際交流活動への参加の機会を提供することを目的として、応募者の地域性も考慮する。

プレエントリー1次締め切り:8月13日(金)
公開セミナー「SDGs Agora」開催:8月22日(日)※記事末尾に詳細あり
プレエントリー最終締め切り:8月31日(火)

(以上、公式HP応募要項より抜粋。詳細・スケジュールは 公式ホームページ へ)

ACCUは1971年に設立された、アジア太平洋地域のユネスコの拠点だ。設立以来、ユネスコの「平和は、人類の英知と精神的な連携のうえに築かれるものである」という精神に則り、日本を拠点に国際機関や各国政府教育関係機関、産業界、地域社会と協力して教育・文化の分野においてさまざまな事業活動を行っている。教職員の国際交流やESD(持続可能な開発のための教育)の推進、高校模擬国連大会の開催などでも知られている。

2021年、設立50周年を迎えたACCUが記念事業として開催するプログラムが「Voice of Youth Empowerment サステナ英語プレゼンテーションチャレンジ」だ。意外にも、バラエティなどエンターテインメントのイメージが強い民放のフジテレビと協働し主催するという。実はフジテレビは、民放の中でもいちはやくSDGsに着目し発信を行ってきた経緯がある。両企業・団体が綿密に議論し組み立てたプログラムは単なる英語プレゼンテーション大会とは一線を画し、参加者の若者だけでなく大人たちにも未来を考え、社会を変容するアクションを促す内容になっている。

そのポイントや思い、狙いを仕掛け人であるフジテレビ国際局の中本尚志氏、ACCU国際教育交流部部長の進藤由美氏、同部プログラム・オフィサーの天満実嘉氏の3人に聞いた。

SDGsを媒介にフジテレビとACCUが共鳴

左からフジテレビ国際局の中本尚志氏、ACCU国際教育交流部プログラム・オフィサーの天満実嘉氏、同部部長の進藤由美氏

――フジテレビとACCUが協力し開催する今回のプログラムは、どのようなきっかけで始まったのでしょうか。

中本尚志氏(以下、敬称略):企画は当初フジテレビからACCUに相談しました。もともとフジテレビはSDGsの推進に力を入れていて、2018年7月からは「フューチャーランナーズ~17の未来~」というSDGsに取り組み2030年の明るい未来に向けてアクションを起こしている「ランナー」を取り上げるミニ番組を放送しています。SDGsは世界的な課題ですし、世界中の人に見てもらいたいと考え、この番組は英語字幕を付けています。

私がいる部署はこの英語の字幕の監修をしています。しかしせっかく作った英語字幕を1回の放送で終わらせるのはもったいない。そこで、英語とSDGsを同時に学べる「サステナ英語レッスン」というWEBページを2020年7月にローンチしました。中学生、高校生に読んでいただける内容で、2030年に社会の担い手になる日本のZ世代の若者たちに向けたものです。

「サステナ英語レッスン」は、若者、一番は教育の現場で使ってもらいたい。そう考えていた時、ACCUが50周年記念事業を模索しているとお聞きし、SDGsと英語に教育という要素を加えてイベントのようなことをできないかと思ったんです。参加する中高生にも興味を持ってもらえるだろうし、地球の未来のための発信になるんじゃないか、と提案したところ、共鳴していただけました。

ACCUは教育の専門家です。僕らはテレビ局で、電波やネットを使って伝える、発信する専門家です。エンターテインメントの専門家でもあります。協業することで教育にエンターテインメントの要素を加味しながら、発信力をもって国内の子ども達に届け、みんなで一緒に課題を解決できる方策を考えることができると思っています。

――学校への在学有無は不問と明記されているのも、広く参加者を捉えられているように感じました。

天満氏「自分が心から伝えたいことを表現していただけたら」

天満実嘉氏(以下、敬称略):ACCUの事業は教職員や若い世代をターゲットとしています。マスに向けた発信が得意なフジテレビと違うところは、個人の変容から社会の変容につなげるという視点です。そしてACCUは今年50周年を迎えるにあたって、過去を振り返る50周年であると同時に、未来を考える50周年でもあると考えています。未来の主役であるユースをターゲットに、特に学校に在籍しているかどうかはあまり関係なく、多様なユースに参加して頂きたいです。

進藤由美氏(以下、敬称略):一方でもし私たちだけで実施していたら告知、広報の範囲にも限りがあったと思います。

中本:逆にフジテレビは学校にピンポイントでリーチすることは難しい。その点でも補い合うという協働の仕方ができていると感じていますね。

――課題の中に動画があります。この狙いは?

中本:Z世代はデジタルネイティブで、PCやスマートフォンで動画編集を簡単に行っている人も多いですよね。SNSへの動画投稿も簡単にできます。ビジネスシーンで「プレゼン」と言われるときに出てくる動画やスライドを使うようなイメージだったり、自分の論点を裏づけるデータや映像をビジュアル的に演出するのもありだと思っています。また、ストーリー性のある動画をつくる参加者もいるかもしれません。実は、未来の映像作家の誕生も期待したいなと思って課題に映像を組み込んでいます。

天満:文章だけでは伝わってくるものは限られますし、何度も添削して大人の目が入ったものが出てくるという想定はあります。言語以外の面も用いて自分が心から伝えたいことを表現していただけたらいいなと思っています。

世界に向けて言いたいことを言えるという経験

進藤氏「多様性を肌で感じるプログラムに」

――プログラム全体の狙いと意義を改めてお話いただけますか。

進藤:一番の狙いは参加者の若者たちに「多様性」を実感してもらう場にすることです。国内外の同じ世代の人たちと出会うことで、思ってもみなかったことを目の当たりにすると思います。多様性を肌で感じ、互いに学び合い、自分自身の内面を探り、他者とつながり、SDGsの達成へむけてどのような活動につなげていけるのかを模索していきます。一連の流れが8月からはじまり、少し長いスパンのプログラムを通じて体験いただければと思います。参加者同士で影響し合いお互いが成長していくことを狙っています。

ACCUは「個々の変容」を大切にしています。自分の幸せが自分だけで成り立っているのか、どこかで犠牲を払っている人がいるかもしれない。そういう視点に気付き、では自分も、周囲も、地球の皆が幸せというサステナブルな状態であるためには何が求められ、何ができるか、2030年までに何をしなくてはいけないかという発想に落とし込んでいく。8月からの大きなイベントでそういった流れを体験してほしいです。

中本:「Voice of Youth Empowerment」というタイトルに込めています。まず大人として、若者の声を聞きたい。差別や社会的な問題を解決するきっかけはいつも、まずは誰かが声を上げなくちゃいけないんです。声を上げ、行動に繋げるという小さな繰り返しで、少しずつ社会が変容していくわけです。そして若者をエンパワーメントし、活躍できるような社会をつくるのが大人たちの役目だと思っています。

本当は大人たちだって声を上げたいんですが、会社のしがらみや政治的な事情などで、言いたいけど言えないという制約もあります。でも子どもたちにはそんなこと関係がない。それなら、言いたいことをちゃんと公の場で発表する機会を大人がつくらないといけない。学校教育の場以外のパブリック・スペースで世界に向けて言いたいことを言えるという経験は、大人になったときに壁を打ち破る力となって生きてくるのではないかと思っています。

言いたいことは言おう、と。自分と違った意見でも聞こうという雰囲気、文化を、この活動を通じて醸成したいとは思っています。

英語力は重要ではない――身構えず楽しんで未来目指す

中本氏「『英語ができないから参加ができない』とは思わないでください」

――参加を考えている若者や、その周囲にいる大人たちにアドバイスやメッセージをお願いします。

天満:「SDGs」「持続可能性」というと身構えてしまうかもしれませんが、日常の生活と地続きのことだと思います。参加した方々、参加者の発表を見た方々が、自分の中で「あ、そっか、自分にとっては、SDGs・持続可能性ってこういうことだな」とストンと腑に落ちて、小さなアクションを起こすきかっけになるプログラムにしたいです。

進藤:まずはこのプログラムを楽しんでいただきたい。SDGsはあくまで2030年に狙いを定めたゴールであって、未来はその先にもあります。自分たちがこれから生きていく中での考え方を導くきっかけになれば嬉しいです。

今回は参加してくれる方々にとってだけでなく、私たちにとってもすごくチャレンジングなプログラムです。ACCUとフジテレビさんとはそれぞれ異なる価値観をもっています。お互いに日々切磋琢磨して、互いの価値観をぶつけあって、苦しみながらも楽しくプログラムをつくっているので、大人も若者も頑張っていることが見えるイベントになれば幸いです。

中本:このチャレンジでは、英語力以外のことに注目しています。もちろん、帰国子女で素晴らしい英語を話す方もいらっしゃると思いますが、例えたどたどしい英語でもまったく問題ないと考えています。「英語ができないから参加ができない」とは思わないでください。

スピーチ、プレゼンテーションは私たちの人生の全てだと思っています。人生のターニングポイントにおいて、自分の口から自分の言葉で何かを発せないと何も始まらないことがあります。例えば好きな人に愛の告白をすることも、まさしくプレゼンテーションのひとつです。別に難しいことではないんです。高尚なことを言わないといけない、流暢な英語でなければいけないということではありません。日々の生活の中でやっていることです。身構えることなく、自分の言いたいことを原稿にして、映像を付けて発信してほしいと思います。

Voice of Youth Empowerment サステナ英語プレゼンテーションチャレンジ
オンライン生配信『SDGs Agora』
8月22日(日)16:00~

<出演者決定!>
木佐彩子(フリーアナウンサー)
権隨玲 (Popteen専属モデル)
入江遥斗(SDGs普及活動家、Design,more.代表、横浜国立大学2年生)
見上一幸(宮城教育大学名誉教授)
高松彩乃(ユネスコ・アジア文化センター)
竹俣紅(フジテレビアナウンサー)

ベテランアナウンサー、新人アナウンサー、ユース世代のインフルエンサーや活動家、専門家が多彩な視点でSDGs、持続可能な未来を目指す取り組みを語り合います。
視聴方法など続報は公式ホームページ

沖本 啓一(おきもと・けいいち)

フリーランス記者。2017年頃から持続可能性をテーマに各所で執筆。好きな食べ物は鯖の味噌煮。