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ヤマハ発動機、2050年までに二輪車など製品からの排出量90%削減へ

Max Itin

ヤマハ発動機は19日、2050年までにカーボンニュートラルを実現するために、これまで同年までに自社のCO2(二酸化炭素)排出量を2010年比で半減させるとしていた削減目標を86%まで引き上げると発表した。中でも主力の二輪車のEVモデルの普及や、次世代型小型モビリティの開発などに力を入れることで、こうした製品群からの排出量を2030年には24%、2050年には90%削減させ、残りの10%(企業活動全体における排出量では14%)については国際的に認められた方法でオフセットする。(廣末智子)

同社によると、ライフサイクルにおけるCO2排出量のうち、いわゆる「スコープ1」と「スコープ2」とされる企業活動における自社の使用燃料や使用電力による排出量はわずか1.8%に過ぎない。残りの98.2%は、顧客らによる製品使用や原材料の輸送、廃棄などから排出される「スコープ3」が占め、さらにその82.7%が製品使用時の排出によるものだという。そして、その82.7%のうち65%が二輪車で、これにマリンエンジン(19%)、発電機・除雪機・汎用エンジン(7%)などが続く。

一方、2018年度の世界全体のCO2排出量335億トンのうち、排出源のトップ3は、エネルギー産業(42%)と四輪車や航空・船舶・鉄道などを合わせた輸送機器(25%)、製造業・建設業(18%)が占める。このうち同社の二輪車は、輸送機器の中に含まれる0.06%で、「二輪車をはじめとする小型モビリティは環境負荷の小さな移動手段の一つ」というのが同社が基本とする考え方だ。

1955年の創業以来、二輪車を起点にさまざまな小型モビリティを開発・販売してきた同社は1993年に世界で初めて電動アシスト自転車を、2002年には量産電動二輪車を国内で発売するなど、近年は高性能のEV二輪の開発に注力。また電動車椅子やゴルフカー、船舶用の推進機などさまざまな領域で、「電動のパワートレイン(車の動力源、または動力を推進力として伝える装置の総称をいう)」を広げてきた。

その代表的な製品である電動アシスト自転車は日・米・欧を中心に需要を伸ばし、2030年には世界で現在の約3倍に当たる、年間1500万台を超える規模にまで需要が拡大すると見込みという。こうした需要予測を基に、同社は、同日行われたオンライン記者会見で、「移動に伴う1人当たりのCO2排出量をさらに低減していく」意味合いからも独自のカーボンニュートラル戦略を進め、これまでにない領域の小型モビリティを生み出し続けていく方針を強調。具体的な数値目標としては2030年ごろから電動化の普及と合成液体燃料への対応などを加速させ、2050年の段階では二輪車の90%を電動化するほか、船外機には燃料電池の活用を想定していることなどが説明された。

人の感性に寄り添い、人と街を調和させる新たなモビリティを提案

また会見では、「人の感性に寄り添い、人と街を調和させることのできる新たなモビリティであり、二輪車と四輪車の長所や楽しさを併せ持つ提案」として、現在、開発中のスクーター技術とEV技術を融合した車両や、二輪車と電動アシスト自転車の中間に当たる立ち乗りの電動小型モビリティなど、次世代型のモビリティが実際に動く様子を紹介。一方で、既存の小型モビリティのパワートレインをより環境負荷の小さいものに転換していくとともに二輪車やマリン製品でのバッテリーEVやカーボンフリーの合成燃料の活用などの検討を進め、その上で内燃機関の熱効率や駆動効率の向上にも粘り強く取り組む考えを示した。

2022年に米シリコンバレーに設立予定の自社ファンドは、環境資源分野に特化したベンチャー企業の探索と出資を行うもので、運用総額は1億ドル(約109億円)、期間は15年を想定している。具体的には地球環境の維持や改善に資する新たな事業について、地域を特定せず、事業としての成長性が見込めれば出資を検討し、CO2排出量を差し引きマイナスにする「カーボンネガティブ」につながる新規事業の構築を目指す。

会見に臨んだ同社の日髙祥博社長は、2050年までに自社の製品群からの排出量を90%削減するという目標について「今から相当頑張らないと達成が難しい」という覚悟を示した上で、「手軽な移動は生活圏の拡大や職業、教育機会の拡大に直結し、SDGsの観点からも大変重要な当社のミッションだ。一方で気候変動への対応は待ったなしの状況。今後はより燃費効率の高い製品の開発やEVモデルの普及、さらにはカーボンニュートラル燃料に対するパワートレインの開発などを組み合わせることで、相反する二つの大きな期待に応えていきたい」と決意を表明。

また開発担当者として同席した技術・研究本部長の、丸山平二取締役上席執行役員は、「乗り物は移動を便利にするだけでなく、元来、楽しさを与えてくれるパートナーであると考えている。カーボンニュートラルを目指す上で、環境に優しく、より安全でより楽しいソリューションを創出していく営みは、当社にとってポジティブなチャレンジであり、チャンスである」と話した。

廣末智子(ひろすえ・ともこ)

地方紙の記者として21年間、地域の生活に根差した取材活動を行う。2011年に退職し、フリーに。サステナビリティを通して、さまざまな現場の当事者の思いを発信中。