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青山学院大に「フェアトレード大学」認定 学生の取り組みを高く評価

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提供:青山学院大学

青山学院大学はこのほど、国内の大学で4校目の「フェアトレード大学」に認定された。同大では、「フェアトレードは、世界の人々が自らの働きによって人間らしい尊厳のある生活を保障しようとする公正な貿易活動である」とする独自の憲章を学生自らが主体となって策定。また学生が企業などとの協業によるオリジナルのフェアトレード商品を開発・販売したり、日本におけるフェアトレードの現状や課題についてSNSなどを通じて学内外に積極的に発信している。そうした活動が高く評価されての認定に、学生たちは「国内のフェアトレードの普及を引っ張っていけるような存在になることができれば」とさらに意欲を高めている。(廣末智子)

「フェアトレード大学運動」は日本では2010年ごろに起こった。フェアトレードに関心の高い学生で組織する「日本フェアトレード学生ネットワーク」と「日本フェアトレード・フォーラム」とが合同で策定した日本独自の基準が2014年に完成。これを基に2018年2月に静岡文化芸術大学(静岡県浜松市)が初の認定校となり、札幌学院大学(札幌市)、北星学園大学(同)と続いた。今回の青山学院大学の認定は関東の大学では初となる。

なお日本独自のフェアトレード大学の基準は、「フェアトレードの普及を目指す学生団体が存在する」「フェアトレードの普及を図るキャンペーンやイベント、ならびにフェアトレードに関する研究・教育活動がキャンパス内外で行われている」「大学当局がフェアトレード産品を調達している」「複数のフェアトレード産品がキャンパス内で購入可能となっている」「フェアトレードの理念を支持し、その普及をうたったフェアトレード大学憲章を策定し、学生自治会、フェアトレード普及学生団体、大学当局の3者が同憲章に賛同している」の5つの基準とそれに付随する指標からなる。日本フェアトレード・フォーラムの役員と兼任しない委員で構成された「認定委員会」によって審査・認定され、理事会で承認される仕組みになっている。

大学独自の憲章、文言の一つひとつも学生が主体的に作成

青山学院大学はキリスト教信仰に基づく教育を「建学の精神」としており、フェアトレード運動の始まりも一説には米国のキリスト教会にあるとされることから、早い段階から大学を挙げてその啓発に取り組んできた。フェアトレード大学への認定についても2年ほど前から準備を進め、昨年10月に正式に申請。

大学独自の憲章も、文言の一つひとつを学生が主体的に練り上げる形で作成した。フェアトレードについて、「ボランティア活動とは異なり、世界の人々が自らの働きによって人間らしい尊厳のある生活を保障しようとする公正な貿易活動であり、人と環境を優先させようとする生産者と消費者の対等な協働事業」と定義するとともに、「差別や強制労働のない世界を生み出し、安全で健康にやさしい環境を守る社会づくりに貢献するものであり、この理想の実現には市民への呼びかけと市民による認知が不可欠だ」とする認識を示している。

2019年7月に学内で行ったフェアトレードウィーク。フェアトレードの紅茶を使ったタピオカミルクティーの100円引きチケットを100枚限定で配布している様子

企業と連携し、オリジナル商品を開発・販売

キャンパス内外での活動を主体的に行っているのは、総合文化政策学部の2、3年生の演習授業の一つである「フェアトレード・ラボ」と、「経営学部学生リーダーズ」に所属する学生たちだ。

フェアトレード・ラボは、企業との連携を通じたフェアトレードの啓発を推進しており、2020年度はインドのオーガニックコットンを使い、学生がデザインしたエコバッグを作成。これに、いずれもフェアトレードによる紅茶のティーバッグやはちみつ、また石けんやタオルを組み合わせた食料品と日用品の“フェアトレード福袋”を学内の購買会を通じてオンラインなどで販売し、売り上げの一部をフェアトレードを推進する団体に寄付した。

一方の「経営学部学生リーダーズ」は、ザンビアの有機バナナ畑で通常は捨てられてしまう茎の繊維に古紙やFSC認証パルプ材を加えてつくった「バナナペーパー」を使った付箋やメモ帳などの商品を企画販売し、売り上げの一部をザンビアに寄付する取り組みを継続して行っている。

こうしたフェアトレード商品の開発や販売を手がける傍ら、フェアトレード・ラボでは、日本のフェアトレードの現状や課題をよく知る大手スーパーや商社の担当者を招いて勉強会を重ねたり、インタビューを行うなど企業との関わりを通して理解を深め、SNSを通じて学内外にその内容を発信し、より深い啓発につなげている。

昨年来、コロナ禍でメンバー同士が顔を合わせる機会は減っているものの、2021年度は2年生16人と3年生20人が在籍し、前期は商社やコーヒーメーカーとのコラボ企画の内容を後期での実施に向けて固める話し合いを続けてきた。その中でのフェアトレード大学認定の知らせは、活動の大きな弾みになったようで、今後は学内の全学生のフェアトレードへの意識をより高めるとともに、大学のある渋谷区を、街ぐるみでフェアトレードを推進する「フェアトレードタウン」としての認定につなげる取り組みなども進める構想も温めている。

企業視点に立つ必要性に気付いた

同ラボの学生たちに話を聞いたところ、企業とのコラボレーションを通じて、日本でフェアトレード商品をさらに普及させるには、一消費者として見るだけでなく、価格や輸送などの問題も考えながら商品として扱う企業側の視点に立って考えることの必要性に気付いたとそれぞれに話してくれた。

そうした話の中で、ラボ長の河原涼香さんは「過去に植民地政策をとってきた欧州の人たちは、その償いの意味合いからもフェアトレードに対する意識が高い。一方、島国で鎖国の長かった日本ではそうした意識はなく、欧米に比べて、より安くて良い物を求める傾向が強いことからも、高くて品質の良いフェアトレード商品は受け入れられにくい風土があると思う」と分析。

今後の商品開発についてはそうした国民性を踏まえた上で、包装などのデザインで付加価値を付けるなど、「フェアトレードに関心のない人でも、思わず手に取った商品がフェアトレードのものだった、というように、新しい角度からのアプローチを考えたい」と言い、「認定をきっかけにラボとしてこれまで以上にこの問題に対して主体的に貢献し、青山学院大学がフェアトレード商品の国内での普及を引っ張っていくことができるような存在になりたい」と抱負を語ってくれた。

10代の知名度約8割「若い世代がフェアトレードの理念身につけ社会に出る時代に」

「日本フェアトレード・フォーラム」が行なった2019年の調査によると、日本でのフェアトレードの知名度は53.8%で、50代以上では半数以上が言葉自体を知らない一方、20代が57.8%、30代が57.4%、40代が58.8%と20〜40代で比較的高く、さらに10代は78.4%と8割近くに達するという結果が判明。「中高生や大学生を中心に未来を担う若い世代がフェアトレードの理念を身につけて社会に出る時代になっている」という。今回、フェアトレード大学の認定を受けた青山学院大学の学生らの活動にかける思いは、そうした傾向を裏付けるものと言えそうだ。

街ぐるみでフェアトレードを普及させようという「フェアトレードタウン運動」は2000年代に英国で始まり、これに「大学ぐるみで」を目指す「フェアトレード大学運動」が追随。2003年に世界で初めて「オックスフォード・ブルックス大学」がフェアトレード大学として認定され、フェアトレードタウン運動とともにフェアトレード大学運動も世界各地に広がった。

同フォーラムによると、2021年6月時点でフェアトレードタウンは世界30カ国の2000以上の都市に、フェアトレード大学は222大学に拡大。日本では4大学のほかに、熊本市、名古屋市、逗子市、浜松市、札幌市、いなべ市(三重県)の6市が、「フェアトレードタウン」の認定を受けている。

廣末智子(ひろすえ・ともこ)

地方紙の記者として21年間、地域の生活に根差した取材活動を行う。2011年に退職し、フリーに。サステナビリティを通して、さまざまな現場の当事者の思いを発信中。