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プラスチック容器回収へ 北九州市で花王やシャボン玉石けんなど国内10社以上が連携 

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プラスチック資源の地域での循環に向け、10社以上の企業と団体が連携するプロジェクトが、北九州市を舞台に始動している。花王やシャボン玉石けん(福岡・北九州市)をはじめとする日用品消費材メーカーが参画。シャンプーや洗剤、芳香剤など、多岐にわたる日用品関連のプラスチック容器や袋を専用ボックスで回収し、業界全体のより良いリサイクル方法を検証するとともに、回収品1個につき5円を地域の社会支援団体への寄付に充てる仕組みで、7月9日から年内いっぱい、市民らの協力のもとに実証実験を開催中。社会課題の解決に向け、参画する企業各社と団体に自治体が協力し、消費者を巻き込んで気づきの輪を広げる新たな挑戦といえる。(廣末智子)

事業主体は、九州エリアでの循環型経済の実現を目指す企業連合「九州サーキュラー・エコノミー・パートナーシップ(K-CEP)」。K-CEPは2020年2月にアミタホールディングス(京都市)とNECソリューションイノベータ(東京・江東)などを発起人企業とする共創型プラットフォームとして設立され、16企業が加盟している。

エステー、花王、サンスター、シャボン玉石けんなど日用品メーカー10社が参画

今回の北九州市で開催されている「『資源の循環』と『想いの循環』を叶える—MEGURU BOX(めぐるボックス)プロジェクト」は、K-CEPによる取り組みの第一弾だ。K-CEP加盟のエステー、花王、シャボン玉石けん、ユニリーバジャパン、ライオンの5社のほか、クラシエホールディングス、小林製薬、サンスター、P&Gジャパン、マンダムの5社を合わせた計10社の日用品消費材メーカーが参画。同市内のスーパー、ハローデイの3店舗に設置している「MEGURU BOX」と名付けた分別回収箱に、消費者から使用済みのプラスチックボトルやパウチを洗浄して持ってきてもらう方式で行っている。回収場所は今後、公共施設にも広げることを検討中だ。

回収の対象は、ヘアケア、ボディケア(ハンドケアを含む)、アイケア、オーラルケア、キッチン洗剤、バスタブ洗剤、衣類洗剤、消臭芳香剤、トイレタンク芳香洗浄剤など、多岐にわたる生活関連消費材の使用済みプラスチックボトルの容器や、詰め替え用パウチ類の袋など。上記の参画企業10社の製品に限らず、すべての日用品メーカーの製品を回収する(キッチンやトイレに使用する漂白系洗剤などの塩素系・酸性タイプの製品が充填されていたボトルやパウチ類、またチューブタイプやオイル製品、スプレー缶は対象外)。

ICT活用、水平リサイクル実現へ産官民挙げてスキームづくり推進

日本の日用品業界では、メーカーによって使用しているプラスチック素材が異なり、また素材別に分別回収する仕組みがないことなどから、回収したプラスチックなどを同じ用途の製品へと再生する水平リサイクル技術が確立されていない。このため、今回のプロジェクトでは、ICTを活用し、回収の際に製品のバーコードを読み取ることで、回収した量や品質などのデータを蓄積。これを基に各メーカーが協働し、検証を進め、プラスチック製品の共同回収スキームの構築や、素材・商品の規格統一化に向けたガイドラインの策定などにつなげるための研究を行い、水平リサイクルの実現に向けた取り組みを推進する。

またプロジェクトには、10社のほか、「協力・連携者」として北九州市や海洋プラスチックごみ問題の解決に取り組む「クリーン・オーシャン・マテリアル・アライアンス(CLOMA)」(東京・千代田)も名を連ねており、産官民を挙げてプラスチックの効果的なリサイクルスキームづくりに力を入れる。

回収品1個につき5円を企業が地域の社会支援団体へ寄付

さらに今回のプロジェクトの大きな特徴は、「資源の循環」とともに「想いの循環」を柱とし、回収品1個につき5円(1日1人上限15円)を、地域の社会支援団体への寄付に充てること。対象団体は、障がいのある人もない人も互いに尊重し合う共生社会の実現を目指す、社会福祉法人「北九州市手をつなぐ育成会」と、経済的困窮者や社会的に孤立している人の支援を行う認定NPO法人「抱撲(ほうぼく)」、さらに本来食べられるのに廃棄されている食品を必要な施設や子育て世帯などに無償で提供する取り組みを行っている認定NPO法人「フードバンク北九州ライフアゲイン」の3団体で、この中から寄付先を消費者自身が選択し、回収量に応じてプロジェクト事務局が寄付を行う。実際の寄付金は参画企業側が負担する仕組みで、分別回収が地域内の社会活動の応援につながるという好循環を生む資源回収スキームの検証にもつなげる考えだ。

具体的には、消費者である参加住民に各回収ボックスにあるQRコードから、無料通話アプリLINEの同プログラムの公式アカウントに登録し、寄付先を選ぶとともに、商品のバーコードを撮影して送信してもらう。スマホを持っていなかったり、LINE登録はしたくないが、回収には協力したいという人の参加ももちろん受け付けるが、社会支援団体への寄付に関してはLINE登録している人に限られる。

参画企業のうち、北九州市に本社のある「シャボン玉石けん」は、同市とSDGsを中核とした包括連携協定を締結していることなどから、地元企業としてプロジェクトへの参加を決めると同時にK-CEPにも参画した。今年で創業111周年となる同社は定番商品のパッケージにリサイクル資源を活用したり、粉石けんの軽量スプーンを紙製に切り替えるなど、独自の環境負荷低減策に取り組んでいるが、同業他社との連携は初めて。同社の広報担当者は、「プロジェクトを通じて、一社ではなしえない検証が実現でき、どういった物がどれだけ回収されているかを確認する上でも大きな意味がある。お客さまにとっても回収に協力することで、環境面だけでなく、困っている人への手助けになるという意味でも良い事業であり、実証実験の段階を経て実際のプロジェクトとして動き始めるのを期待している」と話す。

滑り出し好調 K-CEP「今秋にも日本全国に展開へ」

事業主体のK-CEPによると、9日にスタートしたプロジェクトは、9〜11日の週末の3日間、回収ボックスのあるスーパーの店頭で事務局がチラシを配るなど消費者にPRしたところ、活動を知った人が翌日には家族でたくさんの回収物を持って来てくれるなど、好調なすべり出しを切った。家庭での対象物の分別回収に困っていたという人も多く、「こういう回収場所ができるととても便利でいい」という声も聞かれたそうだ。

K-CEPでは今秋にも 日本全国に展開する「ジャパンサーキュラー・エコノミー・パートナーシップ(J-CEP)」を立ち上げる予定。それ以降はJ-CEPを中心に、今回の九州でのプロジェクトの規模拡大を図るとともに、他の地域でも順次プロジェクトを開始し、地域ごとにプラスチックリサイクルと社会支援への貢献活動をセットとした取り組みを推進していく考えを示している。

廣末智子(ひろすえ・ともこ)

地方紙の記者として21年間、地域の生活に根差した取材活動を行う。2011年に退職し、フリーに。サステナビリティを通して、さまざまな現場の当事者の思いを発信中。