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サントリー、2022年までに日米欧の生産研究拠点を100%再エネに

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サントリー天然水 北アルプス信濃の森工場

サントリーホールディングスは1日、2022年までに日本と米州、欧州にあるすべての自社生産研究拠点63カ所で使用する電力を100%再生可能エネルギーに切り替える、と発表した。また自社で排出する二酸化炭素(CO2)を金額換算し、投資判断に使う「内部炭素価格制度」の導入を進め、2030年までに1000億円規模の設備投資を実施する。これらの取り組みにより、2030年時点の温室効果ガスの排出量を約100万トン削減できる見込みで、同年までに自社拠点での温室効果ガスの排出量を2019年度比で50%削減する目標を達成できるという。これを機に今後はステークホルダーとの協働をより活発化させながら、2050年までにバリューチェーン全体で実質ゼロを目指す目標の実現に向け、さらに動きを加速させる。(廣末智子)

同社は2020年に「環境ビジョン2050」を掲げ、2050年までにバリューチェーン全体で温室効果ガス排出の実質ゼロを目指す方針を打ち出していた。その中間目標となる「環境目標2030」については当初、2030年までに自社拠点での温室効果ガス削減を2015年比で25%、バリューチェーン全体では20%削減するとしていたが、今年4月にそれぞれ2019年比で50%と30%に引き上げると発表。同時に「内部炭素価格」をグループ各社で年内にも導入する方針を示していた。

同社によると、世界各地域で再生可能エネルギーの導入を進めており、2020年時点では日本、米州、欧州の生産研究拠点における再エネ電力の使用率は約3割となっている。今回、これを太陽光や水力などの使用比率を高めることで2022年までに100%とする計画で、今年5月に稼働した「サントリー天然水 北アルプス信濃の森工場」(長野・大町市)をはじめ、仏ドンヌリーの工場や、年内に稼働予定の米国の工場などはすでに省エネ推進や再エネの導入、化石燃料由来のCO2の排出をオフセットするクレジットの活用などにより、実質的に「CO2排出ゼロ工場」となっているという。

現時点での同社のバリューチェーンを軸とする、年間の温室効果ガス排出量は約700万トン。このうち約100万トンが、自社の事業所拠点(主として飲料や酒類などを製造する生産工場)によるもので、具体的には熱エネルギーを使ってビールの素である麦汁を煮込んだり、ウイスキーを蒸留したりという熱や蒸気の使用による燃料由来の排出と、缶の製造ラインなどで多く使用する電気由来のものを合わせたものとなる。目標ではこれを2030年までに2019年度比で50%削減するとともに、サプライヤーからの包材や原料の調達時における製造・輸送に伴う温室効果ガスの排出や、物流・販売・リサイクルの現場における車両や自販機の使用電力、焼却などによる温室効果ガスの排出を合わせた全体の排出量についても30%削減する。

この目標について、同日、オンラインによる記者発表を行った北村暢康(のぶやす)・サステナビリティ推進部長は、「事業成長と、温室効果ガス削減を同時に果たすチャレンジングな取り組みだ」と説明。目標達成に向けた方策としては、エネルギー使用総量の削減(省エネ)と、温室効果ガス自体を排出しないエネルギーへの転換を組み合わせていくほかなく、自社拠点によるものについては、燃料面ではバイオマスなどの利用、電力では再エネ電力の利用の二本柱で進めていく方針をあらためて示した。

ウイスキーの蒸留工程で出る穀物残さをバイオマス発電に活用

このうちバイオマスについてはこれまでにもウイスキーの蒸留工程で出る穀物の残さや、ビールの製造工程で使用した水を自然に還す過程で生じたバイオガスを燃料として活用する取り組みを実施。再エネについては国内外で太陽光パネルを最大限取り付けた工場を稼働させているほか、工場立地の特徴を生かし、豪雪地では「雪室(ゆきむろ)」を空調やワインの貯蔵の冷熱源として利用するなど、自然を活用したユニークな取り組みも行っている事例もあるという。

その最先端をいくのが、「サントリー天然水 北アルプス信濃の森工場」で、太陽光による自家発電設備やバイオマスボイラー、再エネ由来電力の調達などを組み合わせて「CO2排出ゼロ工場」を実現している。

また、自社拠点以外のバリューチェーン上における排出量削減に向けては、同社では2019年に「2030年までにグローバルで使用するすべてのペットボトルをリサイクル素材あるいは植物由来素材100%に切り替え、新たな化石燃料由来原料の使用ゼロの実現を目指す」ことを掲げている。また商品に「またあえるボトル」と銘打ったラベルを貼ることで消費者にペットボトルが何度でもリサイクルできることを意識づける取り組みなどを行っており、北村部長は「個社でできることは限られている。競合先も含めいろいろな組織と協働連携して進めたい」とする考えを強調した。

今後のグローバルの再エネ調達については、それぞれの地域や国の政策や電力マーケットの事情に応じて進める方針。1000億円規模の取り組み推進に向けては「より熱負荷の少ないプロセスの開発と導入」「ヒートポンプや太陽光発電のさらなる活用」「バイオマスなど温室効果ガス排出の少ない燃料への転換」を視野に入れていることが明かされた。

廣末智子(ひろすえ・ともこ)

地方紙の記者として21年間、地域の生活に根差した取材活動を行う。2011年に退職し、フリーに。サステナビリティを通して、さまざまな現場の当事者の思いを発信中。