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ソニー、竹やサトウキビ、古紙を使い新パッケージ開発 小型製品包装材のプラスチック全廃へ始動

ソニーは9日、新たな小型家電の包装材として、サプライチェーン上の生産拠点近くにある産地に特定した竹やサトウキビの搾りかすなどを原料とする「オリジナルブレンドマテリアル」を開発した、と発表した。耐久性と強度に優れたリサイクル可能な紙素材で、プラスチックは一切使用していないという。同社は昨年9月に策定した、2021〜2025年度の環境中期目標の中で、2025年までに新たに設計する小型製品のプラスチック包装材の全廃を掲げた。新素材はその第1号として、今月25日に発売予定の完全ワイヤレス型ヘッドホンのパッケージとして採用される。同社によると、リサイクル素材の持ち味を生かした風合いを特徴に、購入者に環境への意識を高めてもらうようデザインしており、今後、さまざまな商品のパッケージに活用していく方針だ。(廣末智子)

新素材は、ソニーグループのデザインを手がけるクリエイティブセンターと、製品内部の部品構造などの機構設計について検討する社内横断組織である「メカ戦略コミッティ」が共同で開発。クリエイティブセンターは、2018年にも同社が1999年から販売している犬型ロボット「aibo」の最新パッケージに、ペットボトルからリサイクルしたフェルト素材による緩衝材と保護材が一体化した形状の包装材を開発し、日本パッケージングコンテストで経済産業大臣賞を受賞するなど、デザインを重視した環境負荷低減素材の開発に力を入れている。今回の新素材も、リサイクル素材の持ち味であるさまざまな色合いを生かすためあえて無着色とすることで、ユニークな風合いを実現した。

新素材の原料には、竹と、砂糖を生成する過程で発生するサトウキビの搾りかす、古紙の3つを使用。竹は成長が早く、密集してしまうと他の落葉樹などの成長を阻み、森林の植生を乱す要因となることから、またサトウキビの搾りかすは、その多くが発電燃料として燃やされ、二酸化炭素(CO2)排出の原因となっていることから、ともに近年はサステナブルな素材として活用する流れが広まっており、同社でもこれをプラスチックに替わる素材として選定した。

竹は中国、サトウキビはタイ サプライチェーン近くの産地に限定

その上で、今回の素材が特徴的なのは、竹は中国・貴州のものを、サトウキビはタイ・ナコーンサワンから半径100キロ圏内の畑で栽培されたものを使用していること。産地を日本ではなく、中国やタイに限定したのは、ヘッドホンやカメラ、テレビなどの生産拠点を中心とする同社のサプライチェーンが中国や東南アジアに広がっていることが大きく、パッケージの原材料についても、そうしたアジア圏で調達することで、輸送による環境負荷を低減する目的があるという。さらにこれらの産地を限定するにあたっては、実際に担当者が現地を訪ね、その地で竹やサトウキビが持続可能な育成サイクルの中で伐採または栽培されていることを確認した上で決定した。なお、竹の種類は山に生息するパンダの餌となる竹とは異なる種類のものを使用しているという。

さらに、これら二つの素材に加え、現地の工場近くで回収した古紙(リサイクル紙)を組み合わせることで、強度を持たせることに成功した。これらのブレンド比率を変えることで、さまざまな形状にすることも可能で、活用の幅の広がりが期待できるという。また表面に凹凸をつくり出す「エンボス加工」も可能なため、インクを使わずに文字を入れることができる点においても、環境に負荷を掛けないつくりとなっている。プラスチック素材を全く使用していないことで、パッケージは購入者が分別することなく、各自治体の「資源ごみ」として出すことができるのも特徴で、それにより、消費者の環境やリサイクルに対する意識の向上を高める狙いもある。

ソニーグループは2050年までに自社の事業活動および製品のライフサイクル全般を通して「環境負荷ゼロ」を達成する長期的ビジョンを掲げており、2025年を目標とする「新たに設計する小型製品のプラスチック包装材全廃」もその一環。これに基づき、オーディオ部門では「密閉型インナーイヤーレシーバー」などの包装材におけるプラスチック使用率の90%以上の大幅削減を順次行うとともに、テレビについても梱包体積の小型化に取り組み、2019年度発売の液晶テレビシリーズでは前モデル比で発砲スチロールの使用量を最大19%削減。デジタルカメラやビデオカメラ用バッテリーについても、従来のプラスチックパッケージの「紙箱化」を進めている。今回、同社初の「プラスチックを全く使わない包装材」を採用した、完全ワイヤレス型ヘッドホン「WF-1000XM4」は、外箱や内箱、商品保護シートなどに新素材を使うことで、前機種に比べてケースが40%、本体は10%小型化が実現した。

新素材の開発を手掛けたソニーグループ・クリエイティブセンターのデザイナー、廣瀬賢一氏は、「本質的な環境配慮というものは、当社が物をつくって提供するだけではうまくいかず、それを受け取ったお客さまの具体的な行動によって“環境循環”が起こると考えます。このような考え方をもとに、世界各地で植物が育つ環境を見てまわり、元になる原料を厳選し、それらの特徴を生かして組み合わせ、機能的に最適化するとともに、デザインとしても“伝えるための素材”に昇華させたのが、今回の素材です。このパッケージを通じて、環境に対する私たちの思いがお客さまに届くことを願っています」と話している。

廣末智子(ひろすえ・ともこ)

地方紙の記者として21年間、地域の生活に根差した取材活動を行う。2011年に退職し、フリーに。SDGsを通して、さまざまな現場の当事者の思いを発信中。