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ユニリーバと花王、東大和市でプラスチック容器を共同回収 水平リサイクル技術の検証へ

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ユニリーバ・ジャパンと花王は18日、日用品のプラスチック容器包装の資源循環の推進に向けて協業すると発表した。その一環として、6月1日から「みんなでボトルリサイクルプロジェクト」と銘打ち、東京都東大和市の10カ所に設置した回収ボックスに、消費者から使用済みの容器を洗浄し、乾かした状態で持ってきてもらう取り組みを始める。日本の日用品業界では、メーカーによって使用しているプラスチック素材が異なり、また素材別に分別回収する仕組みがないことなどから、ボトル容器からボトル容器への水平リサイクル技術が確立されていないのが現状。今回の協業では、消費者も参加しやすい同プロジェクトをきっかけにこの壁を打破し、ペットボトル同様、日用品でも企業や業界の枠を超えて循環利用を推進する。(廣末智子)

ユニリーバは、グローバルの成長戦略である「ユニリーバ・コンパス」に基づき、2025年までに全世界で新品のプラスチックの使用量を半減するとともに、販売量よりも多くの容器の回収・再生を支援する方針を掲げている。日本でも2019年にはプラスチックの使用量を年間100トン以上削減したほか、同年下期から「ラックス」「ダヴ」などの容器に再生プラスチックを採用。さらに2020年11月からは首都圏などのパートナー店舗で使用済み容器を回収し、エコグッズなどに再生加工するプログラムも始動させている。

一方の花王は、1990年代から製品の濃縮化による容器のコンパクト化や詰め替え製品の開発などを通して包装や容器に使用するプラスチック資源を削減に努め、製品のライフサイクル全体を通じた環境負荷低減に一貫して取り組んできた経緯がある。2019年4月にはESG戦略「Kirei Lifestyle Plan(キレイライフスタイルプラン)」を策定し、それまでの企業活動を「ESG視点でのよきモノづくり」へと高める観点から、環境や社会に配慮した取り組みを強化。同年9月にはプラスチック循環社会の実現を目指すことを発表している。2020年9月には東京都の「ワンウェイプラスチックの水平リサイクルに向けた資源循環型モデル事業」の一環で、複数の企業やNPOらとの連携で、使用済み包装容器の回収を含めた資源循環型システムを構築する実証実験に参画。また2020年9月からは同じ日用品大手のライオンとの協働でフィルム容器のリサイクルに向けた取り組みを加速させるなど、さまざまなパートナーとの連携・協働に率先して取り組んでいる。

リサイクルに関するガイドライン策定へ

ユニリーバ・ジャパン(以下、ユニリーバ)によると、今回のプロジェクトは、使い捨てコンタクトレンズの空ケースを回収するなど先進的な資源回収を行っている東大和市から、ユニリーバに「日用品のプラスチックのリサイクルについて何か一緒にできないか」と提案があったのがきっかけ。「1社でやるよりは2社で」と花王に協働を申し入れ、ユニリーバ・ジャパンにとっては初めてとなるプラスチックリサイクルにおける企業と自治体との連携が実現することとなった。これを機に、同社と東大和市との間で5月中旬に連携協定を締結。市役所内など市内10カ所に設置する回収ボックスについてはユニリーバがデザインを手がけた。

回収の対象は、シャンプーや石鹸をはじめ、食器洗い洗剤など日用品のボトル容器や詰め替え容器など。ユニリーバと花王の商品でなくともすべてのメーカーの容器を含む。回収した容器はリサイクル分野のリーディングカンパニーの一つであるヴェオリア・ジュネッツ社(東京・港)が受け入れ、あらためて分別・洗浄処理を施した上で、ボトル容器からボトル容器への水平リサイクル技術の検証を行う。そこで得られた知見をもとに、2社が中心となって、企業や業界の枠を超えた日用品の容器の分別回収やリサイクルに関するガイドラインの策定につなげる考えだ。

今回の取り組みについて、ユニリーバの広報担当者は「1社で取り組むよりも、同じ消費財メーカーと手を携えて取り組む方が問題解決の糸口を早く見つけることができると思う。消費者が比較的参加しやすい今回のようなプログラムを通じて、日用品のプラスチックにおけるボトル容器からボトル容器へのリサイクルを推進するためのガイドラインを作り、業界全体につなげていきたい」、また花王の広報担当者は「ここ数年で消費者のプラスチック削減に対する意識も大きく変わってきたのを実感しているが、一方で、まだまだ日用品のボトル容器は回収しづらいなど、企業努力が必要な部分が多くある。消費者の皆さまと一緒にリサイクルに取り組んでいく上で今、何が必要なのか、事業を通じて考えていきたい」と話している。

一方、今回の取り組みを提案した東大和市環境部ごみ対策課の担当者は、「家庭から廃棄される日用品のプラスチックは量も多いのに加え、シャンプーの容器などは硬くてつぶせないというイメージが強い。それをどんな形で回収し、リサイクルにつなげていくか、ようやく実証実験にこぎつけた感がある」と話す。ペットボトルについては市内のセブンイレブン全店に回収機を設置したことで行政による回収量を年間で約20トン削減することにつながっているそうで、日用品のプラスチックについても今回の取り組みを通じて「業界にとっても自治体にとってもリサイクルの指針となるものを提示することができれば」と期待を込める。

官民挙げて「ボトルtoボトル」の推進が進むペットボトルに、日用品の「ボトル容器toボトル容器」も追随することができるかどうか。東大和市で始まる業界初の実験に注目したい。

廣末智子(ひろすえ・ともこ)

地方紙の記者として21年間、地域の生活に根差した取材活動を行う。2011年に退職し、フリーに。サステナビリティを通して、さまざまな現場の当事者の思いを発信中。