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ブランドが社会とつながる、持続可能な未来へ  「サステナブル・ブランド ジャパン」 提携メディア:SB.com(Sustainable Life Media, Inc.)

現状維持ではなく、新しく生まれ変わるために〜価値創造都市・横浜から発信〜

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ファンケルの山本氏(右上)、東急の後藤氏(右下)、西武造園の永江氏(左下)、ファシリテーターの山岡氏

待ったなしの気候変動対策、収束の見通しがつかないコロナ禍──。人類存亡の危機ともいえる地球規模の様々な課題を解決するためには、現状維持ではなく、世の中が新しく生まれ変わるくらいの抜本的な改革が必要だ。そのためには、どのような取り組みが必要なのか。サステナブル・ブランド国際会議2021横浜では「横浜で観るRegenerationへの歩み」と題し、開港以来新たな価値創造に挑み続けてきた横浜と縁のある3つの企業の担当者を招き、その取り組み事例と、真の持続可能に向けての新生=リジェネレーションの方策について、活発な意見交換がなされた。(いからしひろき)

パネリスト:
山本 真帆 ファンケル SDGs推進室 室長
永江 晴子 西武造園 東日本事業管理部 アメリカ山公園 所長
後藤 修平 東急 フューチャー・デザイン・ラボ 主査

ファシリテーター:
山岡 仁美 サステナブル・ブランド国際会議横浜 プロデューサー
グロウス・カンパニー・プラス 代表取締役

いま求められるリジェネレーションという考え方

まずはファシリテーターの山岡氏からセッションテーマである「Regeneration(リジェネレーション)」という言葉について説明があった。日本語では単に「再生」と訳せるが、厳密にはペットボトルをリサイクルするといったレベルの解釈だけでなく「新しく生まれていく、これまで培ったものを生かしてさらに生まれ変わっていく、できなかったことを復元していく、死にそうな状態から息を吹き返す」(山岡氏)といったイメージを内包する、あるいは精神的に生まれ変わっていくという意味も込められるのである。

つまり、コロナ禍で世界中が困難に直面する今、持続させるだけでなく新しく再生しながら、さらに明るい未来へと社会全体を進める考え方が必要ではないか、というわけだ。

横浜には「開港のまち」のイメージがあるが、それはすなわち新たな価値創造に挑んできた歴史によるものであり、会場であるみなとみらいはその象徴だ。まさに横浜はリジェネレーションを象徴するまちのポテンシャルを持っているとも言えるだろう。

横浜を支える企業の3者が登壇

ファンケルは横浜で1980年に創業。現在も本社は横浜にある。主な事業は化粧品と健康食品の通信販売だ。山本氏は、同社SDGs推進室の室長を2020年3月から務める。

同社の創業理念は「正義感をもって世の中の負を解消しよう」。その旗印のもと、1982年に無添加化粧品事業をスタートさせた。これは70年代に社会問題化した化粧品による肌トラブル(通称「化粧品公害」)を解決したいがために事業化したものだという。

サプリ事業の開始は90年代、これも医療費の負担や肥満、生活習慣病の増加などの社会問題に対応したもの。当時の「健康食品は高価」というイメージをくつがえし、サプリメントと言う言葉を生み出し世の中に広げてきた自負があるという。つまりいずれも社会問題の解決が事業の動機というわけだ。

同社は2018年にSDGs宣言を行い、主に多様な人材の活用に取り組んでいる。その結果、管理職の男女比率はまもなく半々になる見込み。障害者雇用も90年代から積極的だ。

西武造園の永江氏は、みなとみらい線「元町・中華街駅」の駅舎上部に整備された全国初の立体都市公園「アメリカ山公園」の所長を務める。同社は、西武グループの造園緑地事業の専門会社として全国に事業展開。横浜では地域戦略子会社を含めたグループ4社で、多数の事業に携わっている。人と緑の環境創造サービス企業として、「私たちは緑の魅力を活かし、 お客さまに“やすらぎ・感動・ほほえみ” を提供します」を企業理念に掲げる。

同社が管理運営する都市公園は全国で78ヶ所、476施設。横浜市内では8ヶ所を手がける。環境教育事業と称して、社内インストラクターを全国に派遣したり、ワークショップを行ったりしているが、そのなかの1つが「はち育」である。

みつばちは半径2〜3kmの行動範囲内にある花から蜜や花粉を集める。そのため、採取したはちみつは地域の植生や季節、花の種類によって味が変わり、味覚で地域の緑を実感できる。ほかにもみつばちは、果物や野菜などの受粉を行う「ポリネーター」という重要な役割も果たしている。食卓に並ぶ作物の半分以上は、みつばちの受粉でもたらされているのだ。

このみつばちの生態を利用した環境教育プログラムとして2013年にアメリカ山公園で始まったのが「はち育」だ。今は横浜市内の7つの公園で展開されている。アメリカ山の園内では3万匹のみつばちを飼育。特徴的なのは、その管理や世話を外部に委託しないということ。自社スタッフで全て行うことで当事者意識が芽生え、みつばちや自然環境への理解が深められるからだ。

プログラムの内容は、巣箱の観察、採蜜体験、蜜蝋を使ったクラフト体験などで、幅広い年代に受け入れられているという。採取したはちみつを使った食品(オリジナルはちみつやお菓子等)の開発にも積極的で、近隣のホテルとのコラボメニューもある。

さらにゴミ削減のために始めた「はちみつの量り売り」も好評で、リピーターが増えているそうだ。 充填する間はみつばちの生態を話す良い機会だという。

東急の後藤氏は、開口一番「我社は鉄道や開発だけでなく『まちづくり』も行っている会社です」と述べた。その上で説明したのが、東急グループが目指すまちづくりの世界観だ。

それは、題して「世界があこがれるまちづくり」。具体的には居住者のウェルビーイング(幸福度)に加えてサステナブルなエコシステムを提供するというものだ。つまり「住んでいる人が無意識にサステナビリティに貢献できる、住んでいることがサステナビリティにつながるまちづくり」(後藤氏)を目指しているのだ。

具体的な環境負荷削減の取り組み事例としては、鉄道を含む事業体としては初めてRE100に加盟。2030年までにグループ事業で30%のCO2削減、2050年までには100%再生可能エネルギーでの事業運営を目標としている。また、東京の世田谷線では再エネ100%電車を導入。サステナビリティボンドの発行を予定しており、それにより省エネ新型車両導入などを計画している。

住みやすさについては、高齢化で活気を失いつつある沿線都市「たまプラーザ」を横浜市と連携してリジェネレーションに取り組んでいるほか、以前から子育て世帯向けに取り組んで来たサテライトオフィスが、コロナ禍で急速に進んだ働き方の多様化に貢献している。

再生のためには視点の転換と持続的な努力が必要

それぞれの事業説明の後、ファシリテーターや会場からの質問に答える形で、パネルトークが繰り広げられた。

まず、「社内的な文化や風土のリジェネレーションの具体例は?」との質問には「元々多様な人材や働き方に力を入れていたのでコロナにも対応できている」(ファンケル・山本氏)、「コロナ前から電車混雑緩和のためにラッシュ時間帯外出勤、サテライトオフィスの利用を推進してきた」(東急・後藤氏)、「養蜂を通じて地域の植物に興味を持ってくれる人が増えた。ゴミを減らすための量り売りが思いの外好評で、コロナ禍でも継続している」(西武造園・永江氏)と答えた。

「どうやってSDGsの社内浸透を図っているか?」という質問には、「1年前にSDGs推進室を立ち上げ、SDGsの基礎知識についてセミナー、コロナ禍中は動画教育などを行っている」(ファンケル・山本氏)、「Eラーニングで行っており、期限や復習テストなどもある。経営会議でもSDGs視点でのチェックがなされる」(東急・後藤氏)、「2020年春にできた西武アグリの社長が女性。西武グループ全体での女性スタッフの交流セミナーなど」(西武造園・永江氏)との回答があった。中でもファンケルの山本氏からは、「SDGsのトピックスを全社員に配信しているが、イベントに参加したいなどの声がこの1年で増えている」と、地道な努力が実を結んでいることを明かした。

最後にファシリテーターの山岡氏は「SDGsを企業の利益にしていくには?」とパネリストに投げかけた。

「顧客の負を解消するものを生み出していけば結果的に利益につながるはず」(ファンケル・山本氏)

「誠実に言い続け、やり続けること。続けることが大事だと思う」(西武造園・永江氏)

「社会課題解決をしながら開発してきたと自負がある。今後も環境負荷、例えばゴミ出しが面倒だというなら、それが苦にならないものをわれわれが提供していけば、必然的にビジネスモデルとして成立すると思う」(東急・後藤氏)

リジェネレーションを具現化するためには視点を変えること、そして根気よく持続することが重要だ。

いからし ひろき

ライター・構成作家。旅・食・酒が得意分野だが、2児の父であることから育児や環境問題にも興味あり。著書に「開運酒場」「東京もっこり散歩」(いずれも自由国民社)がある。