SUSTAINABLE BRANDS JAPAN のサイトです。ページの先頭です。

SUSTAINABLE BRANDS JAPAN のサイト

ブランドが社会とつながる、持続可能な未来へ  「サステナブル・ブランド ジャパン」 提携メディア:SB.com(Sustainable Life Media, Inc.)

環境に配慮した観光MaaSで日光ブランドを強化へ 栃木県とデロイトが連携:第2回全国SDGs未来都市ブランド会議⑤

右上から時計まわりに、荒川氏、松山氏、庄司氏、小池氏

栃木県の日光地域は年間1100万人が訪れる一大観光地だが、約7割の観光客がマイカーを利用。そのため交通渋滞が発生し、観光や環境、市民生活に大きな影響を与えている。栃木県は、東部鉄道やJTBと国内初となる環境配慮型・観光MaaS「日光MaaS」を導入し、官民連携で渋滞緩和、脱炭素社会の実現に取り組もうとしている。第2回全国SDGs未来都市ブランド会議の4つ目の事例紹介は、栃木県と交通モデル計画策定を支援したデロイト トーマツ コンサルティングの官民連携による挑戦を紹介する。(岩崎 唱)

ナビゲーター :
庄司 真人 高千穂大学 商学部 教授
パネリスト:
荒川 涼 栃木県 環境森林部 環境森林政策課 主査
小池 雄一 デロイト トーマツ コンサルティング コアビジネスオペレーション Smart X Lab マネジャー
松山 知規 デロイト トーマツ コンサルティング パブリックセクター Future of Citiesチーム アソシエイトディレクター

環境にやさしい観光地の実現を目指して

ナビゲーターの高千穂大学教授の庄司真人氏が3人の登壇者を紹介し、デロイト トーマツ コンサルティング コアビジネスオペレーション Smart X Lab マネジャーの小池雄一氏が進行役となってセッションを進めた。小池氏はまず、栃木県環境森林部環境森林政策課 主査の荒川涼氏に環境型交通MaaSを構築するにあたって背景にある問題点について質問した。荒川氏は「日光地域は、少子高齢化や人口減少に直面していて、このままでは地域の経済活動も停滞してしまう。また、ゴールデンウィークや紅葉シーズンになると交通渋滞が激しく、日光駅から東照宮まで歩けば15~20分なのに、車だと1時間半~2時間かかる。今回の取り組みではこうした問題を解消しながら地域住民、観光客、それぞれにメリットがある効率的な人の動きや経済活動を生み出したい。また、日光を環境にやさしい観光地とし脱炭素社会の実現に向けても取り組みたい」と語った。

県庁がハブとなり、官民連携を推進

デロイト トーマツコンサルティング パブリックセクター Future of Citiesチームアソシエイトディレクターの松山知規氏が「住民、商工事業者、東武鉄道、JTBグループなど多くのステークホルダーがいる中、県がその中心を担っていく上で苦労した点は何か」と質問した。荒川氏は「現場に直接足を運んで意見をいただくことでさまざまな課題が見えてきた。課題を明らかにした上で庁内の該当する部署を巻き込み、クロスファンクションすることで解決に取り組みました。事業者との連携に関しては、課題をクリアにしていった上で、それに向かって一緒に取り組めるかどうか感触を確認し、お互いどこまで歩み寄れるかを折衝しました。一緒に取り組んでいただける場合は、予算化や国と補助金に関する折衝を行い、私が足を延ばして何度もメッセージを伝えて、問題があれば一つひとつ潰していくという、ある意味泥臭い営業活動のようなことをしてきました」と語った。松山氏は「まさに広域自治体としての県庁の動き方ですね。ご一緒させていただき、県庁の方がここまで動かれるのかと驚いた」と感想を述べた。

栃木県では環境森林部環境森林政策課が中心となっているが、交通渋滞に関しては県土整備部の交通政策課、国立公園に関しては同じ環境森林部の自然環境課、観光客の誘致では産業労働観光部の観光交流課など多くの課が一緒に取り組んでいる。

「環境にやさしい観光地」として、日光のブランド強化

続いて小池氏が、EVカーシェアリングや県保有のEVバス運行などのモビリティサービスにより、地域課題を解決し、脱炭素化に取り組む中で「どのように民間事業者の収益化に結び付けようと考えていらっしゃいますか」と質問。荒川氏は「モビリティサービス単体で収益化を図るのは難しく、駅前だけでカーシェアリングをするだけではなく、奥日光の方でもやって欲しいという思いが行政にはある。どこまで含めるかは地域の交通問題と併せて考え、解決策を見出している」と回答。小池氏は「モビリティサービス単体で成立が難しい中、生活サービス、とりわけ観光という視点で収入源の複層化を狙いながら解決先を見出すということですね」と話した。

またMaaS化に関して荒川氏は「実際にMaaSを開発するのは事業者の方なのですが、行政としていかに活用するかを考えたい。例えば、県の観光バスを紐づけ、利用情報を事業者と一緒に検討してさらに適正な交通のありかたを考えていく必要がある」と説明した。

観光振興と脱炭素社会実現の両立を目指す

松山氏は「われわれはコンサルティング会社なので、机上で構想を描いてアドバイスをするのが一次的な役割。今回、栃木県とご一緒して、われわれのようなプレーヤーも地域に入って役割を果たす重要性を改めて感じました。鉄道や旅行会社を所有してはいませんが、だからこそ第三者的立場で意見を述べられます。われわれの会社では“カタリスト(触媒)の役割を積極的に果たす”という目標があります。官民連携の触媒となっていくことも、まちづくりに関わる意義の一つです。この取り組みはまだ構想段階で先は長いので、しっかりと取り組んでいきたい」と語った。

小池氏は「基本的に3つの視点で取り組んでいます。まず一つ目は、何が地域の課題でどうすれば地域に住む人が幸せになれるか、これがスタート地点です。二つ目が地域の事業者がどういうかたちで恩恵を受けられるのか。三つ目が事業者の掲げるKPIと自治体の掲げるKPIが合致しているか、もしくはすり合わせていくことができるのか、どのような関係性を保てるかという視点でエコシステムの構築に取り組んでいます」と述べた。

最後に荒川氏が「この事業は2021年度からスタートします。引き続き官民連携で取り組み、脱炭素社会の実現に向けて頑張っていきたい。みなさまもぜひ観光客としてMaaSをご活用ください」と締めくくった。