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小田原市と日産が進める、EVを活用した地域エネルギーマネジメント:第2回全国SDGs未来都市ブランド会議②

左から田中氏、高橋氏、山口氏

第2回全国SDGs未来都市ブランド会議では、官民連携による持続可能なまちづくり実現に向けた5つの取り組み事例を紹介した。最初の事例は、2050年までに「カーボンゼロ」を目指す神奈川県小田原市と日産自動車のEV(電気自動車)を活用した地域エネルギーマネジメントモデル事業。サステナブル・ブランド国際会議ESGプロデューサーの田中信康氏がナビゲーターを務めた。(岩崎 唱)

ナビゲーター :
田中 信康 サステナブル・ブランド国際会議ESGプロデューサー、サンメッセ総合研究所(Sinc)代表
パネリスト:
山口 一哉 小田原市 環境部エネルギー政策推進課 副課長
高橋 雄一郎 日産自動車 日本事業広報渉外部 主管

「走る蓄電池」を地域の課題解決に役立てる

日産自動車は、EVを“走る蓄電池”と位置付け、地域の環境(温暖化対策)、防災、エネルギーマネジメント、観光、交通弱者などの課題解決を目指す日本電動化アクション「ブルー・スイッチ」を展開している。同社の日本事業広報渉外部主管の高橋雄一郎氏は「走る蓄電池であるEVの特長と地域課題を掛け合わせると社会を変革するソリューションになります。BCP(事業継続計画)対策強化、電力の地産地消、カーシェアによるエコな観光促進、ガソリンスタンド過疎化対策などに対応できる」と説明した。そして、沖縄県名護市では市役所の公用車にEVを採用し、月曜日から金曜日までは公用車として使用し、週末は観光客に貸し出している事例や山口県でNTT西日本が太陽光発電した電気を自家消費しつつEVと定置型蓄電池に充電し、それを遠隔操作で制御することでエネルギーコストとCO2の削減が可能になった事例などを紹介した。

EVで住む人がワクワクする“まちづくり”を

また、EVが防災の面で注目されている点を挙げ、「EVは充電した電気で走りますが、バッテリーに貯めた電気を、EVパワーステーションを介して非常用電源として利用することができる。新型リーフe+の62kWhのバッテリーで家庭の4日分ぐらいの電力を供給できます」と説明した。そして2019年の台風15号による千葉県長期停電の際に日産が53台のEVを提供し、避難所、公民館、高齢者施設などへ電力を供給した事例を紹介した。また、長野県乗鞍岳の「星と月のレストラン」ではEVの電気を照明や調理に利用している事例、奈良県三郷町で平常時にEVを乗り合いタクシーとして活用し、災害時には役場に電力を供給する事例を紹介した。ブルー・スイッチの活動は2021年2月時点で地域との連携が113件になり、大きな広がりをみせている。最後にブルー・スイッチ運動の今後に対し「地域が抱えるさまざまな課題を日産グループの持つ先進的な技術、ノウハウ、ネットワークを駆使して解決し、地域に住む人がワクワクする“まちづくり”に貢献していきたい」と抱負を語った。

公民連携により2050年までにカーボンゼロを目指す

小田原市環境部エネルギー政策推進課副課長の山口一哉氏は、日産自動車と連携して取り組んでいるEVを活用したエネルギーマネジメントモデル事業について説明した。「小田原市はこれまでも一貫して公民連携により再エネ活用に取り組み、2050年までにカーボンゼロの実現を目指しています。取り組みには5つのステップがあり、ステップ1として2014年に民間事業者の力を借りて地域電源創出に取り組みました。2016年のステップ2では、つくった電気を地域に届けるために小売電気事業者と連携。2017年にステップ3として市内の7校の小学校に太陽光発電を設置し、VPP(バーチャルパワープラント)を構築しエネルギーマネジメントの仕組みをつくりました。そして2019年にステップ4として日産自動車との連携によりEVを活用したエネルギーマネジメント事業に取り組んでいます。ステップ3では定置型蓄電池を使っていましたが、走る蓄電池であるEVを活用することでエネマネ連動型EVシェアリング事業と位置づけ展開しています。2020年からはステップ5として大手電力会社の配電網を活用し地域のマイクログリッド構築に取り組んでいるところです」と全体像を紹介。

さらに、山口氏はステップ4の脱炭素型地域交通モデルとしてエネルギーマネジメントを活用した事業を詳しく解説した。「単なる実証モデルではなく、民間事業者がビジネスとして展開しやすいようEVシェアのサービスを軸にしました。その中でEVの予約状況、充放電制御を統合的にマネジメントしています。また、非常時に避難所でEVの電気を使えるようにし、平常時でも地域イベントでの利用や、例えばキャンプ場にEVを持って行って炊飯器、パソコンなどの電化製品が利用できるワーケーションのサービスも展開しています。そして、今回、日産自動車と『電気自動車を活用した災害連携協定』を締結し、災害時にEVの貸与や販売店の急速充電器の解放などにより災害時のレジリエンス強化に役立てています」と述べた。

官と民がよく話し合って着地点をみつける

ナビゲーターの田中氏が「小田原市と日産自動車の連携は、市民から見てもわかりやすく、伝わりやすいモデルだと感じます。日産自動車はブルー・スイッチ運動をどういうかたちで推進されるのでしょうか」と質問。それに対し高橋氏は「さまざまな自治体や企業と一緒になって進んでいくことが重要です。今後も関係各位とディスカッションをしながら進めていきたい」と回答した。また、小田原市の山口氏に対し「自治体が民の力を使いながら事業を進めていくための秘訣は?」という質問を投げかけた。山口氏は「何をすべきか、何をやりたいのかということを内部でしっかり検討を重ね、すべきこと、やりたいことを一つの絵に描くことをしています。その絵をホームぺージなどで発信すると関心をもたれた企業からのアプローチが必ずあります。その場合も何をしたいのかというディスカッションを重ね、お互いがウィンウィンになれる着地点を見つけるようにしています。実は我々がやってきた取り組みは自治体側としては予算ゼロです。企業に補助金がおりていくかたちでやってきています。それでも企業がやりたいと言っていただけるような着地点を見つけることが大切だと思います」と答えた。