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ペットボトル国内完全循環、サーキュラーエコノミー実現のカギは

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右上から時計まわりに、中井氏、米女氏、伊達氏、髙尾

毎日、当たり前のように手にするペットボトル。その行き着く先を考えた時、多くの人が海洋プラスチックごみを連想するのではないだろうか。もっとも日本のペットボトルのリサイクル率は86%と世界的にも高い水準を示しており、問題の本質は、そのリサイクルの質を改善し、現状12%にとどまっているペットボトルからペットボトルへと水平リサイクルする割合を高めて半永久的に循環させるシステムを構築すること、そして、その先にある、サーキュラーエコノミー(循環型経済)へとどうつなげていくか、にある。そうした観点からペットボトルの可能性について考える、「Regeneration:ペットボトル国内完全循環への挑戦」と題したセッションが、サステナブル・ブランド国際会議2021横浜で行われた。国を代表する立場から環境省の事務次官、そして業界団体のトップ、また新たな技術を生み出す企業の代表者らが登壇し、真のサーキュラーエコノミーの実現に向けて議論を深めた。そこから見えてきたのは、私たち消費者一人ひとりの行動も、大きな鍵を握っているということだ。(廣末智子)

ファシリテーター:
伊達 敬信 UMINARI 代表理事兼CEO
パネリスト:
髙尾 正樹 日本環境設計 代表取締役社長
中井 徳太郎 環境省 環境事務次官
米女 太一 全国清涼飲料連合会 会長

海洋ごみ、気候変動、生物多様性 ペットボトルの課題は包括的に捉えるべき

セッションは、海洋プラスチック問題に取り組むNPO「UMINARI」の代表理事兼CEOの伊達敬信氏がファシリテーターを務め、はじめに、欧州(40%弱)や米国(約20%)と比べても、86%と高い日本のペットボトルのリサイクル率の中身について、「ボトルtoボトル」と言われる水平リサイクル率が12%にとどまっている反面、多くが衣服や容器などに再生され、「それがまた棄てられ、燃やされるといったところで、実は気候変動の問題にも密接につながっている」と指摘。それゆえ、ペットボトルの課題を巡っては「SDGsで言えば海洋ごみの切り口だけではなく、気候変動や生物多様性、エネルギーの問題や、さらにその原料がどう作られてどう消費され、廃棄またはリサイクルされるのかといった、ライフサイクル全般を包括的な視点で捉えることが重要だ」と強調し、このセッションでも「ペットボトルの悪影響をどう減らすかではなく、ペットボトル以外の資源や経済、社会の構造にまで良い変化を生み出す、リジェネレーションの価値観にもつながる議論をしたい」と述べた。

“2050年脱炭素宣言“機に、温暖化対策は日本の成長戦略に
環境省「3つの移行」通じて経済社会のリデザイン目指す

続いて環境省環境事務次官の中井徳太郎氏が政府の方針について説明。昨年10月の菅首相による「2050年カーボンニュートラル宣言」を機に、地球温暖化対策を日本の成長戦略と位置付け、脱炭素社会と循環経済、分散型社会を切り口とする「3つの移行」を通して経済社会をリデザイン(再設計)する方向性にあることを、中井氏の言葉で、「今、地球環境が病気で昏迷している状況から、健康で、すべてが調和し、成長していく世界へと転向しようとしている」と表現した。さらに、そうしたリデザインの先には「地域循環共生圏(ローカルSDGs)の創造」を見据えていることを、「自然や生き物の世界には無駄がなく、サーキュラーエコノミーもある意味それと同じ、生態系のシステムそのものであると捉えてのこと。プラスチックに限らず、ありとあらゆるモノを製造段階から環境に配慮してつくり、再利用しやすいものにしていく。または使い尽くして、最後、焼却することになったとしてもそれもエネルギーとして使う。そのように資源をフル活用し、経済社会のシステムを生態系、生命のシステムに寄せていくという発想で取り組んでいくということだ」と語った。

中井氏は、その上で「各論としてのペットボトル」について、業界の努力による容器の軽量化も進んでおり、86%というリサイクル率は、「日本人の真面目さも含めた、世界に冠たるものだ」と自賛。もっとも「これをもう一歩進めることが課題」であり、現在、ペットボトルを含めた汎用性のあるプラスチックを一括回収するシステムを構築し、さらにそれをリサイクルして有効活用していくための循環の促進を、日本では初めてのプラスチックという素材に着目した新たな法律の形(プラスチック資源循環促進法案)で整備していることを報告した。

飲料業界2030年度までにリサイクル率100%へ 最重点は「ボトルtoボトル」

次に、一般社団法人「全国清涼飲料連合会」の会長、米女太一氏が、清涼飲料業界を代表する立場で登壇。同業界の販売金額は年間約4兆483億円で、1日当たりでは国民一人がペットボトル約1本を消費している計算になると発表。業界の将来に向けた共通課題への対応として、2018年11月に、2030年度までに現状のペットボトルのリサイクル用途に熱回収を加えることで、現在86%のリサイクル率を100%にまで高めることを柱とする「プラスチック資源循環宣言」を行ったことを説明した。中井次官の説明にもあったペットボトル容器の軽量化については2004年対比で約25%を軽量化しており、量にして18万5000トンの削減につながっているという(いずれも2019年実績)。

さらに米女氏は、業界がペットボトルのリサイクルを推進する大きな動機付けとして、リサイクルを全く行わない場合には約366万8000トンにも達するCO2の排出量を、きちんとリサイクルし、再利用することによって約40%削減できることを挙げるとともに、一度の再利用で終わらせることなく何度でも再利用できる「ボトルtoボトル」(水平リサイクル)のメリットを強調し、業界としてもこれを最重点活動として位置付けていることを表明した。

それによると、同連合会は現在、「使う」「伝える」「集める」「作る」の4つを循環させながら「ボトルtoボトル」を推進している。このうち「集める」と「伝える」の部分で、昨年8月、東京都と清涼飲料業界とでコンソーシアムを設立して行っている「ボトルtoボトル東京プロジェクト」に参画し、学校や駅中、事業系ビルなどのあちこちに設置したリサイクルボックスに、飲み終わったペットボトルを実際に投入してもらう取り組みを通して、「これがまさにゴミ箱ではなくて、リサイクルするための箱である」ということを消費者に認識してもらうと同時に、「このボックスに投入されたペットボトルがまたペットボトルへとリサイクルされて、循環型社会のスタートになっていく」という啓発に力を入れている。その結果を米女氏は「非常にきれいな、品質の良い状態でペットボトルを回収できている」と手応えを話し、現在、2030年に向けたボトルtoボトルの目標値を検討中であるという飲料業界としてのビジョンを報告した。

ペットボトル完全循環には生活者の参画と、技術の2つが必要

続いて、実際にボトルtoボトルを実現していくに当たり、テクノロジーを踏まえたソリューションを提起する立場から、日本環境設計の髙尾正樹社長が登壇。自社について、「2007年、27歳の時に、共同創業者(現会長)と2人で資本金120万円でスタートしたベンチャー企業」と紹介。「洋服の90%以上が廃棄され、燃やされてしまっていることを知り、これはなんとかしないといけないと思った」のがきっかけで、洋服だけではなく、今日のテーマであるペットボトルなどあらゆるものを循環させることを目的に設立。周りからは「環境ビジネスなんて儲からないからやめた方がいい」などと言われる中、循環型社会をつくるために必要なことはすべてやろうとする姿勢に徐々に出資してくれる賛同者も増え、現在、資本金はなんと44億円にまで増えたといい、「まだまだ少ないながらも社員も増え、仲間も、工場も増えて、増えていないのは売上高だけという状態にまで来ている」とにこやかに話した。

ペットボトルの完全循環のためには髙尾氏は2つのポイントがあると指摘。一つには、やはり86%という日本のペットボトルのリサイクル率や、93%という回収率の高さを例に、「これを誰がやっているかというと、生活者=消費者であり、この事実はすごく大きい」とした上で、「生活者も一緒になって循環の仕組みに参画すること」を挙げた。そして、もう一つが技術であり、化学工学の研究一筋できた自身の体験から「技術開発には夢も、可能性もすごく感じている」と希望を語った。同社はペットボトルを何度循環させたとしても不純物をほぼ100%取り除くための「PETケミカルリサイクル技術」の開発に長い時間をかけて成功。これによって不純物を取り除いたものを使い樹脂をつくる技術についても川崎市にある工場で近く稼働させる予定だという。もっともペットボトルのリサイクルについては現在、「メカニカルリサイクル」が主流であることから、髙尾氏は「メカニカル7割、ケミカル3割といった“ベストミックス”を実現することによって、ペットボトルの完全循環も実現できるのではないか」とする見解を述べた。

「脱炭素を実現するためにも、とにかく目の前にあるごみを燃やさないことが重要。ペットボトルの完全循環を実現すれば、ペットボトルを燃やさなくて済む。飲み終わったペットボトルはごみではなくて、資源になる。これまでの世界は地下資源を採掘し、そこからモノを作って生活に使うというものだったが、これからはペットボトルに限らず、すべての地上資源をぐるぐると回し続けていく世界を目指したい。その完全循環をつくるには何より全体の仕組みが必要で、その仕組みの中には生活者=消費者が必ず入っていなければならない」

環境次官「1プレーヤーとして一緒に汗をかき、地べたに這いつくばる」

議論はここから、ペットボトルに限らず、全体としてのサーキュラーエコノミーの良い形とは何かということや、政府や業界の役割を再度確認するといったところに及び、中井氏は環境省の立場について、「サーキュラーエコノミーという概念を皆で共有し、ペットボトルであれば、国民参加型の循環システムを事業者さんや生活者の皆さんと一緒につくっていく。この5年10年でカーボンニュートラルの道筋が見えなければいけない局面にあって、経済と社会を転換させていくため、大きな経済活動をされている企業やベンチャー企業とも分け隔てなく共に運動を展開するプレーヤーとして、一緒に汗をかいていきたい」と強調。さらに「今、地球が病気なのでこっちの健康な方に行きましょうというビジョンを提示すると同時に、地べたを這いつくばって、皆さんに寄り添わせていただきながら、現実を動かしていきたい」と述べ、伊達氏が「まさか、環境次官から『地べたを這いつくばって』というような言葉が聞けるとは。大変心強く思う」と応じる場面もあった。

また米女氏は、飲料業界の未来について、「サーキュラーエコノミーやリジェネレーションというのは、あえて新しい資源を使わずに今あるものから新しい価値を生み出していくという意味で、本当に素晴らしい世界をつくることができると思う。われわれ飲料産業も、本来、飲み物を通じて世の中を明るくするのが役割であり、そういうお手本になれるよう皆で協調していきたい」、髙尾氏は、「循環型社会をつくる上で、常に新しいことを最初に手掛けるのが、僕らベンチャーの役割だと考えている。ペットボトルもそうだし、こういうやり方をすれば、あらゆるものを循環させることができるんじゃないか、というその一発目を、生活者の皆さんとともにやっていきたい」など、それぞれがサーキュラーエコノミーの実現に向け、力強く決意を表明。これに対し、伊達氏は、「経済性を生み出していくためには、サーキュラーエコノミーの規模を大きくしていかなければならない。そのためにも各セクターがあらゆる垣根を越えて良いビジョンを共有し、それぞれの役割分担や協働のバランスを模索しながら進めていくことが大事だと感じた」と話し、セッションを締めくくった。

廣末智子(ひろすえ・ともこ)

地方紙の記者として21年間、地域の生活に根差した取材活動を行う。2011年に退職し、フリーに。サステナビリティを通して、さまざまな現場の当事者の思いを発信中。