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ブランドが社会とつながる、持続可能な未来へ  「サステナブル・ブランド ジャパン」 提携メディア:SB.com(Sustainable Life Media, Inc.)

「自分事のマインドを上げていきたい」――高校生が学び、提案するサステナビリティとは?

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論文選考を経て選ばれた高校生らがサステナブル・ブランド国際会議2021横浜に参加し、自らも意見や提案を発表するプログラム「サステナブル・ブランド国際会議 SB Student Ambassador」。オンライン中継によるリモート参加も含めて全国12校が集まり、2日間のイベント中にそれぞれが関心のある多くのセッションを聴講。発表では、ペットボトルごみ問題解消に向けた取り組みや、持続可能なツーリズムの提案など、幅広いテーマで実現を目指すアイデアの数々を披露した。(横田伸治)

サステナブル・ブランド国際会議2021横浜の2日目夕、ここまで多くのセッションに参加してきた高校生たちが一堂に会し、「成果発表会」が始まった。まずは30分間、2日間で学んできたことを振り返りながら、「企業と共に取り組める地元でのSDGs活用」をテーマとする発表内容をブラッシュアップ。その後、高校生たちは緊張した表情で、1校5分間の発表へと臨んだ。

まず登場したのは滝川第二高校(神戸市)。「地元でできる気候変動対策」と題した発表では、神戸市が2018年度、政令市で転出超過ワーストとなったことなどを挙げ、兵庫県全体での観光資源の不足やごみ処理問題などを指摘。「若者に魅力的なしごとづくり、まちづくりを」と呼びかけ、地域をPRしながら気候変動対策も行うために、神戸市の舞子海岸などに豊富な海藻類をバイオマスエネルギーとして活用することを提案した。

玉川学園高等部(横浜市)の生徒たちは、プラスチックごみ問題に対し「プラスチックを使うな、では不満がたまってしまい、持続可能ではない。使わないのではなく、使っても良い仕組みを作るべき」と主張。「サステナブルパーク」という飲食店や公園が一つになった施設を設置することで、飲食店が使用するプラスチックを統一し、専用の回収箱も設置するという構想を披露した。訪れた人が楽しみながら、ごみ問題について学べるまちづくりのアイデアだという。

同じく横浜市から参加した聖光学院高校も、イベント開催地でもある同市の魅力向上に向け、地元ならではの目線を共有した。横浜駅近くを取り囲むように流れる帷子川のイメージ向上が重要だと指摘し、「水上でのボート体験などイベントが効果的」と話した。

コロナ禍の影響もあり、観光をテーマに扱った高校は多かった。大谷高校(京都市)は、観光客の増加により京都市の交通機関などで混雑が生じているという課題を取り上げた。考案したのは、現在地から観光名所への徒歩での経路案内を表示する案内板を市内に設置する「京とこまっぷ」。スポット別の混雑情報もリアルタイムで確認できるアイデアだ。徒歩での移動を推奨することで消費エネルギーの削減にもつながり、さらに歩道の床発電技術を活用することで、電気の自給自足の実現も目指すという。

奈良女子大付属中等教育学校(奈良市)は、観光ガイドや旅行雑誌など、一方的な情報だけでなく、地元住民や観光客自身が地域の魅力を地図にマッピングしていく「自己成長型観光マップ」を提案。また立命館高校(京都府長岡京市)も、観光客・地元住民の双方に利益があるサステナブルツーリングを提案した。地元の食材を使った飲食店や工芸品の販売店などを集めた祭り「サスフェス」を開催することで、地元経済の活性化と旅行満足度向上を同時に果たせるという。

そのほか、白鵬女子高校(横浜市)は、豚肉などを食べないイスラム教徒向けの食事に対応しているレストランを見つけることが難しいという問題を取り上げた。実際に横浜市内のハラール(イスラム法で認められている食材)対応のレストランや礼拝室、英語対応が可能な病院、そして観光スポットを記した地図を作成し、会場に配布。利用者に安心感を与えられる一方、観光業側にも、新たな顧客の確保につなげられると意義を強調した。

高校生ならではの目線で、SNSを活用した取り組みの提案もあった。大阪学芸中等教育学校(大阪市)は、大阪府の森林保全ボランティア活動の知名度が低く、人手不足に陥っていることに着目。高校生が実際に森林保全に取り組みながら、SNS発信を取り入れて活動を広めていくことを提案した。さらにクラウドファンディングを活用し、間伐材を利用した商品を販売することで企業とも連携していく構想だといい、「SDGsを今一度、多くの人に考えてもらい、身近なものだと実感してほしい」と語った。

三田国際学園高校(東京都世田谷区)は「安全な水とトイレを世界中に」届ける取り組みとして、参加校で唯一、英語でアイデアを発表。商品の生産・消費・廃棄の過程で使用される水の量を数字で表す「ウォーターフットプリント」の発信をSNS上で行うことが、水の削減による電力節約になるだけでなく、企業のブランディングの一つとして顧客の増加にもつながるとして、企業側にメリットがあることを強調した。

高校生にも身近なペットボトルごみについてのアイデアとしては、横浜清風高校(横浜市)が「マイエコバッグに次ぐ、新たな常識を作る」として、軽くて丈夫かつデザイン性も高いチタン製のマイボトルを商品化することで、ごみを減らすアイデアを発表。文化学園大学杉並高校(東京都杉並区)も、ごみ削減のためシェアボトルシステムを導入したサーバー式の自動販売機を提案。同校の生徒を対象にアンケート調査を実施したところ、SDGs達成に向けて「どのような取り組みをしていいのか分からない」という回答が4割近くを占めたといい、「生活に身近な自動販売機を変えることでSDGsへの貢献の手軽さを示したい」と決意を語った。

一方、雲雀丘学園高校(兵庫県宝塚市)も、サーバー式の自動販売機の普及に向けたアイデアを発表した。ボトル式に比べて提供に時間がかかることを利用して、エアロバイクやランニングマシンを用いて利用者に発電させ、その量に応じて割引特典を付けるなど、ゲーム性を持たせることを提案した。

すべての発表が終わると、企業側からの講評へと移った。石井造園(横浜市)の石井直樹氏は、「これからの高校生活、そしてその後の生活も、SDGsを貫いてほしい。この2日間、鋭い視点を持って、自分事としてSDGsに向き合ってくれて本当に良かった」と総括。イベント全体を取りまとめてきた日本旅行のSDGs推進チームマネージャーの椎葉隆介氏も「選考を経て集まった高校生で、発表のレベルの高さも、質問力の高さも感じる。若手社員たちにも刺激になったと思う」と振り返った。

文化学園大学杉並高校の岡本永真さん(1年)は、2日間の国際会議で、教育関係のセッションを中心に参加。イベント終了後には、「学校には、SDGsへの意欲が薄い人もいる。それでも、一人ひとりが、SDGsを自分事としてとらえるマインドを上げていくことが、社会に結びついていくのだとわかった」と収穫を得たようだった。

サステナブル・ブランド国際会議2021横浜
SB Student Ambassador参加校一覧

玉川学園高等部
三田国際学園高等学校
横浜清風高等学校
文化学園大学杉並高等学校  
立命館高等学校 
滝川第二高等学校
白鵬女子高等学校 
聖光学院高等学校
大阪学芸中等教育学校(オンライン参加)
大谷高等学校(オンライン参加)
奈良女子大附属中等教育学校(オンライン参加)
雲雀丘学園高等学校(オンライン参加)
横田伸治(よこた・しんじ)

東京都練馬区出身。東京大学文学部卒業後、毎日新聞社記者、認定NPO法人カタリバを経てフリーライター。若者の居場所づくり・社会参画、まちづくりの領域でも活動中。