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ブランドが社会とつながる、持続可能な未来へ  「サステナブル・ブランド ジャパン」 提携メディア:SB.com(Sustainable Life Media, Inc.)

「企業や世代の枠組み超えて共創を」Z世代力強く――山口由人・Sustainable Game代表

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「次の世代のために、私たちZ世代は皆さんと一緒に何をするべきでしょうか」。サステナブル・ブランド国際会議2021横浜の2日目は、1人の若者の力強い呼び掛けで幕を開けた。登壇者は、まさにZ世代の真ん中、2004年生まれの聖学院高校1年生で、一般社団法人Sustainable Gameの代表理事を務める山口由人さんだ。持続可能な社会の実現を本気で目指す山口さんは、悩み、時には立ち止まりながらも、中学3年生の時、同世代の中高生らとともに同法人を立ち上げ、企業との協業を通じて、「今の時代だからこそできる企業(大人)と中高生の新たな共創関係」を構築するべく、動いている。法人の理念は「愛を持って社会へ突っ込め」。そこには、他者を思いやるエンパシーを大切に、「多くの人と共に、見えない当事者の状況を理解しながら行動し続ける人間になる」という強い決意が込められている。私たち大人は、彼らZ世代の思いに今どう応え、どう手を携えて、さまざまな社会課題に向き合っていけば良いのだろうか――。(廣末智子)

Z世代とのつながりは企業に必要

山口さんは、冒頭で投げ掛けた問いに対するヒントとして、「手段はすべて揃っているが、目的が混乱しているのが現代の特徴のようだ」とするアインシュタインの言葉を、自分自身とても大切にしていると紹介。その言葉を現代に解釈すると、「さまざまなリソースが溢れかえっているのにもかかわらず、それが世界中に行き渡っていなかったり、活用仕切れていない」ということであり、その理由の一つが、「さまざまな立場の人の声を取り入れた“目的と戦略の共創”がうまくできていないことにあるのではないかと考えた」と説明した。

そうした思考回路を基に、「企業やパブリックセクターの方々が、Z世代とともに包括的で倫理的な意思決定を行うための共創関係の構築」を目指すSustainable Gameは生まれた。「政府がレジ袋有料化などの対策を始める以前からZ世代は、NGOなどが掲げるESG課題に敏感に反応し、その情報を分かりやすく発信・拡散している。刻一刻と深刻化する社会問題や環境問題をより早く解決するために、そうしたZ世代とつながることは、企業にとって必要なつながりなのではないでしょうか」というのが山口さんの主張だ。

しかしながら現実は山口さんの考える姿とは乖離があった。「一部のZ世代は抗議アクションの末に、自分たちだけでなんとかしようと思ってしまったり。それに対して、一部の大人も『君たちの声はマイノリティでしょ』と対話を分断してしまったり」。見えてきたのは「企業とZ世代の二項対立」だった。だがその現実を山口さんは決してネガティブには捉えなかった。「私が学んだのは、それぞれの違いをお互いがまだ理解し切れていないだけで、そこには最高の賜物が秘められているということでした」。つまり、現状では、中高生=Z世代と大人が共に話す場所がないという環境的な問題が存在するだけであり、「共創できる場があれば、そしてお互いの強みを理解することができれば、包括的で倫理的な意思決定ができるはず!」。そう確信したという。

自分の過去や知識を用いて他者の状況の理解を
リアルな対話によってエンパシー能力は身に付く

生後まもなくから11年間、ドイツで過ごした山口さん。小学5年生の時、シリアからの難民に助けを求められたのに対し、何もできなかった体験を通じ、自己嫌悪と無力感に苛まれた。その感情は、日本に帰国した今も消えることはない。ただそれが原動力にもなって、現在、日本の入国管理局収容所の人権問題の映画を製作したり、自身のアート作品を通して収容されている難民を支援する活動も行っている。「東京では難民を見かけたとしても、その容姿からそうだと分かる人は少ないでしょう。でも彼らの内側には悲しい過去とさまざまな課題があります。理想と現実との乖離を社会問題と定義するならば、理想が多様化する今、社会問題も多様化し、マイノリティ化している。そんな時代だからこそ、自分の過去や知識を用いて他者の状況を理解しようとするエンパシーの能力を引き出すことが大事だと思うんです」。

Sustainable Gameは、社会を「誰一人取りこぼさない世界を作るゲーム」と捉え、自らを「共創でビジネスとみんなの未来をサステナブルにする次世代チーム」と位置付ける。具体的には、パタゴニア日本支社と店舗のオンラインツアーを導入したプログラムを共同開発したり、サステナブルインフラを掲げる不動産業のいちごと2050年の事業のあり方について話し合うプログラムを設けたり、またクックパッドとは料理を実際に作る体験を通して課題を見つけたり、といった活動を行っている。こうした企業との協業を通じて感じたのは、「データから予測するだけでなく、リアルな声を聞き、お互いを再起させるような対話をすることで、エンパシーの能力が身に付く」ということ。ビジネスで得た資金については、イベントの際の弁当箱をコンポストの容器にしたり、マイノリティの課題に取り組む中高生のサポートに充てるなど、「私たちの次の世代に残せるものを生み出していく」ために使っているという。

気付いた課題や違和感は気付いた本人が発信と提言を

2030年に26歳になるという山口さん

ここまで話したところで、「今の社会には、大人とZ世代だけでなく、男性と女性や、健常者と障がい者、地方と都会など、さまざまな二項対立が構造的に存在している。その中には境界線が消え始めているものもあるが、サステナブルな世界を目指すには、すべての二項対立をなくす必要があると思います」と強く言い切った山口さん。だが、ここまで来るのには悩み、立ち止まった時期もあった、と明かした。「実際に子どもの7人に1人が相対的貧困にあるといわれる日本の社会で、この活動ができる私は恵まれている層に入るのだと思う。実際、オンラインで活動するにもデバイスがなかったり、社会に対して違和感があってもバイトの時間に追われたり、親に活動を理解してもらえない仲間もいる中で、私だけがなぜこの取り組みに時間を使って良いのか、ひたすら悩んできた」というのだ。

そうした時期を乗り越えた上で今がある。自分の心の成長を振り返り、SDGsのゴールである2030年が10年後に迫っていることに関して、「10年なんて、あっという間だと思うかもしれない。でも2年前まで不安だらけで行動さえできなかった私が今、この国際会議でスピーチを行っている。私たち人間の成長には無限のポテンシャルがあるのではないでしょうか」と胸を張った。

これに続けて、「最後に伝えたいことがあります」と切り出した山口さんは、あらためて、中高生でありながらソーシャルグッドの起業をするという体験をしてきたこの2年間の活動を、「中高生である私でしか気が付けなかった課題があったのではないかと思います」と強調。日本語で「高貴ある義務」と訳されるフランス語、『ノブレス・オブリージュ』という言葉を例に出しながら、「気がついた課題や違和感は、気が付いた本人がその問題の発信と提言の具体化をしなければ、より良い社会を生み出す解決策にはつながらない。でもその行動を1人で行うのはとても難しい。だからこそ、自分だから気が付ける、自分の所属する会社だからこそ気が付ける課題の解決に向けて、企業や世代の枠組みを超えて共創し、新たな挑戦を始めるきっかけを今日、皆さんと一緒に作りたいと思っています」と締め括った。

廣末智子(ひろすえ・ともこ)

地方紙の記者として21年間、地域の生活に根差した取材活動を行う。2011年に退職し、フリーに。サステナビリティを通して、さまざまな現場の当事者の思いを発信中。