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キリン、再生プラ100%のペットボトルとラベルレスの商品拡大で年間1400トンのプラ削減へ

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キリンビバレッジは22日、再生ペット樹脂を100%使用した「R100ペットボトル」と商品名のラベルを貼らない「ラベルレス」の商品拡大で、年間約1400トンのプラスチック樹脂使用量を削減すると発表した。まずは旗艦ブランド「生茶」から容器包装の資源循環に着手する方針で、「R100ペットボトル」を採用した「生茶」シリーズを全国のコンビニエンスストアで3月中旬から順次発売。一方の「ラベルレス」の商品は23日に量販店などで新発売に踏み切る。今回の商品投入で、二酸化炭素(CO2)排出量は年間約1300トンの削減が可能になるという。(廣末智子)

ペットボトルからペットボトルへ2027年50%、2050年100%目指す

同社は「キリングループ環境ビジョン2050」の中で「リサイクル材やバイオマスなどを活用した持続可能な容器包装の開発と、容器包装の持続可能な資源循環システムの構築」を掲げており、2027年にはペットボトルのリサイクル樹脂比率を50%に、2050年には100%にする「キリングループプラスチックポリシー」を設定している。容器包装の研究開発には「キリンホールディングス パッケージイノベーション研究所」が主体となって取り組み、2003年から2019年までの間に2リットルのペットボトルを34.7グラム軽量化させることに成功。また昨年12月には「三菱ケミカル」との共同プロジェクトにより、落としにくい汚れや混入物のあるペットボトルやペットボトル以外のペット製品からもペットボトルへの再生が可能になる「ケミカルリサイクル」の研究にも着手している。

「R100ペットボトル」はコンビニ、「ラベルレス」は量販店で

「生茶」に関しては、2019年6月に、使用済みペットボトルを選別、粉砕、洗浄した上で高温下で処理する「メカニカルリサイクル」の方式により、ペットボトルからペットボトルへのリサイクルを実現した容器包装「R100ペットボトル」を採用した「キリン生茶デカフェ(カフェインゼロ)」を発売。今回、これに加え、同じ「R100ペットボトル」を採用した「キリン生茶」(600ml)と、「キリン生茶ほうじ煎茶」(同)を全国のコンビニエンスストアで順次発売することになった。また3月23日には全国の量販店で、商品名のラベルをボトルに貼らない「ラベルレス」の商品をパックで販売する「キリン生茶ラベルレス6本パック」と「キリン生茶ほうじ煎茶ラベルレス6本パック」を、さらにECサイト限定で、「キリン生茶ラベルレス」と「キリン生茶ほうじ煎茶ラベルレス」の販売を開始する。また今後、全国の自動販売機で、ラベルの面積を従来より小さくすることでプラスチック使用量を削減した「ラベル短尺化」版の「キリン生茶(555ml)」も販売する。

同社がまずは生茶のペットボトルからペットボトルへのリサイクルを加速させ、ペットボトルの資源循環を急ぐ背景には、日本のペットボトルリサイクル率は85.8%と世界最高水準にあるにもかかわらず、その多くは食品トレーや繊維にリサイクルされたり、海外に輸出されるなど、ペットボトルからペットボトルへのリサイクル率は12.5%と低率にとどまっている(2019年の「PETボトルリサイクル推進協議会」調べ)のに対し、同社の独自調査によると、その実態を知っている消費者は20%未満で「リサイクルの実態とお客様の意識に存在する乖離」(山田雄一・キリンビバレッジ執行役員マーケティング部長)があるという。さらに、ペットボトルの回収に取り組んでいる人は95%、プラスチック問題に取り組むべきだと考える人は90%に上り、消費者のこの問題に対する意識の高さを裏付けている。

同社によると、実際、ペットボトルがペットボトルへと再生されることにより、石油由来樹脂の使用率は90%、製造時のCO2排出量も50〜60%削減される。また2021年の生茶の環境取り組みだけで年間約1400トンのプラスチック樹脂の使用量削減と、約1300トンのCO2排出量削減につながるという。プラスチックやリサイクル問題に詳しい神戸大学大学院経済学研究科の石川雅紀教授は、「日本では、回収されたペットボトルのほとんどが別のプラスチック製品にリサイクルされている。このリサイクル構造を正しく理解している人は少なく、今後の発展には生活者の理解が重要になってくる。業界全体を見渡すと、大手飲料企業が再生PET樹脂を100%利用した『リサイクルペットボトル』を採用し、『ボトルto ボトル』に積極的に取り組む動きが近年加速しており、他のペット製品においても『ボトルto ボトル』のような循環型リサイクル構造が各業界に波及する可能性がある」と話している。

CSV基軸に、パーパスブランディングへ ポストコロナの事業方針

22日に行われた会見では、同社の山田雄一・執行役員マーケティング部長が、2021年の同社の事業方針について、「CSVを基軸としたポストコロナに向けた再成長」をスローガンに、「健康と環境をテーマに人と社会に寄り添う事業活動を実現する」と定めたことを説明。これに伴いマーケティングについても、従来のパーパス(存在意義)を起点としたブランド戦略に、健康、環境、地域社会、コミュニティを柱とするCSV戦略を効果的に融合させた「パーパスブランディング」のステージへと移行させる考えであることを表明した。ここでいうパーパスブランディングとは、ブランドのパーパスに基づく一貫したマーケティングを行う上で、社会と顧客の「共感」を得てビジネスを成長させるマーケティング手法をいう。同社の旗艦ブランドである「生茶」についても、同社が「摂り過ぎない健康」と位置付ける無糖系の商品の販売をけん引する役目を果たすとともに、ペットボトルを資源とした循環型社会の実現に向け、環境面での取り組みをさらに加速させていくことで、山田役員は「お茶としての美味しさと環境への優しさを備えたブランドとして、これからの時代のお客様の共感の獲得を目指す。そのためのマーケティングを積極的に展開していく」と述べた。

廣末智子(ひろすえ・ともこ)

地方紙の記者として21年間、地域の生活に根差した取材活動を行う。2011年に退職し、フリーに。サステナビリティを通して、さまざまな現場の当事者の思いを発信中。