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ブランドが社会とつながる、持続可能な未来へ  「サステナブル・ブランド ジャパン」 提携メディア:SB.com(Sustainable Life Media, Inc.)

SDGs活用し新たな取り組み生まれるコロナ禍のまちづくりとは――第3回未来まちづくりフォーラム(1)

SDGsの目標11番に掲げられる「住み続けられるまちづくりを」を芯に据えて社会のあり方を考え、産・官・学・金(金融)・労(労働者)・言(メディア)の連携を促すプラットフォーム「第3回未来まちづくりフォーラム」が2月24日、開催された。今回のテーマは「協創で日本創生モデルをつくろう―SDGsでグレート・リセット―」。世界のあらゆる場面に大きな影響を与えたコロナ禍の中、まちづくりや地方創生の新たな取り組みが生まれている。基調講演では官公庁の地方創生推進戦略や専門家による最新の分析、未来まちづくりの最前線が語られた。(サステナブル・ブランド ジャパン編集局)

オープニングを飾ったのは内閣府 特命担当大臣(地方創生)の坂本哲志氏。新型コロナウイルス感染症に対するワクチン接種の取り組みを推進することにより感染拡大を1日も早く収束させることに全力を尽くす姿勢を示した。「感染症対策と活力ある地域社会の両立を図り地方創生を推進するために、経済・社会・環境の三側面を不可分として統合的に取り組むSDGsの理念がますます重要になる」と話した。

同じく内閣府の地方創生推進事務局 局長・眞鍋 純氏は「地方自治体は人口減少や少子高齢化の課題への取り組みに加え、新たな生活様式の構築も求められている」としてSDGsを切り口とした取り組みを支援する意向を改めて示し、毎年策定するSDGsアクションプランやSDGsアワードの開催といった日本政府全体の取り組み内容を紹介した。

都市圏と地方のパートナーシップで自律分散型社会実現を

基調講演「SDGs達成に向けた長野県の取組」
阿部守一氏 長野県知事 (SDGs未来都市)

SDGs未来都市・長野県が持つ計画ではすべての分野でSDGsとの関連付けを行っているという。長野県の「SDGs未来都市」総合計画の基本的な概念には「学びと自治」がある、と紹介したのは同県知事の阿部守一氏。「持続可能な開発目標に取り組む上で重要なキーワードは学びと自治、そして自律・分散型社会の形成であると確信している」と話した。

長野県は水力発電、太陽光発電が盛んだ。首都圏への電力の供給源になっていることを活用し、地域の自律に繋げる施策を推進。こうした取り組みは気候変動に対応し持続可能な社会を実現すると同時に、自立分散型社会の形成につながっている、と阿部氏は説明し「東日本大震災の際、いかに自分たちの暮らしが他の地域に依存しているか、大都市圏に暮らす人たちは痛感したのでは。都会はお金や人が集まっていて自律していると誤解をされがちだが、実は地方の方が自律度は高いと考えている」と見解を話した。

また、コロナ禍で人々の価値観が変わる中、昨年緊急事態宣言が発令されて以降、東京と長野の間では長野県側への人口流入が続いている。「明らかに人の動きが地方へ分散している。(こうした動向を後押しするため)県では『信州リゾートテレワーク』をかなり積極的に推進している」とアピール。「都会に住む方に、いきなり移住をしていただくことは難しいかもしれないが、道行共有、テレワークなどの地域の取り組みに積極的に関わっていただきたい。大都市と地方とのパートナーシップで自律分散型社会をつくっていきたいと考えている」と展望を語った。

未来まちづくりの3つのポイント「協・創・力」

キーノート・トーク「SDGsでグレート・リセット―協創力で未来まちづくり―」
笹谷秀光氏 未来まちづくりフォーラム実行委員長

フォーラムの仕掛け人で実行委員長でもある笹谷氏は、開催の狙いと目的の重点は「協・創・力」の3点にあると話した。

まず協働のプラットフォームをどうつくるか。その点において有効なのが共通言語となるSDGsだ。そしてSDGsを構造として理解し、いかに自分事化するか。「SDGsのうち11番を軸に自分事化する切り口が未来まちづくりフォーラムのテーマ」だと理解を促した。

次のポイントは「共通価値を創造する」ことだ。「ここは企業の出番だ」と笹谷氏は解説した。企業が、SDGsが生み出すチャンスと、社会にどのようなリスクがあるかを洗い出すことによって、事業そのものをSDGs化することが必要だ。「(従来の)CSVの考え方はSDGsでバージョンアップできる」と笹谷氏は言う。「CSVを日本語で言えば三方よし。しかし、それに伴う陰徳善事は世界に通用しない。発信型で『三方よしのSDGs化』をすることが日本でもわかりやすいソリューションではないか」と見方を示した。最後は「力」だ。これを「学びと発信力」と笹谷氏は位置付ける。そのためにSDGs未来都市といった行政の制度が役に立つという。

「SDGsとパリ協定がこれからのわれわれの行く先を導くものだと考えている。古くから事例が多く、日本ほどSDGsに向いている国はない」(笹谷氏)

コロナ対策とSDGsに親和性

招聘講演「地方創生SDGsの新たな展開―ニューノーマルに向けた地域活性化の取組―」
村上 周三 氏 一般財団法人 建築環境・省エネルギー機構 理事長

自治体SDGs推進評価・調査検討会や地方創生SDGs金融調査・研究会など政策を決定するための議論を行う委員会で座長を務める村上氏は、地方創生SDGsと新型コロナウイルス感染症対策に関する政策提案内容を紹介した。

変化を目指すという意味でコロナ対策とSDGsに親和性がある、と強調する。SDGsをどう導入するか、その詳細は、同氏が理事長を務める一般財団法人 建築環境・省エネルギー機構が公開しているガイドライン「私たちのまちにとってのSDGs」で述べられている。

村上氏はこのほか、SDGs未来都市の詳細、選定基準の解説や、昨年10月に優良事例が選定された地方創生官民連携プラットフォームについて報告を行った。

日本の強みは「非対称性」と「信頼」

基調講演「世界の潮流と変化への対応方法」
木村浩一郎氏 PwC Japanグループ 代表

「『三方よし』はステークホルダー資本主義の核心だ。世界が見失いつつある信頼を再興するための支柱となるべき、日本が誇るべき強みと言える」――。木村氏はグローバルの潮流を語る中でそう力強く発信した。

世界155カ国に拠点を持つPwCは総勢約9000名に昇る各分野の専門家が有機的に協働する体制を整え、ひとつの課題に対して多角的なソリューションを提供している。そのPurposeは「社会における信頼を構築し、重要な課題を解決する」だ。

では重要な課題とは何か。PwCは、今日の世界が直面する5つの喫緊な課題とその影響を「Asymmetry(非対称性)」「Disruption(破壊的な変化)」「Age(人口動態)」「Polarisation(分断)」「Trust(信頼)」に整理していると木村氏は解説した。このADAPTの中で日本は「非対称性」と「信頼」において世界の中で特に評価が高いという。これら5つの課題は新型コロナウイルス感染症のパンデミックにより加速し、社会の脆弱性が明らかになると同時に目指すべき社会の姿も明確になった。

「これらの課題に対峙する中で地方自治体は非常に重要な役割を果たすと考えている」と見解を示し、今求められるのは4つのR 、つまりrethink(再考)、repair(修復)、reconfigure(再設定)、report(報告)だとして「これがまさにグレート・リセットを別の角度から見たものではないか」と分析した。

さらに木村氏は、今後の混迷の時代において、リーダーシップに求められる「6つの矛盾」を提示し「日本各地には老若男女問わず、このようなリーダーがたくさんいる。今こそ出番だ」と呼びかけた。

共感の環を広げる連携と発信

パネルディスカッション
「SDGsによる未来まちづくりの最前線とポストコロナ」

猪鼻信雄氏 静岡市 企画局 企画局次長(SDGs未来都市)
笠原慶久氏 株式会社九州フィナンシャルグループ 代表取締役社長 / 株式会社肥後銀行 代表取締役頭取
泉谷由梨子氏 ザ・ハフィントン・ポスト・ジャパン株式会社 副編集長
木村浩一郎氏 PwC Japanグループ 代表
ファシリテーター:笹谷 秀光 未来まちづくりフォーラム実行委員長

まず事例を紹介したのは猪鼻氏。静岡市では市長を本部長とする「静岡市創生・SDGs推進本部」を設置して地方創生SDGsに関する協議を行い、平成30年に策定した静岡市SDGs実施指針に基づき、全庁でSDGsを推進している。このような体制の中、民間との連携のために一昨年10月、市内の企業・団体からSDGs宣言書の募集を開始。今年2月1日時点で231件の企業・団体から宣言があり、支店などの事業所も含めればその数は1106件にも上る。宣言をきっかけにSDGsを意識した商品開発などに取り組み始めた企業や、宣言事業所同士の連携が始まった例も見られた。この他にも各種イベント誘致、開催など普及啓発活動に力を入れている。

九州エリアで多様なステークホルダーとの連携事例を発表したのは笠原氏。昨年1月、環境省、大分銀行、肥後銀行、鹿児島銀行、宮崎銀行の5者はSDGsの普及啓発、ESG融資の推進を協働するため中・南九州地域循環共生圏に関する連携協定を締結した。「新型コロナウイルス感染症などに迅速に対応できており、プラットフォームとして連携が機能していると感じている」と連携の有効性を語った。今年4月には、SDGs未来都市である熊本県、熊本市、小国町と連携し熊本県SDGs登録制度を開設する。自治体と肥後銀行の連携を発端として、地元企業に幅広くSDGsに取り組んでもらうことを狙い、肥後銀行では登録企業専用の金融商品も準備しているという。

パネルディスカッションでは「多様なステークホルダーを巻き込んでいく」「共感の環を広げる」ということがキーワードとなった。泉谷氏は「取材の中で、東京ガールズコレクションが静岡で開催されて以降、SDGsを強化している様子を目の当たりにした。行政発の理念を取り込み若者に発信していくという、コラボレーションがとてもいいものを生んでいる好事例だ」と話し、笹谷氏は「発信あるところに仲間あり」と総括した。

木村氏は「イノベーションは多様性をいかに引き寄せることができるかが肝。各社の既存の製品・サービスをプッシュアウトするだけでは十分な成長につながらない。多様な受け手、消費者のニーズにいかに応えるか。そのために企業にも多様性が必要で、多様なものを包摂(インクルージョン)していかにつなぎ合わせるかが求められている」と連携から生まれる多様性と同時に社内のダイバーシティの重要性を語った。

また消費者の自分事化を促すため、ハフィントンポストではSDGsを切り口にわかりやすいテーマ(例えば2月はチョコレート、など)を設定して動画の配信を行っていることを泉谷氏が紹介し、「発信」に話題が移ると、笠原氏が九州フィナンシャルグループ社長として個人のインスタグラム発信を開始していることが明らかに。泉谷氏は「頭取がインスタをしているとはすごい。メディアの観点でトップメッセージについて考えると、共感される発信は企業というより個人による発信になっている。究極的に『バズるか』は発信側に情熱があるかどうかだ。読者の目も肥えている。美しいだけのメッセージでは人の心を動かせない怖い時代。逆に、本気で発信する人にはチャンスがきている」と話した。

PwCの木村氏はフォーラムテーマの「協創力」に絡め「信頼という力につながる発信が求められている。世界的に見たときに、政府や企業に対する信頼は明確に劣化しているのが現実。だからこそ分断が言われる。静岡市の事例を見ても日本は(信頼・発信において)強いものを持っている。情熱を持って本気で取り組んでいることが信頼を支えていく。それが日本の力になっていく」と語った。