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サステナビリティの先、環境を再生する「リジェネレーション」は健全な土壌の回復がカギ

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右上から時計回りに、牧氏、近藤氏、北村氏、グプテ氏

現在の環境危機を乗り越えるには、環境負荷をゼロにするだけでなく、その先の環境を再生することまで考える「リジェネレーション」が大事だという企業が増えている。サステナブル・ブランド国際会議2021横浜のテーマともなっている「リジェネレーション」について先進的な取り組みをするサントリーホールディングス、MHDモエ ヘネシーディアジオ(東京・千代田)、米パタゴニア、バリラジャパン(東京・千代田)の4社がセッションに登壇し、具体的な活動や方向性を発表した。そこからは生物や植物をはぐくみ、温室効果ガスを吸収する健全な土壌が環境の再生に大きな働きを及ぼすことが見えてきた。 (環境ライター 箕輪弥生)

ファシリテーター:
足立 直樹・サステナブル・ブランド国際会議 サステナビリティ・プロデューサー
パネリスト:
北村 暢康・サントリーホールディングス コーポレートサステナビリティ推進本部 サステナビリティ推進部長
牧 陽子・MHD モエ ヘネシー ディアジオ パブリックアフェアーズ&CSRマネージャー
近藤 勝宏・パタゴニア・インターナショナル・インク日本支社 パタゴニア プロビジョンズ マネージャー
ニックヒル グプテ・バリラジャパン 代表取締役 駐日代表

環境負荷をゼロにするだけでは気候危機は止まらない

「高品質な飲料を作るためには上質な水が欠かせない、そしてその水を育む森が商品を作り、企業の生命線を握る」。最初に登壇したサントリーホールディングスの北村暢康サステナビリティ推進部長は、同社のテーマとなる「水と生きる」の意味を説明した。

同社は15都府県21カ所で1万2000haの「天然水の森」を整備し、製造で使う水の2倍以上の水を涵養している。加えて森林整備を行うだけでなく、専門家の科学的な知見を取り入れ、地下水がどこを通って、どれくらいの水が涵養されるのかなどの土壌と水の循環の研究を行っている。

北村部長は「土が豊かだと生態系が豊かになり、水がきれいに浄化される。最終的には森林土壌の保全、再生がカギとなる」と説明する。

パタゴニアも早くから「リジェネレーション」に着目し、活動している企業だ。同社は「直面している環境危機を考えると、ビジネスが生み出す環境負荷を最小限にするだけでは解決できない。ビジネスをやればやるほどポジティブになっていく方法が必要だ」と考えた。

その解決策のひとつが同社の食品事業「パタゴニア プロビジョンズ」である。というのも食事は誰もが毎日行うことであり、環境影響も大きいからだ。

「食べ物の95%が土壌に関係し、土壌のCO2吸収能力は大気の2倍、植生の3倍とも言われていることから、われわれは土壌に最も注目している」と近藤勝宏マネージャーは話す。

つまり、農薬や化学肥料を大量に使って行われる大規模な慣行農業や畜産が気候危機の問題を起こす一因となっているのに対し、環境を回復、再生する方法で食べ物を作り消費すると、食自体が問題ではなく解決策のひとつになるのである。

同社は土壌の健康や動物福祉、労働者の公平性などの視点も盛り込んだ「リジェネラティブ・オーガニック認証」の設定に関わり、実際にいくつかの製品で認証を得ている。

自然の力を活用して土壌を再生する

欧州で長年シャンパンやスピリッツ、ワインを製造販売しているモエ ヘネシーのサステナビリティに関するスローガンは「Living Soils, Living Together(生きた土壌、共に生きる)」だ。製品の原料はぶどうであり、土壌の健康は製品の品質に直結する。

同社は土壌の健康を維持するために生き物や自然の力を多用する。たとえば、冬の時期に地元の農家と協力して羊を放し飼いし、除草剤を使う代わりに羊に草を食べてもらう。

ずっとブドウを作り続けると土壌がやせてしまうため、土壌を休ませ、その休耕地に花を植えたり、地表の温度調節や水分保持、生物多様性のために土壌保護作物を植える「カバークロップ」を行い、蜂などの受粉者を育て、ぶどう畑の害虫を捕食する昆虫を呼び寄せる。

同社の牧陽子パブリックアフェアーズ&CSRマネージャーはまた、「除草剤不使用の取り組みでもシャンパーニュ地域で目標より早く2020年までにゼロを達成した」と報告した。

モエ ヘネシーと同様、欧州で長年パスタやパンなどを製造・販売してきたバリラも土壌を痛める農薬や除草剤の使用には敏感だ。

「わが子に食べさせたいと思える食品を人々に提供せよ」という社の創始者の哲学を守り、環境や人の健康に影響を与える農薬や除草剤を使った素材は調達しない。

同社は製品そのものだけでなくパッケージの改善にも力を注ぎ、プラスチックゴミの削減のため、パスタの包装材をプラスチックから紙パッケージへと変更した。PEFCやFSC認証といった適切な管理がなされている森林から作った紙を使っている。

同社のニックヒル グプテ代表は、「パッケージ変更は日本では大きなチャレンジだった」と話し、「何を選ぶかは地球へのインパクトを左右する。だから消費者への啓もう活動も重要だ」と強調した。

伝統的な農法や地域との連携が重要

足立プロデューサーはそれぞれの企業の取り組みを聞き、「リジェネレーションはある意味、新しいというより、温故知新的な側面があるように思える」と指摘した。

これに対し、モエ ヘネシーの牧氏は「過去300年近く各メゾンが守ってきたことを地元のブドウ農家の方たちと協力しながら見直し、さらに環境を再生していきたい」と話した。

サントリーの北村部長は「森林整備は地域の植生、気候条件に合わせた仕事をしないといけない。そのため地域で森を育てる人の育成もしている」と地域との連携の重要性を説いた。

箕輪 弥生 (みのわ・やよい)

環境ライター・ジャーナリスト、NPO法人「そらべあ基金」理事。
東京の下町生まれ、立教大学卒。広告代理店を経てマーケティングプランナーとして独立。その後、持続可能なビジネスや社会の仕組み、生態系への関心がつのり環境分野へシフト。自然エネルギーや循環型ライフスタイルなどを中心に、幅広く環境関連の記事や書籍の執筆、編集を行う。著書に「エネルギーシフトに向けて 節電・省エネの知恵123」「環境生活のススメ」(飛鳥新社)「LOHASで行こう!」(ソニーマガジンズ)ほか。自身も雨水や太陽熱、自然素材を使ったエコハウスに住む。

http://gogreen.hippy.jp/