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ブランドが社会とつながる、持続可能な未来へ  「サステナブル・ブランド ジャパン」 提携メディア:SB.com(Sustainable Life Media, Inc.)

ストーリーで語るサステナビリティ:つくりたい未来をどう実現するか

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右上から時計回りに能勢氏、足立氏、鈴木氏、高島氏

近年、ビジネスシーンで重要視されているストーリーテリング。その手法を用いて、社内外のステークホルダーにサステナビリティに関するメッセージを効果的に伝えることに取り組んだMS&ADインシュアランスグループホールディングス、セールスフォース・ドットコム、一般社団法人NEW HEROの3者が登壇しストーリーの重要性について話し合った。(岩崎 唱)

ファシリテーター:
足立 直樹 サステナブル・ブランド国際会議 サステナビリティ・プロデューサー
パネリスト:
能勢 恵美 MS&ADインシュアランス グループ ホールディングス 広報・IR部 課長
鈴木 祥子 セールスフォース・ドットコム チーフマーケティングオフィサー
高島 太士 NEW HERO 代表理事

「サステナビリティの意義は、数字などのファクトだけではなかなか伝わらない。自分たちがなぜその課題に取り組むのか、その先に何があるのか、そうしたことを伝えるためにはストーリーが有効」とファシリテーターの足立氏は述べ、3人のパネリストからストーリーを生かしたコミュニケーションについて聞いた。

課題と解決の両方のストーリーで、保険の新たな価値を伝える

MS&ADインシュアランスグループホールディングスは、2010年にあいおい損害保険、ニッセイ同和損害保険、三井住友海上グループホールディングスの3社の経営統合により誕生し、それぞれの会社の特徴を生かしながら世界トップ水準の保険金融グループを目指している。

広報・IR部の能勢氏は「設立から2013年までにミッション、ビジョン、バリューの策定を行い、続く2017年までに価値創造ストーリーを策定、2018年からCSVに基づく経営を展開しています。そして2030年に目指す社会像として『レジリエントでサステナブルな社会』を設定し、7つのCSV取り組み(気候変動の緩和と適応、元気で長生き、誰一人取り残さないなど)を掲げています」と経緯を説明。

「社会の発展にはつねに新しいリスクが伴います。そのリスクと向き合い、その先にある明るい未来へ歩みを進めるには保険の力が必要だというメッセージを『さあ、いい方の未来へ』というキャッチフレーズで、課題と解決という2つの方向で7つのCSVのテーマに沿って少し先の未来を表現するストーリーでコミュニケーションを展開しました。グループ全体で進むべき方向を合わせ、ステークホルダーに理解・共感していただくことで持続的な成長と企業価値の向上につながると思います」と解説した。

一人ひとりの行動が次の世界のあり方を決めていく

クラウドベースの業務ツールを世界15万社以上に提供しているセールスフォース・ドットコムのチーフマーケティングオフィサー 鈴木氏は「1999年の創業時から、信頼、カスタマーサクセス、イノベーション、平等の4つのコアバリューの下に事業を推進してきました。よい商品をつくりその商品を世に知らしめることだけではなく、社会にとって意味のある会社をつくりたいと考えています」と話し、『ビジネスは社会を変えるための最良のプラットフォームである』という創業者の言葉を紹介した。

また、1-1-1モデルと呼ばれる社内活動があり、就業時間の1%をボランティア活動に、株式の1%を寄付や資金援助に、製品の1%を非営利組織に無償提供している。

「弊社にはコーポレートブランドという考え方がなく、プラネット、ピープル、プロダクトの3つでブランドを考えています。昨年11月からプラネットとピープルに焦点を絞り『次の世界へ』というブランドコミュニケーションを展開しています。大切にしている4つのバリューの核心部分を表現し、社会を変えるために活動されている先駆者の方々にご参加いただいて制作しました。どのような時代でも、どれだけテクノロジーが進化しても、人間一人ひとりの行動こそが世界のあり方を決めていく、そんな思いをこめました」と話した。

ストーリーテリングでつくりたい未来へ導く

最後に社会課題解決に取り組む企業や団体と、クリエイターやNPOを結び付けながらコミュニケーションのサポートをしている一般社団法人NEW HERO(東京・渋谷)の高島氏が「ストーリーテリングの魅力は、課題を顕在化した上で仮説に導くことができること。仮説というのはみなさんが作りたいと思っている現実のことといってもいいでしょう。今日、私がみなさんにお伝えしたいことは、ストーリーテリングを活用することによって、仮説を浸透させ、作りたいであろう未来を手にすることができるということです」と述べた。

ドキュメンタリストでもある高島氏の代表作「ママ、一歳おめでとう」 

ストーリーテリングが求められる理由

「ファクトベースのコミュニケーションもあるが、なぜストーリーテリングの手法を選んだのか」という質問に対し、能勢氏は社内に対する役割について触れ、「CSV、SDGs、ESGといっても社員はすぐに理解できません。どういう課題が自分たちの目の前にあって、それを保険がどう解決し、それによってどんな価値が生まれ、自分たちにとってどんな意味を持つのかを一連のストーリーで伝える必要がありました」と答えた。

鈴木氏は「弊社には4つのコアバリューがあり、それに従って社員がさまざまな活動を行っていますが、社員だけが活動していても世界的な課題はなかなか解決しないと思います。ストーリーテリングは、一方的にストーリーを語るというより感じてもらうことが重要。感じてもらうことで、たくさんの人がムーブメントを起こすエコシステムをつくれると思います」と語った。

また、「ストーリーテリングを使って上手く伝えるコツは?」という問いに対し高島氏は「課題を顕在化させ仮説に導くことが大切と申し上げましたが、仮説をそのまま伝えるのではなく、仮説から逆算して議論を生むような『問い』を設計し、その『問い』に対する全員の声を収集しまとめて発信することが大切です。声の中には賛成も反対もありますが、どちらも発信することで仮説だったものがより真実となり浸透しやすくなります」と話した。

ストーリーでこれからの社会に対する企業価値を伝える

最後に足立氏が「単に物語り調にすればいいのではなく、それを基にしてみんなで考える、そういうプロセスが重要。企業の社会に対する価値や価値観をすべてのステークホルダーに伝えていくにはストーリーの力が必要だと改めて感じました。社会的課題に取り組む企業・団体のみなさまは、ぜひストーリーの力を活用していただければ」と締めくくった。