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ブランドが社会とつながる、持続可能な未来へ  「サステナブル・ブランド ジャパン」 提携メディア:SB.com(Sustainable Life Media, Inc.)

100年に1度の大変革期だからこそ、トヨタは「可動性を社会の可能性に変える」

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オンライン登壇した大塚氏

電動化や自動運転、シェアリングなど大きな変革期にある自動車産業だが、トヨタ自動車は「私たちは、動く。」という日本自動車工業会の広告メッセージにあるように、すでに未来を見据えて動き出している。これは、今年2月23日に静岡県の旧東富士工場跡に着工した実験都市「ウーブン・シティ」や、新たなFCV(燃料電池車両)の「新型MIRAI」を見ても明らかだが、これらの根幹にある同社のビジョンはどのようなものなのか、社内で今どのような変化が起きているのか、トヨタ自動車の大塚友美Deputy Chief Sustainability Officerがサステナブル・ブランド国際会議2021横浜・初日の基調講演で語った。(環境ライター 箕輪弥生)

トヨタの原点を見つめ、実証実験都市でモビリティの可能性を広げる

トヨタ自動車(以下、トヨタ)が2月23日に着工した「ウーブン・シティ」は、さまざまな社会的課題を解決するために先端技術を取り入れ、あらゆるモノやサービスがつながる壮大な実証実験都市だ。自動車会社であるトヨタがなぜ巨額の予算を投じて街を作るのか疑問に思う人も多いはずだ。

その背景を理解するためには創業以来受け継がれてきたトヨタの哲学を表す「豊田網領」に立ち戻る必要がある。これはトヨタグループの創始者、豊田佐吉の考え方をまとめたもので、佐吉が母親の仕事を楽にするために開発した織機のように「自分以外の誰かのために役に立ち、幸せにする」という考え方であり、トヨタのDNAになっていると大塚氏は説明する。

ウーブン・シティはこうした思いや歴史を受け継ぎ、豊田章男社長が言うように誰かのために「幸せの量産」ができるための未来の街を目指している。新技術を開発し続ける「未完成の街」でありながら、あくまでも「ヒト中心の街」であり、異業種と積極的に連携し、人々の暮らしがつながりモビリティが生み出す新たな可能性をここで試していこうという強い思いがある。

トヨタのミッションともなっている「幸せの量産」はいわばトヨタの原点を見つめ直したものであり、「誰一人取り残さない」というSDGsの理念とも共通していると大塚氏は話す。

ウーブン・シティが示すようにモビリティが生み出す可能性を広げることは、同時にトヨタのビジョン「可動性(モビリティ)を社会の可能性に変える」に寄り添うものだ。

次々と打ち出される社内改革、発想を転換して社会のインフラを目指すFCV

大塚氏は「可動性には一人ひとりが行動を起こすという意味もある」と指摘する。

これまでトヨタはトップダウンで社長自らが現場で実際に行動で表してきた。またこれからの方向性をWebやインスタグラムで発信し、最近ではオウンドメディアである『トヨタイムズmagazine』も創刊し、さまざまなメディアで社内外に向けてそのビジョンを明確にアピールしている。

豊田章男社長のリーダーとしての信念や未来に向けた思いが詰まった『トヨタイムズmagazine』

さらに、役職でなく役割で仕事をしようと肩書の一部を廃止したり、労使の交渉も対立するものから、お互いが強調し創造力を最大に高めるようにやり方を変え、外部の人材も入ってもらうなど社内改革にも積極的に取り組んでいる。

一方、社員もビジョンのためにできることを自ら考え、ボトムアップで仕事のやり方を変えていき、「トップとボトムが相互に補完しあう関係ができてきた」(大塚氏)。

そのひとつの好事例として大塚氏は昨年12月に販売がスタートした燃料電池車(FCV)の新型「MIRAI(ミライ)」をあげた。

初代の「MIRAI(ミライ)」は、水素の価格やステーションインフラ、社会受容性の問題などにより苦戦していた。初代に続いて開発責任者を務めた田中義和チーフエンジニアは、新型の開発に向けて「燃料電池車を作る」から「水素社会全体を構成する」へと開発の視点を進化させた。

こうすることで、災害時での水素を使った給電や、トラック、電車、船などさまざまな商用車への活用などのアイデアが生まれ、カーボンニュートラルやSDGsへの寄与が明確になったのだ。

「これはまさにトップの考えをとらえ、社会に役立つためにそれぞれの立場で何ができるかを考えるという発想を起点に生まれた変革だ」と大塚氏は話す。

ところで、トヨタはCO2排出量を、2050年までに2010年と比べて90%削減することを目指している。「2050年までにCO2排出量実質ゼロ」という国の目標にもコミットしているが、その要のひとつとなる車の電動化についてはハイブリッド(HV)、プラグインハイブリッド(PHV)、電気自動車(EV)、燃料電池車(FCV)など全方位での取り組みを想定している。

地域によってエネルギー事情や使い方が違うため、ベストのソリューションを選んでもらえるような使い方をしてほしいと考えたためだ。幅広い選択肢から選べるのはトヨタの強みでもあり、モビリティカンパニーならではである。ここにも「可動性を社会の可能性に変える」というビジョンが根底にある。

このようにウーブン・シティから車の開発まで、どの戦略もモビリティによって可能性を広げ、持続可能な未来へとつなげていくという方向にブレはなく、48カ国に36万人の社員がいるトヨタは一丸となって動き出している。

箕輪 弥生 (みのわ・やよい)

環境ライター・ジャーナリスト、NPO法人「そらべあ基金」理事。
東京の下町生まれ、立教大学卒。広告代理店を経てマーケティングプランナーとして独立。その後、持続可能なビジネスや社会の仕組み、生態系への関心がつのり環境分野へシフト。自然エネルギーや循環型ライフスタイルなどを中心に、幅広く環境関連の記事や書籍の執筆、編集を行う。著書に「エネルギーシフトに向けて 節電・省エネの知恵123」「環境生活のススメ」(飛鳥新社)「LOHASで行こう!」(ソニーマガジンズ)ほか。自身も雨水や太陽熱、自然素材を使ったエコハウスに住む。

http://gogreen.hippy.jp/