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気候非常事態宣言、衆参両院での可決が意味する3つのこと

日本政府が10月に発表した「温室効果ガスの排出量を2050年までに実質ゼロにする」方針に続き、国会では11月19日、衆議院が気候非常事態宣言を可決、採択した。さらに翌20日に参議院でも同宣言の決議案が全会一致で可決し、脱炭素社会を目指す内閣方針を超党派で後押しする姿勢を打ち出した。気候非常事態宣言は2016年から急速に世界で広がり、国内でも長崎県壱岐市を皮切りに40を超える自治体が宣言している。その中で国会での採択が意味することとは何なのか、改めて説き起こしてみよう。(サステナブル・ブランド ジャパン編集局=沖本啓一)

小泉進次郎環境大臣は衆議院の決議を受け、2050年までのカーボンニュートラルに向けた取り組みを加速することを表明した。自身のブログでは同日、「決議文には、環境省が訴えてきた、経済社会のリデザイン『再設計』という言葉が入っています。全党一致の決議文にこの言葉が入ったことは、環境大臣として嬉しく思います」と環境省の姿勢を強調した。

気候非常事態宣言決議案(衆議院・本会議 19日可決)

近年、地球温暖化も要因として、世界各地を記録的な熱波が襲い、大規模な森林火災を引き起こすとともに、ハリケーンや洪水が未曽有の被害をもたらしている。我が国でも、災害級の猛暑や熱中症による搬送者・死亡者数の増加のほか、数十年に一度といわれる台風・豪雨が毎年のように発生し深刻な被害をもたらしている。

これに対し、世界は、パリ協定の下、温室効果ガスの排出削減目標を定め、取組の強化を進めているが、各国が掲げている目標を達成しても必要な削減量には大きく不足しており、世界はまさに気候危機と呼ぶべき状況に直面している。

私たちは「もはや地球温暖化問題は気候変動の域を超えて気候危機の状況に立ち至っている」との認識を世界と共有する。そしてこの危機を克服すべく、一日も早い脱炭素社会の実現に向けて、我が国の経済社会の再設計・取組の抜本的強化を行い、国際社会の名誉ある一員として、それに相応しい取組を、国を挙げて実践していくことを決意する。その第一歩として、ここに国民を代表する国会の総意として気候非常事態を宣言する。

右決議する。

気候非常事態宣言は2016年、オーストラリアのデアビン市から始まり、世界で急速に波及。国家単位ではイギリス、フランス、カナダなどが宣言しており、日本は10カ国目。国内の自治体では2019年9月に市議会で同宣言を採択した長崎県壱岐市が先駆けとなり、神奈川県鎌倉市、長野県北安曇郡白馬村、長野県などが続いた。

さらに今回の衆参両院での宣言可決に向けて、国会議員42人による超党派議連が今年2月に発足。共同代表幹事には自民党の鴨下一郎元環境相ら7人が就任した。環境省も今年6月、独自の「気候危機宣言」を表明し小泉進次郎環境大臣が「『気候非常事態宣言』は議会が出すことで危機感が共有される」と発信した。

国会で気候非常事態宣言の採択 それが意味することは

世界の潮流に遅れつつも、行政府に続いて日本の立法府が脱炭素、カーボンニュートラルの取り組みを前進させる姿勢を強く見せた。それが意味することを、サンメッセ総合研究所(Sinc)所長・主席研究員で、認定特定非営利活動法人 環境経営学会の副会長でもある川村雅彦氏は次のように解説する。

10月の菅義偉首相による「2050年カーボン・ニュートラル」宣言に続いて、11月には衆議院と参議院が「気候非常事態宣言」を決議した。これで日本の政府と国会は、脱炭素経済・社会に向けて舵を切ったことになるが、やっと「気候変動後進国」から抜け出すスタートラインについたに過ぎない。この意味を3つの点から考えてみたい。

一つには、中央政府と地方自治体の関係である。昨年9月に日本の自治体として初めて気候非常事態を宣言したのが壱岐市(長崎県)であり、その後40を超す自治体が宣言するに至っている。政府がさまざまな関係の中で決断できないうちに、危機感を抱く地方が先んじて宣言したことは、行政の意思決定が地方自律へ向かう兆候とも読める。

二つ目は、脱炭素は国家百年の計という観点である。つまり、20世紀の産業・社会構造から脱して、21世紀の日本の形を創るという発想である。これは、「日本は21世紀に何で食っていくのか」という問題に行き着く。再生可能エネルギーや水素エネルギーを本当に主力電源とするには、20世紀的発想を捨てて、まったく新しいビジネスモデルを構築し、世界をリードしなければならない。

三つ目は上記と関連して、気候変動を横断的に担う省庁の創設である。産業・社会のデジタル化を加速するべく「デジタル庁」が新設されるが、発想は同じである。これまでの気候変動・エネルギー政策は特定省庁(審議会)に委ねられ、省庁間の主導権争いの様相も呈していた。国家レベルのリスク・機会を長期戦略的に考える省庁が不可欠である。

(文=サンメッセ総合研究所(Sinc)所長・主席研究員 川村雅彦)


(編集注)認定特定非営利活動法人 環境経営学会:経営学、工学そのほかの関連諸科学と諸経験を総合し、マネジメント・フォー・サステナビリティの確立のため、研究者、経営者、市民の理論的・実証的研究の場を開設し、幅広い研究活動を行い、これらの研究成果を実社会に根付かせる普及啓発活動を行う(以上、公式サイトより)。気候非常事態宣言の普及・啓発に尽力し、2019年8月には声明を発表。会長=後藤 敏彦氏

地方の自律性、新たなビジネスモデルの構築、そして国の動向は長期展望をどう示すのか――。地方自治体や産業界はもちろん、あらゆる関係者の対応が望まれている。

沖本 啓一(おきもと・けいいち)

Sustainable Brands Japan 編集局。フリーランスで活動後、持続可能性というテーマに出会い地に足を着ける。好きな食べ物は鯖の味噌煮。