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貝印、持ち手が紙製のカミソリを商品化――2030年までにCO2排出量の半減目指す

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貝印(東京・千代田)は4日、使い捨てカミソリの脱プラスチックに向け、持ち手となるハンドル部分に紙を使用した「紙カミソリ」を来春、世界に先駆けて商品化する、と発表した。同社では、カミソリだけで年間約1900トンのプラスチックを使用しており、脱プラを進めていきたい考え。まずは公式オンラインサイトで発売後、順次、実店舗での販売を広げる方針。ディスポーザブル(使い捨て)カミソリ分野で国内シェア1位の同社が「次世代のカミソリ」と位置付ける新商品で、これを軸に「2030年までに使い捨てカミソリ分野でのCO2排出量の半減を目指す」という。(廣末智子)

同社は1908年、刃物の町として有名な岐阜県関市で創業。1930年代に日本で初めてカミソリの替刃の生産に成功以来、98年には、三枚刃を開発するなど、同分野の商品開発を続け、現在、旅館・ホテルのアメニティや一般家庭用も含めディスポーザブルカミソリ分野で国内シェア1位だ。

新商品の紙カミソリは、従来通りの金属の刃と、厚さ0.5ミリほどの紙で構成。紙部分は組み立て式で、かさばらず、持ち運びしやすい平らなパッケージとなっている。4日、同社のオンラインイベントでそのプロトタイプが公開され、遠藤浩彰副社長が、持ちやすさや剃りやすさへの配慮はもちろん、従来の使い捨てカミソリ以上に「使い切り」を意識しているため清潔に使うことができ、また好きな色やデザインを自由にレイアウトすることができるといった特徴を説明した。

この中で同副社長は、新商品は従来の使い捨てカミソリと比べてプラスチック使用量の約98%削減に成功したと強調。今後はさらなる環境負荷低減に向け、金属と紙のリサイクルも視野に検討していることも含め、「環境に配慮したカミソリという価値だけでなく、紙を使ったお洒落で先進的なカミソリとして独自のポジションを築いていければ。人に優しい刃物という考え方を大切にしてきた貝印が、社会問題の解決に向けて取り組んでいく活動のスタートとなる製品としたい」などと紙カミソリ商品化にかける思いを話した。

同社は今年4月、経営戦略本部内にSDGs推進チームを設置。製品本体やパッケージで使用する材料の見直し、再生可能エネルギー比率の向上などに取り組んでいる。中でもカミソリについては昨年11月にいち早く、「ディスポーザブル分野でのCO2排出量の半減を目指す」ことを宣言。紙カミソリについてはこれより前の2018年に開発に着手し、試行錯誤を進めていた。

開発チームによると、今回の紙カミソリは、いつでも清潔で快適に使用できる1Dayカミソリをコンセプトとしている。このため「耐久性はなくても価値が提供できる用途」として、ホテルや旅館のアメニティとして、また緊急用や旅行向け、お土産としての活用を描いている。

またこの日のイベントには、同社とのコラボレーションでSDGs達成のための新製品の開発に携わった女優の夏木マリさんと、モデルの冨永愛さんが参加。夏木さんは、紙素材と最小限のステンレスでつくった紙ハサミを、富永さんは、交換式のアイブローレザーと毛抜きなどが一体化した眉のケア製品を紹介した。

夏木さんの紙ハサミは、自身が取り組んでいるバラの購入を通じて途上国の子どもを支援する社会貢献活動のテーマカラーにちなんだ赤で、ジェンダー問題に関心を持っているという冨永さんの眉ケア製品はアースカラー。いずれも強い個性を感じさせる製品で、「可愛くてしっかりとした製品ができて嬉しい。園芸用ハサミとしてお花屋さんに使っていただくことも夢見ています」(夏木さん)、「男女ともに使いやすいカラーバリエーションにこだわり、質感も追求しました」(冨永さん)とそれぞれに思いを話していた。

両製品の商品化は未定だが、同社が未来に向けて刃物の新たな可能性を提案する場として「いい刃の日」とされる11月8日に公開する特設サイトの中で、紙カミソリとともに披露される。

廣末智子(ひろすえ・ともこ)

地方紙の記者として21年間、地域の生活に根差した取材活動を行う。2011年に退職し、フリーに。サステナビリティを通して、さまざまな現場の当事者の思いを発信中。