サステナブル・ブランド ジャパン | Sustainable Brands Japan のサイトです。ページの先頭です。

サステナブル・ブランド ジャパン | Sustainable Brands Japan のサイト

ブランドが社会とつながる、持続可能な未来へ  「サステナブル・ブランド ジャパン」 提携メディア:SB.com(Sustainable Life Media, Inc.)

SDGs体現する提案、コロナで中止の修学旅行に無料招待など実現へ――SDGsオンラインフェスタ開催

  • Twitter
  • Facebook

持続可能な社会の実現を考える、国内最大級のオンラインイベント「SDGsオンラインフェスタ」が10月31日、開催された。この中で一般参加者や自治体が企業にプロジェクトを提案する「SDGs提案グランプリ」では、愛媛県松山市が提案した、新型コロナウイルスの感染拡大で修学旅行が中止となった全国の小学生と保護者を招待する旅行プランが「ビヨンドグランプリ賞」を受賞。同市は今後、提案先のANAホールディングスと連携し、招待旅行の実現を目指していく考え。(横田伸治)

企業にSDGs体現のプロジェクト提案、実現へ

SDGsオンラインフェスタは、コロナ禍で多くのイベントが中止になったことを受け、有志らが立ち上げた。WEB会議サービス「Zoom」などを活用して開催し、今年5月、7月に続いて3回目の今回、約150人が参加した。SDGs提案グランプリの発表に先立ち、実現に向けてすでに動き出した提案に贈られるビヨンドグランプリ賞発表の記者会見が行われた。

「持続可能な社会づくりのためには、なんといっても子どもたちの健全な成長が大切」。ビヨンドグランプリ賞を獲得した松山市の野志克仁市長は会見で意義を強調した。提案したのは、新型コロナウイルスの感染拡大で修学旅行が中止となった全国の小学生とその保護者を松山市に招待し、市から沖合約10kmに位置する瀬戸内海の中島などの豊かな自然や文化を体感してもらうというもの。修学旅行中止による子どもたちの「経験の貧困」に注目し、プロジェクトを考案したという。

具体的な内容は今後決定するが、中島のみかん栽培や自然保護活動の見学・体験などが盛り込まれる予定で、子どもたちにとって松山市を「第2のふるさと」のように感じてもらい、関係人口を創出することが狙いだ。提案先となったANAホールディングスなど複数の企業を巻き込んで、具体的な内容を検討するという。

また、東京都渋谷区の子ども食堂でボランティア活動を行う大学生のグループも同賞を獲得した。子ども食堂への寄付金付きの災害時用非常食・保存水を企業に購入してもらう取り組みを求めたミスワールドジャパン埼玉に向けて、活動を広め、実現に向けて推進するアイデアを提案。影響力を持つ都道府県や自治体が広報や後援に参加することを検討し、埼玉県が賛同し、SNSでの発信などの支援を今後行っていくことになった。

続いて、SDGs提案グランプリのファイナリストが発表された。

・40代以上の女性をターゲットとしてBIOホテルを中心としたSDGsコミュニティを作る「地球とワタシを美しくする旅へ」(ANAホールディングスに提案)
・ゼロカーボン印刷促進のために、企業の環境貢献度を可視化し、環境への配慮に経済的価値を付与する取り組み(大川印刷に提案)
・子ども食堂寄付金付きの保存水購入促進のために、学校での防災授業を開催し、商品もPRする取り組み(ミスワールドジャパン埼玉に提案)
・財布やスマホケースとして、使用済みの紅茶用ティーパックを再利用するアイデア(ユニリーバ・ジャパンに提案)
・使用済みのティーパックをコンポストとして肥料に使ったり、パック自体も可食素材にしたりするなど3つのアイデア(同)

――について、それぞれ発案者がプレゼンテーションをした。

グランプリ決定にあたっては、これら5つの提案のいずれかに、Zoomのアンケート機能を利用してイベント参加者が投票。結果、「地球とワタシを美しくする旅へ」を提案したセラピストの稲垣可夜子さんがグランプリに輝き、来年2月に開催される「サステナブル・ブランド国際会議2021横浜」の参加チケットなどが贈られた。

SDGsはパラダイムシフトそのもの

グランプリに続いては、SDGs活動に取り組む専門家による講演が行われた。初めに登壇したのは、サステナブル・ブランド国際会議アカデミックプロデューサーで駒澤大学教授の青木茂樹氏。まずはマーケティングの中に社会貢献活動が組み込まれる歴史と構造を説明。さらに、コロナ禍での世界的企業の対応例を挙げた上で、サステナブルな都市づくりの先進例としてバンクーバーの取り組みを紹介し、「行政が積極的にサステナビリティに取り組むことで、技術を持った企業が集まる。日本でもこうしたことが始まれば」と期待を込めた。

続いて、岡山大学副理事で内閣府上席科学技術政策フェローの佐藤法仁氏は「SDGsは世界共通の言語である」ことに注目。新型コロナウイルス、AI、SDGsはいずれも世界が等しく向き合うものであり、かつ社会に新しい価値を創造するものであることから「パラダイムシフト」であると説明した。また企業がSDGsに取り組む際のアドバイスとして、今持っている強みを今足りないもののために活用する「SDGs転換」、今取り組んでいることをSDGsターゲットに結びつける「後付け」などの実用的な考え方の例を披露した。

会場をWEB会議サービス「Remo」上に移してからは、のべ28人の有識者がそれぞれブースを構えて、参加者と対話する「実践者ブース」を展開。また並行して、SDGsに取り組む企業の商品を購入できる「エシカルマーケット」も開催された。SDGs提案グランプリは第2回も開催される。募集テーマは

「ペットボトルではなく、水筒を持ち歩きたくなるサービス」(サーモス)
「まだ使えるのに捨てられてしまうオフィス家具をゼロにするアイデア」(サブスクライフ)
「松山SDGsツアーによる学びの総量を最大化する方法」(松山SDGsツアー研究会)
「FSC認証マークの普及アイデア」(FSCジャパン)

の4つ。SDGsオンラインフェスタ公式サイトから応募可能。

横田伸治(よこた・しんじ)

東京都練馬区出身。東京大学文学部卒業後、毎日新聞社記者、認定NPO法人カタリバを経てフリーライター。若者の居場所づくり・社会参画、まちづくりの領域でも活動中。