ラベルレスボトルが巣ごもり需要、環境配慮を追い風に拡大
アサヒ飲料のラベルレスボトル専用商品「アサヒ 緑茶」
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商品にラベルをつけないペットボトルの販売が拡大している。アサヒ飲料は10月6日から新たに「アサヒ緑茶」ラベルレスボトルを全国で販売する。同社の「アサヒ ラベルレスボトル」シリーズは、巣ごもり需要をとらえたケース販売により今年1-8月の販売実績は昨年比2倍と好調だ。コカ・コーラシステム「い・ろ・は・す 天然水 ラベルレス」、サントリー食品インターナショナル「伊右衛門ラベルレス」など、競合各社もラベルレスボトルを強化している。消費者も57.4%が「ペットボトルのラベル不要」と答えるなど、資源削減と利便性をとらえて、ラベルレスへの転換がさらに進みそうだ。(環境ライター 箕輪弥生)
PETボトル飲料にラベルはいらない?
左)容器は100%リサイクルペットボトルを採用する「い・ろ・は・す 天然水 ラベルレス」
右)コンビニで限定販売した「伊右衛門ラベルレス」 |
ラベルレスボトルは、主にケース売り商品として販売されている。ラベルに記載している原材料名などの一括表示は外装の段ボールに記載するためだ。
さらに、これまで個別容器にはリサイクルマークなどを記載したタックシールを付ける必要があったが、今年3月末に「資源有効利用促進法」の一部が改正され、ペットボトルに直接リサイクルマークを刻印することで完全ラベルレスも可能となった。
他社に先駆けてラベルレス商品を2018年から販売するアサヒ飲料は、4月から完全ラベルレスを実現した「おいしい水 天然水 ラベルレスボトル」(600mlPET・2LPET)のケース販売を行っている。
同社広報部によると、「アサヒ ラベルレスボトル」シリーズによるプラスチック資源の削減量は年間約20トンを見込む。売上も昨年比2.2倍と好調な理由について同社広報部は、「コロナ禍で家庭内需要が増えたことに加え、消費者のプラスチックゴミへの意識が高まり、リサイクルする場合もラベルをはがす手間がなく楽という利便性が評価された」と分析する。
競合他社もラベルレスボトルの販売に力を入れる。コカ・コーラシステムが4月に販売開始した「い・ろ・は・す 天然水 ラベルレス」(560mlPET)はボトル表面にブランドロゴがエンボス加工されたシンプルなデザインが特徴の完全ラベルレス製品だ。同製品は国内最軽量でつぶしやすい特徴に加え、ラベルレスとしたことで環境意識の高い消費者をとらえ、売上も倍増している。
一方、サントリー食品インターナショナルが4月から「伊右衛門ラベルレス」をコンビニで限定販売している。原材料名などを記載した首掛式ラベルを貼ることで、単品での販売を行う。
味の素AGF社も昨年8月にEC限定で「ブレンディ ボトルコーヒー ラベルレス 無糖900ml」を発売。今年は低糖・微糖タイプをラインアップに加えた。
このように飲料メーカーがラベルレス製品を拡大する背景には消費者の意識の変化がある。日本トレンドリサーチの調査(9月25日発表)では57.4%がPETボトル飲料にラベルは「不要」と答えた。
アサヒ飲料、ケミカルリサイクルで「ボトルtoボトル」へ
リサイクルが義務付けられているPETボトルはラベルやキャップを除去した形でリサイクルされる。昨今は、使用したPETボトルを同品質のPETボトルに再生する「ボトルtoボトル」を採用する動きが強まっているため、元になるPETボトルをリサイクルしやすいように製造する努力がメーカー側にも消費者にも求められている。
アサヒ飲料は、ラベルレスなどボトルの形状に工夫をするだけでなく、ケミカルリサイクルによるPETボトルの資源循環への取り組みも始めた。「ボトルtoボトル」の再生事業を行う日本環境設計に融資して事業を進め、2022年には製品化に結び付けたい意向だ。
ケミカルリサイクルは、化学的なプロセスで不純物を取り除いて化学分解により中間原料に戻した上で再重合して新たなPET樹脂をつくる科学的再生法だ。PETボトルを何度も資源として再生することができるため、サーキュラーエコノミーの視点でも注目されている。
容器の軽量化やラベルレスによる資源削減から、リサイクルによる資源循環へ、PETボトルを持続可能にするための挑戦が拡大している。