• 公開日:2020.07.07
  • 最終更新日: 2025.03.02
地域の課題、外から見れば価値 「関係人口」に大きな期待
  • 廣末 智子

日本創生SDGs福島県磐梯町、佐賀県波戸岬のチャレンジとは

「第2回未来まちづくりフォーラム」ではまさに日本創生SDGsのモデルとなる事例に関わる関係者が特別セッションに登壇。人口減少や空き家問題などの課題をバネに、自治体と、外部の企業が連携し、住民はもちろん、いろんな人を巻き込んで地域活性化に取り組んでいる様子が報告された。働き方、暮らし方が大きく変わる中、地域の普遍的な価値を高めるために今、どんなチャレンジが始まっているのか。(廣末智子)

住民3500人 小さな町だからできる

小池氏
佐藤町長

このうち福島県磐梯町からは日本で初めて行政をデジタル化させる「デジタルガバメント」を推進している佐藤淳一町長と、同町を舞台に新しい働き方を実践している東京の不動産情報サイト大手LIFULL地方創生推進部の小池克典氏が、それぞれの立場から取り組みを紹介。ローカルと都心の組み合わせによる可能性を感じさせる対談となった。

チャレンジの理由を佐藤町長は「デジタルは町の将来を救う。全町民を幸せにするために手段としてデジタルの活用を考えた」と説明。全課を横断する組織として「デジタル変革戦略室」を置く一方、クリエイティブ人材を確保する流れを創出することで、「磐梯に対して興味を持ってくれる人を増やしたい。磐梯でこんなこと、あんなこともしてみたいという人、企業を呼び込みたい。そのための基盤づくりをしている」と“関係人口”への期待を語った。

一方、その関係人口の一人である小池氏は「東京では新しいテクノロジーの実践はしにくくなっているが、地方には物理的スペースも含めてチャレンジの余白がある。企業にとっていちばんのメリットだ」と強調。磐梯町でも町の遊休施設を借り受け、シェア型ワーク拠点として活用していることについて、「(そこに)いろんな人が来ることで町民にいろんな機会が提供できる。最終的には磐梯町の不動産価値を上げることになる」と述べた。

共にチャレンジを進める両者の共通認識は、地域の課題はマイナス要因とはならないということ。「デジタルガバナンスは1200世帯3500人という小さい町だからこそできる取り組み。一軒一軒にメリットを示していくことができる」(佐藤町長)「人口減少をネガティブに捉える必要はない。僕らにとってもチャンスだ」(小池氏)と人口減少を逆手にとった発想が大事であることが提起された。

僕らからすると宝の山だった

左から徳政氏、橋村氏、堀岡氏

また、佐賀県唐津市の玄界灘を臨む波戸岬を舞台に、施設は老朽化し、閑散としていた場所を新たに人が呼び込めるようリノベーションした事例をめぐるセッションも行われ、ここでも地域の課題解決には外からの視点が外せないことが見えてきた。佐賀県の堀岡真也副課長によると、同県では外部の知見を地域事業に結びつける独自の仕組み「さがデザイン」を取り入れており、その中から生まれたのが2018年にリニューアルオープンした波戸岬のキャンプ場だ。

新キャンプ場をプロデュースしたVILLAGE INC(静岡・下田)代表取締役の橋村和徳氏は、以前の波戸岬を「僕らからすると宝の山だった。かつて遣唐使をここから送り、また秀吉の朝鮮出兵の際には前線基地となった名護屋城の跡地もある絶好のロケーション。ここに現代のサムライたちが陣を張るとなったらこんな痛快なことはないなと思った」と語り、場所の歴史を生かし、ストーリー性を持たせた仕掛けづくりに力を入れた経緯を報告。

これに対して、地域活性化支援の一環として一緒に取り組むJTBの徳政由美子マネージャーも、「全国の自治体にとって、自分たちの課題を、それは価値ですよ、と言ってくれる人との出会いは大きい」と評価。その上で「波戸岬のキャンプ場がずっと続くためにはいろんな人が関係性をもって関わっていく、関係人口を継続して増やしていくことが大事」と述べ、JTBとしても持続可能な観光を見据えた形での地域課題の解決支援を続けていく考えを示した。

written by

廣末 智子(ひろすえ・ともこ)

サステナブル・ブランド ジャパン編集局  デスク・記者

地方紙の記者として21年間、地域の生活に根差した取材活動を行う。2011年に退職し、フリーを経て、2022年より現職。サステナビリティを通して、さまざまな現場の思いを発信中。

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