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ブランドが社会とつながる、持続可能な未来へ  「サステナブル・ブランド ジャパン」 提携メディア:SB.com(Sustainable Life Media, Inc.)

ハフポスト、ELLE、IDEAS FOR GOODの編集長が語る「サステナビリティと未来」

左から加藤編集長、坂井編集長、竹下編集長


サステナブル・ブランド国際会議2020横浜で最も注目を集めた「サステナビリティ最前線 メディア編集長が語る未来」には、ハフポスト、エル・ジャポン、IDEAS FOR GOODという世界の動きについて異なる立場から発信をするメディアの編集長が登壇した。時代の先を読む、3人の編集長が見据えるサステナビリティと未来に求められる企業のあり方について語り合った。

ファシリテーター
青木 茂樹 (サステナブル・ブランド国際会議 アカデミックプロデューサー)
パネリスト
竹下 隆一郎 (ハフポスト日本版編集長)
坂井 佳奈子 (エル・ジャポン編集部編集長)
加藤 佑 (IDEAS FOR GOOD編集長)

IDEAS FOR GOODはソーシャル・グッドなアイディアを集めたウェブメディア。社会的課題にクリエイティブな方法で取り組む国内外のプロジェクトや企業を紹介する。大事にしていることについて、「社会的課題を伝えるだけでなく解決策を伝えることに焦点を絞っている」と加藤編集長は説明した。IDEAS FOR GOODの読者の5割以上が18~34歳のいわゆるZ世代、ミレニアル世代の若年層。そうした読者の持つ価値観について、「正直」「嘘がない」「背伸びしていない」「想いがある」「余白」「遊び」「楽しめる」「リアル感」といったキーワードを挙げた。顔が見えるメディアとして、イベントを定期的に開催し、ポッドキャストにも力を入れる。最近では、体験できるメディアとして、「記事を10本読むよりも、1回旅したほうが、人は変われる」をテーマに国内外のツアーも手掛けている。

仏発の雑誌『エル』は1945年、第2次世界大戦が終わった約3カ月後にジャーナリストのエレーヌ・ラザレフ氏が創刊した。エルは仏語で「彼女」を意味し、雑誌の根幹にあるメッセージは「女性の欲求を解放しよう」だ。ライフ・ステージのすべてにおいて、女性が好奇心旺盛に生きていくことを応援することが創刊以来の信念だ。現在45の国・地域で発刊しており、ウェブメディアも展開する。『エル・ジャポン』の創刊は1982年、ウェブメディアを1996年に立ち上げた。若年層の女性に向けて姉妹誌『エル・ガール』を発刊する。雑誌を作る際に心がけているのは、「不真面目さにおけるまじめさ」「厳粛さにおけるユーモア」だと坂井編集長は語った。

米国で2005年に創設されたハフポストは世界15の国と地域で展開するネットニュースメディアだ。日本版は2013年に立ち上がり、ニュースだけでなく個人の声も拾い上げるメディアとして、特集記事のほかに1000人以上いるブロガーによる記事も発信する。

竹下編集長は、企業に関する記事の潮流について、「単に商品・サービスの紹介やCEOの理念を伝えるだけではあまり読まれないが、ビジョンやアクションについて語ったものは読まれる」と話し、その証拠として、そうした記事はページに滞在する時間が他のものの3倍近く延び、SNSで紹介した際のクリック数も2-3倍になる傾向があると説明した。さらに、ハフポストでは毎週火曜日21時からtwitterで就活応援番組「ハフライブ」を生配信しているが、約100人の就活生にアンケートをとったところ、未来の消費者である学生たちが「企業が何を目指しているか」について詳しく調べていることが分かった。そうしたトレンドから、ハフポストでは「はじめてのSDGs」という企画を昨年6月から展開し始めたという。

メディアとして「サステナビリティ」をどう伝えるか

竹下編集長は、伝える上で重視していることについて、「日本のメディアを運営する立場として、日本社会にまん延している皮肉、冷笑したり、馬鹿にするような雰囲気を真剣に捉えている」と語った。一般的な記事や広告記事をつくる際にも、そうした雰囲気に対して、どうすれば企業の崇高な理念が伝わるか慎重に考えを巡らせているという。さらに、多くの読者がスマートフォンで記事を読んでいると話し、スマートフォンの小さな画面で伝えたいことが端的に分かるように意識して記事をデザインしている。

「メディアは直接、読者につながっているように思われるがそれはフィクションだ。読者との間にグーグルやツイッター、フェイスブックなどが入っている。そのルールに基づいて記事が流れることが決まっているから、そのルールをどう使いこなすのかを考えている」

企業がメッセージを伝える際にも、ネット環境や一般の人がどう情報に接しているかということから考えることが必要という。「それは本質ではなくテクニックの話だと言われることもあるが、こうしたテクニックを語らずして、伝えるということの本質的な話はできない」。さらに、「SDGsは理念のため『きれいごと』だと思われるが、テクノロジーも『きれいごと』を重視するようになってきている。ジェンダーや環境について一生懸命発信すればするほど検索の上位に上がってくる。そして、それが収益につながるよい循環が生まれている。単なるきれいごとではなく、経済が回るようになってきている」と語った。

加藤編集長は「サステナビリティへの関心は日本でかなり高まっている」と話し、SDGsやESG、サーキュラーエコノミー、ゼロウェイストといったキーワードのgoogleでの検索数が近年、急速に上がってきているとデータを示した。同編集長はIDEAS FOR GOODのほかに7つのメディアを運営するハーチ(東京・中央)の代表も務めており、メディア運営においてESG投資の考え方を採用していると話した。

「ソーシャルインパクトの創出につながる企業・団体の取り組みをメディアでの発信を通して支援していきたい。いま注目しているのは、取材先や広告主がESGの取り組みを強化するよう移行する『トランジション』。『SDGsウォッシュ』という言葉があるが、企業の方々に話を聞くと、『ビジョンはあってもすぐに変えられないから、できることからやっている』という理由がある。それを『SDGsウォッシュ』と否定するのではなく、トランジションを支援していきたい」

エルは仏での創刊以来、単にトレンドを発信するのではなく、女性のエンパワーメントを意識した情報発信を行ってきた。エル・ジャポンが考える「サステナブルな未来」の柱は、「女性のエンパワーメント」と「環境に配慮したエコライフ」だという。SDGsの発効は2016年だが、『エル・ジャポン』では2007年に「エコライフ」を特集し、スーパーモデルのアンバー・ヴァレッタ氏のエコライフを紹介するほか、地球のために個人が取り組める身近なアイディアを提案した。2008年には「ワーキングマザー」特集を組み、育児と仕事を両立する女優ヴァネッサ・パラディ氏やシングルマザーなどを取り上げ、2015年には「フェミニズム」特集を発刊した。

そして、SDGsの認知度が一層高まりを見せた2019年、8月号でサステナビリティ特集「Go!Green 合言葉はサステナブル!地球に優しいモードって?」を行った。読者からは「ファッション誌は流行を伝え、モノが売れればいいと考えていると思っていたが、環境に配慮した新たな繊維を開発するなど、さまざまなブランドの取り組みが分かり勉強になった」といった反響があったという。坂井編集長は「洋服は本来、人を幸せにするためのもの。そのことと環境への負荷をなくすことの両立に目を向けて特集を組んだ。知らないことを知ることが重要。『無自覚、無意識であることはまずいことなのではないか』と気付くきっかけをつくれたことはやりがいにもつながった」と振り返った。

どんな未来を描くか

IDEAS FOR GOODの加藤編集長はこれから「生産と消費の距離を近づけるサービスが流行する」と予測する。グローバル資本主義は生産者と消費者の距離を広げ、それによってさまざまな課題が生まれた。例えば、食品メーカーは小売店がどう保存してくれるか分からないから賞味期限を短くするが、フードロスが生じてしまう。その結果、消費者は企業の変化を待ち、企業も消費者の変化を待つという関係性になってしまった。生産と切り離された消費者の不安を解消する形で、シェアリングエコノミーやサーキュラーエコノミー、オンデマンドエコノミーによって、そのつながりを近付けるソリューションを提供することが必要だという。加藤編集長は、企業に本質的に求められていることについてこう語った。

「『真・善・美』が求められる時代になります。消費者との距離が近づくほど、ごまかせなくなり、真正なもの、『ありのまま』が求められる。ありのままで消費者の共感を得るためにはソーシャルグッド(社会善)でなければならず、『パーパス』が必要になる。そして、社会にとってよいものは美しい。美しいものは大切にされる」

エル・ジャポンの坂井編集長は「衣食住のすべてが循環してよい社会をつくっていくことを目指したい」と話す。過去6回開催してきた、働く女性を応援するイベント「ELLE WOMEN in SOCIETY(エル・ウーマン・イン・ソサエティ)」を今年はより能動的に参加するものへと進化させ、参加者が実際に行動に移すことを後押しする役割を果たしていく方針だ。「作り手であるメディアが、変化を生み出すことを意識して配信することが大切であり、編集者もそういう考え方を持つようになってきた」と語った。実際、サステナビリティに関する特集をすることで、編集者が飛行機ではなく新幹線を選ぶなど行動が変わってきたエピソードを紹介した。

竹下編集長は、「分断」について触れ、「ハフポストでは新聞社のように政治部、経済部などに分かれることなく、専門記者をあえて置いていない。みんなが共通のテーマに取り組むようにしている。SDGsについても同じだ。経済だけ、政治だけではなくみんなで取り組んでいくもの」と話した。

青木プロデューサーは、「みなさんがおっしゃるように、セパレートになっているものをつなげていく、経済を再編集していくトランスフォーメンションの時代が来ている」と締めくくった。