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ブランドが社会とつながる、持続可能な未来へ  「サステナブル・ブランド ジャパン」 提携メディア:SB.com(Sustainable Life Media, Inc.)

大学生が考える2030年の暮らし:どんな場所に住み、どう暮らしていきたいか

「次世代育成」を主要テーマのひとつに掲げ開催した今年のサステナブル・ブランド国際会議では、高校生、大学生、小中高の教員それぞれを対象にしたセッションが行われた。昨年に続いて、大和ハウス工業が主催した大学生向けワークショップ「SBUniversity2020」には全国約90人の応募者から32人が選ばれた。学生らは事前研修を通して、世界を取り巻くさまざまな課題について学んだ後、大和ハウス工業の6事業部門ごとのチームに分かれて、担当社員にインタビューするなどしてSDGs達成に向けた新企画の提案を行った。

2030年に実現したい未来を具体的に描く

2月初旬、サステナブル・ブランド国際会議2020横浜(以下、SB 2020 Yokohama)に先立ち、事前研修が東京で行われた。研修は、今年のSB Universityのプログラムを開発した「教育と探求社」の開発部マネージャーであり、教育社会学者の福島創太氏がファシリテーターを務めた。福島氏は中高生向けのアクティブ・ラーニング型キャリア教育プログラムを開発しており、ちくま新書から『ゆとり世代はなぜ転職をくり返すのか?──キャリア思考と自己責任の罠』を出している。

事前研修では、当日に向けたチームビルディングと2030年に実現したい未来について考えるワークショップが行われた。オンラインで参加する遠方の学生もいた。

まずは、2人1組になって「どんな子ども時代を過ごしたか」「いま最も力を入れていることは何か」など相互インタビューした後、他己紹介をして全員が少しずつ距離を縮めた。そして2030年の未来を予測するために、さまざまな地球規模の課題や現象に関する40近いニュースや論文などを読み、起こりうる未来のシナリオを複数イメージし、チームごとに議論を交わしながら、望ましい未来について深く思考した。

学生たちは「個人の自由で生き方や働き方が選べる未来」「ワークとライフのバランスがとりやすい社会。誰かに負担や我慢が集中するのではなく、結婚しても協力しながら、家族が仲良く暮らせるようにしたい」「ロボットと人が共生する未来。ロボットの得意な分野はロボットに任せ、すべての人が時間的余裕を持てる社会。新たにできた時間を、学びや人とのつながりをつくる時間にあてたい」「地球と仲良く、すべての人がさまざまな選択肢を持てる社会」「長期的視野を当たり前に持ち、豊かさを再定義し、持続可能な幸福を実現できる社会」などさまざまな未来を描いた。

研修の最後に、ミッション「大和ハウスのリソースを存分に活用して、SDGs達成に向けた新しい企画を提案せよ!」が発表された。

学生たちは大和ハウス工業の6つの事業、「流通店舗事業」「建築事業」「集合住宅事業」「経営企画・新領域」「環境エネルギー事業」「マンション事業」に分かれてチームを結成。当日までに大和ハウス工業や各事業領域などについて調べ、さらにオンラインで打ち合わせを行うなどして、当日のプレゼンテーションに向けて準備した。

社員にインタビューし、より具体的な提案を目指す

SB Universityに参加した学生たちはSB2020Yokohamaの1日目、ランチをとりながら行われるオリエンテーションに参加し、2日目夕方にプレゼンテーションを行う。それ以外の時間については、2日間で行われる70以上のセッションに自由に参加できる。

オリエンテーションでは、ファシリテーターを務めた教育と探求社推進部執行役員の大野将輝氏が「参加するセッションを通してどういう学びを得ようか、どのように自分の活動につなげていこうか、ということを意識しながらセッションを聞いてもらいたい」と呼びかけた。

オリエンテーションには、事前研修に参加できなかった学生たちも集まり、まずはチームごとにチェックインという方法で「いまどんな気持ちでここにいるか」を打ち明けながら自己紹介を行った。各チームのテーブルには、大和ハウス工業の各担当部門の社員も参加。学生たちは社員に準備してきた質問を20分間のインタビュー形式で尋ねた。

環境エネルギー事業チームでは、学生の「環境エネルギーソリューションの中でどれに一番重きを置いているのか」という質問に対し、社員らは「お金を稼ぐ事業体として、どれが一番稼ぎ頭になるのかというスタンスで決める」「営業担当としては利益を生み出すことをシビアに考えていかないといけない」と率直に答える場面もあった。学生はこの時間を通して、大和ハウス工業という企業、理念、事業の仕組み、部署の役割、社員の視点などについて学んだ。大野氏は企画を考えるのに役立つワークシート集を学生に配布。学生は翌日に向けて、SB University専用の部屋を使うなどして、プレゼンテーションの準備を進めた。

2030年、どんな場所でどう暮らしていきたいか

SB2020Yokohamaの締めくくりとなる2日目17時から始まるセッションで、企画のプレゼンテーションが行われた。事前研修に続き、このセッションのファシリテーターを務めた福島氏は「未来を大胆に描きながら、それをどう実現するか。その第1歩をしっかり描いて欲しい」と語った。

大和ハウス工業サステナビリティ企画部の近久啓太部長は「2日間を通して、企業がサステナビリティに取り組むことは待ったなしの状況ということを感じていただけたと思う。大和ハウスは経営理念に基づき、SDGsを基点に考えたことをお客さまや社会に提供し、さらにお客さまがSDGsを達成できるよう応えていく。今日は自由に考えて、答えではなく提案を出して欲しい」と呼びかけた。

学生は約45分間の準備時間の後、模造紙を使ってそれぞれ3分間のプレゼンを行った。プレゼンは「SDGs17目標のうちどの目標に取り組んだか。その理由はなにか」「大和ハウスのどんなリソースをどのように活用したか」「自分たちの企画の具体的な説明」「企画によってどんな未来が実現するのか、その魅力」の4つの要件を入れて行われた。

マンション事業部チームが企画したのは「あい溢れるマンション」。「あい」には愛とAIの意味があり、子どもから高齢者まで幅広い層の住民同士、地域の人々、企業のコミュニケーションを促進する交流型マンションを提案した。「あい溢れるマンション」の1階は共有スペース、2階以上は居住スペースになっている。発表者は米イエール大学の「本を1日30分読むと健康寿命が延伸する」というデータを引いて、共有スペースには図書館を設置し、さらにその土地の食材を使ったカフェや食堂を置くことで地産地消を促進し、輸送費のコストも削減できると説明した。セキュリティにはAI顔認証を用いて、住民だけが住民階に立ち入ることができるようにする。またサーモグラフィーのような健康管理ができる技術を備え付けた、健康に暮らせるマンションでもある。「『あい溢れるマンション』は通常のマンションなら経年劣化で資産価値が減るが、AIによるビックデータの集約によって住めば住むほど資産価値が上がる」と締めくくった。

経営企画チームは思いやりや感謝を価値で交換していく「だいわこいん」を提案。人口減少が進む中、新しく建物を建てる必要があるのかという問いを立て、空き家をリソースとして活用することにした。サブスクリプションの仕組みを使い、空き家を利用して宿泊し、料金は「だいわこいん」で支払う。全国展開する大和ハウス工業のネットワークを生かし、全国規模で取り組んではどうかと提案した。「だいわこいん」を発行することで、大和ハウス工業のブランド価値向上にもつながり、思いやりを実装化することで大和ハウスが選ばれる企業になると説明。そして、現代の人はつながりを渇望しているとし、思いやりという「つながり」を顧客に提供でき、感謝と思いやりで成り立つ大和ハウス経済圏をつくりたいと話した。

流通事業部チームは、大和ハウス工業の社員らがさまざまな部署で経験を積んでいることを生かし、短期的で経済合理的なまちづくりではなく長期的で持続可能なまちづくりを行うことを提案した。ここ最近、自然災害が深刻化していることを課題に挙げ、津波などの水害から逃げ遅れない人口分散型のまちづくりを行うことが必要だと話した。そのために、大和ハウス工業の知見を用いて、商業施設や住居が密集せず逃げ道が確保されたまちづくりを行ってはどうか。「資産より人命。避難できるまちづくりをすることで、住宅は壊れるかもしれないが命は守られる」と語った。

それぞれのチームは事前研修で描いた未来を現実的に実現していくには何が必要かということを、大和ハウス工業という企業を通して「暮らす場所」という視点から真剣に考えた。これから社会に出る学生たちにとって、バックキャスティング思考を体験し、ビジネスを通して自ら描く社会を実現するためのシミュレーションの機会となった。

小松 遥香 (Haruka Komatsu)

Sustainable Brands Japan 編集局デスク。アメリカ、スペインで紛争解決・開発学を学ぶ。「持続可能性とビジネス」をテーマに取材するなか、自らも実践しようと、2018年7月から1年間、出身地・高知の食材をつかった週末食堂「こうち食堂 日日是好日」を東京・西日暮里で開く。