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ブランドが社会とつながる、持続可能な未来へ  「サステナブル・ブランド ジャパン」 提携メディア:SB.com(Sustainable Life Media, Inc.)

環境配慮に徹底、米国で人気のスニーカー「Allbirds」が日本上陸

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目を引く大きなロゴも、ディティールの装飾もないシンプルさだ。2016年の設立以来、「Allbirds(オールバーズ)」のスニーカーは実用的で洗練されたデザインと、素材の変革で徹底的に環境に配慮したものづくりの姿勢が共感を呼び米シリコンバレーのIT企業家などを中心に人気が広がっている。その直営の日本1号店が10日、東京・原宿にオープンした。共同創業者で再生資源の専門家ジョーイ・ズウィリンジャー氏は「日本の文化的な背景と消費者の持続可能性への関心が融合しつつある時期だ」と日本市場に期待を寄せる。(サステナブル・ブランド ジャパン編集局=沖本啓一)

環境配慮も、実用性も、デザインも

Allbirdsのスニーカーを手に取ると、驚くほど軽く、柔らかい。「世界で一番履き心地がいい」とも評されるその靴は、ウールやユーカリ由来のパルプ、サトウキビでつくられている。スニーカーと言えばポリなどの化学素材を利用することが一般的だが、同ブランドで使用する原料は「ZQメリノ(持続可能なメリノウールの認証)」を取得した素材など、ほとんどが自然由来だ。

靴ひもは再生ペットボトル(1本のペットボトルから1本の靴ひもができるという)、梱包の90%以上が再生段ボールで、購入した靴の紐を持ち手として利用することで持ち帰りの梱包材を削減する工夫があるなど、細部にも徹底して環境に配慮している。会社として「認定Bコープ」認証を取得済みで、2019年には製造・販売のすべての過程でのカーボンニュートラルを達成したことを発表した。

「自然素材でスニーカーをつくる」というだけでなく、実用性、耐久性を兼ね備えたクラフトマンシップ、さらに洗練されたデザインが米シリコンバレーで共感を呼び、一気に人気が広がった。環境活動家としても知られる俳優のレオナルド・ディカプリオ氏が投資家として参画したことも話題になった。2016年の創業以来、世界に14店舗を展開しているが、15店舗目を10日、東京・原宿に開店。日本にも上陸した。

資源活用の技術をオープンソース化

Allbirdsのジョーイ・ズウィリンジャー共同代表

同ブランドの創業者は、再生資源の研究・開発の専門家であるジョーイ・ズウィリンジャー氏と、元サッカー選手でNZ代表も務めた、デザイナーのティム・ブラウン氏だ。

日本進出にあたって来日したズウィリンジャー氏は「若い頃から気候危機を身近に感じ、危機感を持っていました」と自身が再生資源に取り組むようになった経緯を話した。トップアスリートの経歴を持つブラウン氏と出会ったことで、デザイン面が洗練されたという。市場にあふれる「安く、早く、売り場で目立つような奇抜なデザイン」のスニーカーに対するソリューションを事業として展開できるようになった。

ブランドの中心に置く哲学は「サステナビリティ」だ。同ブランドによれば、日本での出店にあたっても、店舗設計の段階から排出CO2量を測定している。サトウキビを原料にし、ヒマシ油を活用したソールは、製造過程や購入後の消費者の利用によって、製品そのものがCO2を吸収するという。さらにその資源活用技術をすべて公開している。オープンソース化することで、世の中に環境配慮製品が増加することも狙う。米Amazonには同ブランドの類似品が並ぶが「Amazonはデザインではなく、技術を真似てほしい」とズウィリンジャー氏は肩をすくめる。

woolラインナップの素材はZQ認証メリノウール
ユーカリのパルプを原料にするTreeラインナップ

なぜ原宿か、なぜいま日本か

日本法人のAllbirds合同会社 竹鼻圭一代表

日本1号店の立地を原宿にしたことについて、「原宿では歴史的に、ファッション分野で多くの起業家が誕生しています。そして若者の自己表現が盛んな場所です。その『起業家精神』と『自己表現』は、Allbirdsにぴったりです」と日本法人代表の竹鼻圭一氏は話す。

「サステナビリティという価値観が日本で響くのか、議論を重ねてきました。台風被害やオーストラリアの火災など『人災』とも言える気候危機の現実が目の当たりにあり、若者ももう黙ってはいません。徐々に変わってきている、そのムーブメントの一部になれたらなと思っています」(竹鼻氏)

ズウィリンジャー氏も「日本の文化や感性は、自然や環境とのつながりがとても強いと感じています。政府がSDGsを推進している状況で、日本でサステナビリティの議論が進む流れと、文化的な背景が徐々に融合している時期だと思っています」と日本での展開に期待を寄せる。

2月には日本限定カラー製品を発表し、4月に国内でEコマース事業を展開する予定。Allbirdsは中間業者、卸売業者を通さない「Direct to Consumer(D to C)」にこだわる。そのため事業に占める割合の50%をEコマースとすることを目指すという。

素材の研究・開発にもまだまだ意欲を見せる。自然由来素材のAllbirdsのスニーカーは「廃棄後は土に還る」というが、「リサイクル可能にするよう技術の改善の余地があります」とズウィリンジャー氏は明かした。今後のラインナップ拡充にも期待ができそうだ。

Allbirds 原宿(オールバーズ原宿)
オープン :2020年1月10日(金)
東京都渋谷区神宮前1-14-34 原宿神宮の森ビル1階
JR原宿駅竹下口より徒歩1分
営業時間 :11:00 ~ 20:00 不定休
U R L :www.allbirds.jp
Instagram:@allbirdsjapan

沖本 啓一(おきもと・けいいち)

フリーランス記者。2017年頃から持続可能性をテーマに各所で執筆。好きな食べ物は鯖の味噌煮。