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ブランドが社会とつながる、持続可能な未来へ  「サステナブル・ブランド ジャパン」 提携メディア:SB.com(Sustainable Life Media, Inc.)

新潟でSBシンポジウム開催――新潟から始まる環境対策とSDGs/ESG経営

サステナブル・ブランド ジャパンは11月21日、新潟市の朱鷺メッセ新潟コンベンションセンターで、関東圏以外の地方都市では初めてのシンポジウムを開催した。「新潟県から始まる環境対策とSDGs/ESG経営~自治体・産業界から進める持続可能な地域社会づくりを目指して~」というテーマで、いまどのように環境やSDGs、ESGを考え、行動していったらよいのか、企業や自治体のリーダー・幹部らが講演、ディスカッションを行った。(サステナブル・ブランド ジャパン編集局)

基調講演:「緊急かつ大胆な変革を」

日刊工業新聞は創刊1915年の産業経済紙。国連がSDGsを採択した2015年9月25日付の紙面で1ページを割き、他紙に先駆けたSDGs特集を組んだ。2018年には世界で30社、うち日本から3社が指定された「国連メディア・コンパクト」創設メンバーの1社に選ばれている。登壇したのは同紙で数々のSDGsや環境関連の取材をする編集局の松木喬氏だ。

松木氏は「採択から4年が経過し忘れがちになるが、SDGsは『世界を変えるための』17の目標」だと強調。「当社はSDGsに取り組んでいる」ではなく「当社は世界を変えるために取り組んでいる」というのが本来のSDGsの取り組み姿勢だと「自戒を込めて」話した。

さらに本体はSDGs(持続可能な開発目標)ではなく「持続可能な開発のための2030アジェンダ」であり、そこには国連から企業に「参画を要請する」と明文化されていることを指摘。「国連からの要請に応えて取り組む、というのが正確な理解だと考えている」とした。企業が「当社は国連に必要とされている会社だ」と取り組みを表現する例もあるという。

「『誰一人取り残さない』というSDGsの前文はよく聞くが、そのフレーズの前に『我々は、世界を持続的かつ強靱な道筋に移行させるために緊急に必要な、大胆かつ変革的な手段をとることに決意している』と書かれている。SDGsは緊急に、大胆に取り組まなければならない。地域や中小企業ほど緊急・大胆な変革ができるのではないか」と力を込めた。

第1部:新潟県のカーボン・オフセット制度とは

シンポジウム開催地である新潟県は自治体として、カーボン・オフセット制度を推進する。新潟県環境企画課 地球環境対策室の石山央存氏が詳細を説明した。

新潟県は気候変動、地球温暖化に対し13のリーディングプロジェクトを推進する。そのうちカーボン・オフセット制度について「事業者がCO2の削減に取り組んでも、どうしても削減しきれない排出量がある。その場合、県が発行する森林整備に必要なコストをクレジットとして購入することで埋め合わせができる制度」と解説した。

基になった制度は国が運営する「J クレジット」だ。事業者のCO2削減量をクレジットとして発行、別の事業者が購入することでRE100などで再生可能エネルギーの調達量として活用することなどができる。Jクレジット同様の制度を県レベルで独自に運営するのは「新潟県と高知県だけ」だという。

新潟県の場合、プロジェクトの対象を森林保全と木質バイオマスに関する取り組みに限ることで目的を明確化し、クレジット購入事業者が課題への貢献をアピールしやすくなっていることが特徴だ。製品やサービスに購入コストの一部を上乗せすることで、市民も含めた県全体が経済的手法で課題に向かうシステムになるというわけだ。

石山氏は「これから排出する温室効果ガスをなるべく減らす『緩和』と、すでに起こっている気候変動にどう『適応』するかは、車の両輪として進めるべきだ」と強調した。日本において気候変動の影響が顕在化し今後さらに深刻化する恐れがある。新潟県は「緩和」と「適応」に軸を置き、さまざまなプロジェクトを進めているという。

第2部:雪氷(せっぴょう)冷熱を活用してデータセンターの環境負荷を大幅低減

データドック(新潟・長岡)はサーバーや通信設備などの設置、管理を行うデータセンターを運営する。同社はデータセンターが直面する社会課題をユニークな方法で解決しようとしている。

データセンター事業は大量の電力を消費する。例えば、東京都で消費される全電力の13%は都内のデータセンターが使用しているという試算もあるというから尋常な量ではない。当然、化石燃料由来の電力を利用することはCO2排出量の増大につながる。

同社の執行役員の小谷中一樹氏は「首都圏と大阪圏にデータセンターが集中していること、そして膨大な電力使用量。これらの社会課題を解決すると同時に長岡の地方創生を実現し、ビッグデータの活用を促進することを2016年の創業時に念頭に置いた」と話す。

そこで同社がつくった設備が寒冷地型データセンターだ。

建物の脇には長岡市内の公共施設で雪かきをした雪山があり、雪がとける熱を利用し建物内のサーバールームを冷やす。これにより空調で使用する電力を大幅に削減する。隣接する施設では関連企業が水耕栽培と水産養殖を同時に行う「アクアポニクス」を運用する。エネルギーと水を循環させる「エコなデータセンター」を構築している。

東京から約2時間で駆け付けられる立地にあり、東京電力と別系統の電力を最大限節約しながら利用し、地盤が良く安全で、ハイスペックな機器を運用することでデータ活用を促進する。創業時の思いをかたちにしたというわけだ。

寒冷地型データセンターは一般的な「省エネ型施設」の約2.7倍のエネルギー効率で空調を利用することができ、施設全体での消費電力削減によるCO2排出量削減効果は、同規模の一般的なデータセンターと比較して年間約2万8000トンになる試算だという。この排出量を、Jクレジットを利用してクレジット化、低価格化やCO2排出量の移転によるサービスの付加価値化を目指す。

第3部:企業の情報開示のあり方を考える

「ESGは気候変動や災害に直結する重要な問題だ」――。SB Japan Lab/サステナブル・ブランド国際会議ESGプロデューサーでサンメッセ総合研究所(Sinc)代表の田中信康氏はそう切り出し、世界のキーマンたちが発言した言葉を紹介した。

私たちは未来世代から基金を預かっている。彼らが温暖化に影響がある活動に、投資して欲しくないと考えているのは明らかだ
――ノルウェー政府年金基金(GPIFに次ぐ世界で2番手の年金機構) CEO
イングべ・スリングスタッド氏

(投資家が一斉に株の投げ売りをはじめる)ミンスキーの瞬間を避けなければならない
――イングランド銀行総裁/金融安定理事会議長 マーク・カーニー氏

脱炭素がパリ協定に明文化されたのは、実に重大。下がっていく株に投資しているところに金を預けている人は、ババを引くことになる
――OECD事務次長(当時)  玉木林太郎氏

日本はどの業界も対応が遅い。他が動き出すまでは待つ。リスクはとらない。金融界は早く対応を考えるべきだ
――前国際通貨研究所理事長(当時)  行天豊雄氏

これらはすべて4年前に発言されたものだ。ESGが注目されるようになったきっかけは2015年のパリ協定とSDGsの採択が挙げられるが、投資の視点では世界最大の年金基金であるGPIFが同年、国連責任投資原則(PRI)に署名したことが大きなできごとだった。現在はどうか。

石炭火力などへの投資から撤退するダイベストメント運動の機運が高まり、国際環境NGOの350.org によると、投資を引き揚げた機関投資家は約1000、運用資産総額は約688 兆円にのぼるという。第一生命や日本生命が石炭火力への投融資を中止しメガバンクも融資条件の見直しを行った。気候変動問題が訴訟になるケースも世界中で見られ、国内では仙台や神戸、横須賀が国に対して訴訟を起こした。

世界のリスク認識において環境、社会のリスクはグローバルフォーラムの最大の論点になった。社会の変化と企業の対応が求められる時代になり、ESGが対応のひとつの起点になっている、と田中氏は解説した。企業の株式の時価総額は、財務諸表等で把握できる財務資本だけでかつては80%把握できたが、現在では15%しか把握できないといわれている。この非財務情報の価値をどう可視化するのかが課題にもなった。

気候変動や環境に対する取り組みを指数にし、どう開示するのか。それをどのように経済循環の活性化に役立てているのかという指標をTCFDがガイドラインとして示している。この指標に賛同するかどうかも含め評価軸として活用されている。

リスクと機会を評価し、見えない資産がいかに財務・経営へのインパクトにつながるかを開示し測ることが、世界でも国内でも企業がもっとも力を入れる取り組みのひとつとなっている。

CSRからESG、そしてサステナビリティにどう変えていくか。経済循環の仕組みそのものが問われる時代になっていると田中氏は話した。

「長期視点で何を考えているかということをわかりやすく伝える企業が評価され、投資の対象になっている。ESGと長期的な思考は表裏一体だ」

第4部:危機感をもってSDGs/ESGへ取り組みを

左から日刊工業新聞の松木氏、データドックの小谷中氏、サンメッセ総合研究所の田中氏
SB-Jカントリーディレクターの鈴木紳介氏

パネルディスカッションでは松木氏、小谷中氏、田中氏がパネリストとして登壇し、SB-Jカントリーディレクターの鈴木紳介氏がファシリテーターを務めた。会場の参加者からは「SDGsやESGの取り組みを利益と直結している事例はあるか」「取り組みをアピールしすぎるとSDGsウォッシュと呼ばれるのではないか」といった質問が飛んだ。

松木氏は「SDGsの取り組みは、17目標ではなく169のターゲットで説明しなければ通用しなくなっている」と解説する。ビジネスを意識しすぎた結果、本来の取り組み姿勢が忘れられているのではないかと警鐘を鳴らした。

一方、田中氏は「ESGはビジネス戦略のひとつとして考えるべきだ」と断言する。「わかりにくい指標を可視化し、インセンティブ化しようというアクションは生まれつつある。それを続けるためにはビジネス戦略として取り組むことが重要だ」と喝破した。

それぞれの視点でSDGs、ESGを捉えるが、共通していることは「国内企業の取り組みにはまだ危機感が足りないのではないか」ということだ。例えば気候変動が進めば消費が縮小し、事業者がダメージを受ける。「将来の危機と事業の危機が企業の中で結びついていないのかもしれない」と松木氏は分析した。

鈴木氏は「サステナブル・ブランドは持続可能性と経済活動の融合をひとつの軸としている」とした上で「積極的に取り組みを発信すれば、コラボレーションが生まれると考えている」と話した。



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