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ブランドが社会とつながる、持続可能な未来へ  「サステナブル・ブランド ジャパン」 提携メディア:SB.com(Sustainable Brands, PBC)

連携を生み「サーキュラーエコノミーを活性化させる」 東京支部が発足

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世界140カ国で展開され、サーキュラーエコノミーを地域に根差した戦略や教育を通して実現することを目指すネットワーク「Circular Economy Club(サーキュラーエコノミークラブ)」の東京支部がこのほど発足した。東京・渋谷で最初のイベントが開催された。代表を務めるマクティア・マリコ氏は「サーキュラーエコノミーを実現するにはコラボレーションが大前提。ここに集まれば課題が共有でき、取り組みを進展させられると実感できる場をつくり、市場を活性化させたい」と意気込む。(サステナブル・ブランド ジャパン=小松遥香)

サーキュラーエコノミーは経済成長戦略

イベントは11月1日、国連が制定する「世界都市デー」に合わせ、都市におけるサーキュラーエコノミー戦略の設計と実装をテーマに開催された。最初に「サーキュラーエコノミーの現状」についてNPO法人ゼロ・ウェイストアカデミーの坂野晶氏が、基本的な考えや国際的な認識について話した。

「サーキュラーエコノミーは、すでにある資源をできる限り長く、最大限に有効活用し、それらの価値を利用の過程で減らさずに持続的に再生・再利用していこうというもの。

リサイクルすればいい、という話もあるが、リサイクルはサーキュラーエコノミーの要素の一つにすぎず、必ずしもサーキュラーエコノミーとイコールではない。

従来型経済は、海外でよく『take→make→waste』といわれ、環境から資源を採って、それを使い、廃棄するという一方通行で終わってしまう。企業が商品を売り、消費者が買って、最終的に自治体の回収に出すという方法では、企業には戻ってこない。そこに対してどうアプローチするかーー。地域や消費者の関係性をビジネスとしても再構築していく必要があるのではないか」

坂野氏は、持続可能な素材や製法でつくったジーンズを1年間リースし、その後循環利用するデニムブランド「MUD Jeans」や、人権・環境に配慮して製造され、利用者自らが分解してパーツを最新のものに取り換えられるスマートフォン「Fairphone」などを紹介した。

「サーキュラーエコノミーは環境対策ではなく経済成長戦略。資源を使い続け、生産を続け、資源が枯渇するというのは、環境だけでなくビジネスにとっても持続可能ではない。循環型にすることで、資源をずっと獲得し続けられるモデルに転換しようというのがサーキュラーエコノミー。欧州では、ビジネスだけでなく国の成長戦略としても注目されてきている」

傘のシェアリングでビニール傘の消費量を削減

続けて登壇したのは、傘のシェアリングサービス「アイカサ」を手掛けるNature Innovation Group(東京・渋谷)の丸川照司代表。同サービスは、LINEアプリを使い、駅や大型店舗などに設置されているシェアスポットで傘を1日70円で借りられるというもの。決済情報を登録しないと傘を借りられないので、きちんと返却されるという。同社はJR東日本スタートアップなどから3000万円を資金調達している。

「傘を買うことで何に対価を支払っているかというと、濡れずに目的地につくこと。やむを得ず傘を買うときに悔しさを感じるのは、余計なものを買っているから。雨の日の移動をサポートし、大量に消費されているビニール傘をなくしていきたい」

アイカサの事業を立ち上げた背景について、若い世代を中心にミニマリスト思考が高まっていること、持続的な社会を目指す流れ、シェアリングエコノミーとスマホ決済の急速な普及などを挙げる。現在、全国620カ所で7000本の傘が置かれており、利用登録者数は約5万8000人に上るという。

「都内で一度雨が降ると15万人がビニール傘を買う、といわれている。全国で考えると非常に大きな規模。都内で20-30万本のアイカサを置くことができれば、ビニール傘の消費量が半分になる。強度にこだわった傘を使っているが、最も傷みやすい布の部分を含めて今後も改良を重ねていく」

ワークショップで必要なアクションを見える化する

その後行われたワークショップでは、「リテール」「ホテル」「飲食」「イベント企画」の4つのテーマに沿ってグループを分け、それぞれの業種の課題や解決策、解決の障害になること、誰が動くと変わるのか、最終的に個人や会社として何ができるかなどを段階的に議論し、参加者全員で共有した。

飲食がテーマのあるチームでは、フードロスに焦点を置いた。解決の障害となるのは「消費者意識」。フードロスを知らない人や資源の有効利用のためにまとめて包装しようとしても「個別包装にしてほしい」という人もおり、意識の変革は簡単ではない。

「サステナブルだからと買うお客さんは少ない。美味しい、かっこいいの先にサステナビリティがあることで購入してもらえるのではないか。そういうストーリーが必要になる」(参加者)

ホテルがテーマのチームも消費者意識を解決の障害として挙げた。

「ホテルに使い捨てのアメニティを置いていないことがいいよね、と思う消費文化の形成がカギになる。アメニティを置くなら、サステナブルなもので、持ち帰って使えるものにする。有名ホテルなどが率先してそういう文化をつくってくれたら」(参加者)

マクティア代表は、「日本でもようやく盛り上がりをみせてきたサーキュラーエコノミーだが、導入の難しさを抱えている企業や人は多い。都市で循環経済を成り立たせるには、色んな人を巻き込んだコラボレーションが必要になる。ワークショップを通して、どういうアクションが必要なのかが可視化される。東京から出た課題を翻訳して英国本部に送り、そこから最終的に発表されるレポートもみなさんにも共有したい」と語る。

ロンドン出身で日本人の母を持つマクティア氏は5年前から日本で働き始めた。それまでは、日系の新聞社のロンドン支局に勤務。自身が関心のあるテーマが日本で発行される新聞で取り上げられないことに疑問を持ったことをきっかけに、日本への関心が高まったという。現在、一般社団法人Social Innovation Japan(ソーシャル・イノベーション・ジャパン)の代表を務め、ペットボトルの利用削減を目的に、日本全国8000カ所以上の給水スポットを案内する無料アプリ「MyMizu」の普及を行う。

今後の展開について、「オリンピックは大事なテーマ。自治体や法律、人材育成についても深堀りしていきたい。経営者のサーキュラーエコノミーへの認識を高めることも重要だ。サーキュラーエコノミークラブはどなたでも参加いただける場所。業務で携わっていなくても、興味があるという方に参加してもらいたい」と話した。