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東京メトロ、視覚障がい者向けの新たな音声道案内サービスを導入へ

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東京メトロは視覚障がい者向けの新たな道案内サービス「shikAI(シカイ)」導入の検討を始めた。 検証の結果を見極め、問題がなければ遅くとも今年度中にユーザーへの公開や導入駅の拡大をする。「shikAI」は足元の黄色い点状ブロックに表示されたQRコードに、専用アプリ入れたスマートフォンをかざすと音声案内が流れる仕組み。検証は有楽町線の新木場駅と辰巳駅で行う。 両駅は2020年東京オリンピック・パラリンピック会場の最寄り駅。東京メトロの企業価値創造部の工藤愛未主任は「(大会までに)安全・便利に駅を利用できるようにしたい」と話す。(サステナブル・ブランド ジャパン編集局=沖本啓一)

「改札です。直進4メートル」「階段です。17段降り、踊り場があり、さらに17段降ります」「2メートル前方、左側にトイレ、右側に誰でもトイレがあります」――。

駅構内の点状ブロック上の100箇所以上に設置されたQRコードに、専用のアプリをインストールしたスマートフォンをかざすと、利用者の侵入方向や今いる地点によって「右左折」「目的地までの距離」などの適切な案内が流れる。東京メトロが2017年から開発・検証し、導入の検討を始めた「shikAI」は、音声による駅構内ナビゲーションシステムだ。

視覚障がい者は誘導用ブロックと白杖(はくじょう)を頼りに駅を利用している。行き先が明確に案内されるわけではないため不慣れな駅では迷いやすく、不安も大きいという。「shikAI」ではアプリ上で「改札」「トイレ」などの行き先を指定することができ、スマートフォンを地面に向けたまま誘導用ブロックに沿って歩けば、QRコードが設置された地点で音声案内が流れる。アプリの操作も音声読み上げで行うことができる。

白杖を持ち、もう片方の手でスマートフォンを地面にかざして歩く。検証に参加した松尾政輝さん
ホームから案内に従い階段へ。検証に参加した高橋玲子さん

公開での導入検証は地下鉄が営業し人が行き交うなか、スタッフに付き添われた視覚障がい者によって行われた。新木場駅の改札外からホームに移動し、電車に乗り、隣の辰巳駅の改札を出る。検証に参加した松尾政輝さんがスムーズに移動を完了した一方、同じく高橋玲子さんは、ホームから改札へ向かう階段の入り口がわからずに戸惑う場面も。

「ホームでは端に近い点状ブロック上を歩くので、アプリから警告音が流れる。その警告音なのか次の案内なのか、聞き取れない場所があった」(高橋さん)と、実際に利用する上での課題はまだあるものの「目的地までの距離や、階段の上り下り、残りの段数もわかるので、すごく安心感がある」(高橋さん)、「自分の歩幅の感覚とアプリの通知を合わせると、思った通りに歩くことができた」(松尾さん)と利用者の感触はいい。

開発を担当したPROGRESS TECHNOLOGIES(東京・江東)の小西祐一代表は「将来的には画像認識など(AI技術を)組み込むことを考えている。(駅以外の)地点Aから地点Bへの移動にも活用を模索している」とサービスを発展させる考えを話す。

東京メトロの企業価値創造部の工藤愛未主任は「もっと混雑した状況での安全性など、実用化に向けてまだ確認しなければならないことはある」と話す。「shikAI」の検証期間は4カ月~今年度中を目途にし、問題がなければアプリの一般公開やほかの駅でのQRコード設置を行う。工藤主任は「新木場駅、辰巳駅は東京オリンピック・パラリンピック会場の最寄り駅。大会を前に誰もが安全・便利に駅を利用できるようにしたい」と、オリンピック・パラリンピック開催前の一般公開を目指す。

沖本 啓一(おきもと・けいいち)

フリーランス記者。2017年頃から持続可能性をテーマに各所で執筆。好きな食べ物は鯖の味噌煮。