SUSTAINABLE BRANDS JAPAN のサイトです。ページの先頭です。

SUSTAINABLE BRANDS JAPAN のサイト

ブランドが社会とつながる、持続可能な未来へ  「サステナブル・ブランド ジャパン」 提携メディア:SB.com(Sustainable Life Media, Inc.)

サステナブル・レストランを格付け 日本でも本格始動

飲食店の食材調達や運営のサステナビリティを格付けする、英国発のNPOサステイナブル・レストラン協会(SRA)が日本で始動した。同協会は、食のアカデミー賞と称される「世界のベストレストラン50」でサステナブル・レストラン賞の評価も行う。日本の組織として活動を始めた日本サステイナブル・レストラン協会は本部と連携し、格付けやキャンペーンを通して、国内の食の課題解決にも取り組み、食の持続可能性を日本に根付かせていく方針だ。同協会のメンバーに設立の経緯や今後の取り組みを聞いた。(サステナブル・ブランド編集局=小松遥香)

英国で2010年に設立されたSRAは、同国を中心に8000店舗以上の飲食店が加盟する。格付けやキャンペーンなどを通して、生産者や飲食店など食品産業全体と消費者の食のサステナビリティに対する意識の向上、行動の変化を生みだすことを目指している。

会員には、チェーン店から社員食堂、ミシュランで星を獲得したレストランまでさまざまな飲食店が名を連ねており、食品産業と社会全体を底上げしようとする狙いが見てとれる。SRAは今後、ギリシャやハンガリー、チリ、香港、台湾など世界にその活動を拡げていこうとしているという。

日本での展開

日本での立ち上げは先月末。日本サステイナブル・レストラン協会(以下、SRA-J)の代表理事を務め、SRAを日本に持ち込んだサステナビリティ・CSRの専門家 下田屋毅氏は設立の理由についてこう話す。

「日本は、欧州と比べると、まだ食のサステナビリティに対する取り組みが進んでいない。これまで企業に対する働きかけを行ってきたが、消費者の意識が変わることも重要だ。レストランは消費者に近い存在であり、農家や漁師など生産者をつなぐ存在。そのレストランが『媒体』となることで、消費者にサステナビリティの重要性を理解してもらい、サステナビリティに配慮したレストランを選んでもらうことで、生産者やサプライヤーの取り組みも変わっていく」

SRAの格付けでは、フェアトレードやアニマルウェルフェア(動物福祉)、持続可能な漁業などの「調達」、雇用やコミュニティへの配慮などの「社会」、水資源の管理やCO2の排出量、自然エネルギーの使用、食品廃棄などの「環境」の主に3つの観点をさらに10項目に分けて調査する。飲食店は、項目ごとの細かい質問票に回答し、必要な書類を提出する。総得点によって、星の数は決まる。

下田屋氏によると、英国などではレストランの入り口などに格付けのステッカーが掲示されているという。

SRA-Jでは現在、格付け「Food Made Good Sustainability Rating」のパイロットプログラムの実施を進めている。格付けの本格的な始動は今秋を予定している。

このほかに、同協会は地球の持続可能性に配慮した一皿を広めるキャンペーン「One Planet Plate (ワン・プラネット・プレート)」の日本での実施にも着手している。英国WWFとSRAの協働で、2018年に英国で立ち上がった同キャンペーンは、「地産地消の推進」「より多くの野菜を使用」「低カーボンフットプリント」「(倫理的に)より良い肉の使用」「持続可能な水産物の調達」「フードロスの削減」のうちの1つ以上を満たす一皿のレシピをSRAのグローバルサイトで掲載するというもの。

SRAのホームページに掲載されているワン・プラネット・プレートの一例

日本での展開について、下田屋氏は「手応えはある。特に、国内でも『ベストレストラン』に選ばれるような飲食店は関心が高い」と語った。SRA-Jは今後、英国やその他の国々のSRAと連携していく。

日本の食文化を未来に残せるか

SRAを日本の飲食業界に導入する重要性について、SRA-J創設メンバーの一人で、自身もシェフであり、サステナブルフードディレクターコンサルタントの松山喬洋氏は、「日本の飲食業界に、ESG(環境・社会・企業統治)の概念を取り入れることはとても重要。飲食店にとって『美味しさ』は利益に直結するもの。『美味しさ』をどこまで先の未来に残せるのか考えると、環境に配慮しなければ、美味しい食材も食文化も残せない」と語る。

松山氏は「食材の価格が上がり続けていることは大きな問題で経営リスク」と指摘する。背景には、気候変動や、バイオマス・エネルギーの需要が高まることでトウモロコシの先物取引価格が上昇していることなどがある。

「飲食店は目先のリスクヘッジではなく、もっと先を見据えたビジョンが必要になる。そのためには、環境・社会・企業統治の視点を持たなければならない」

日本でも、格付けやキャンペーンを全国のさまざまな形態の飲食店で展開していく考えだ。松山氏は、SRAを導入するもう一つの重要性についてこう話す。

「有機野菜や伝統野菜を使い、食の持続可能性に配慮している飲食店でも、光が当たっていない店は多い。そういった店舗に改めて光を当てることは、日本の食文化の豊かさをもう一段上げることにつながる。それは日本の幸せをもう一段上げることにもなる。食の未来を救いたい」

来年夏に控える東京五輪・パラリンピックの頃には、都内でもSRAの格付けを掲げるレストランを見かけるようになるだろう。

小松 遥香

Sustainable Brands Japan 編集局デスク。アメリカ、スペインで紛争解決・開発学を学ぶ。「持続可能性とビジネス」をテーマに取材するなか、自らも実践しようと、2018年7月から1年間、出身地・高知の食材をつかった週末食堂「こうち食堂 日日是好日」を東京・西日暮里で開く。趣味は、大相撲観戦と美味しいものを食べること。