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ブランドが社会とつながる、持続可能な未来へ  「サステナブル・ブランド ジャパン」 提携メディア:SB.com(Sustainable Life Media, Inc.)

「サーキュラーエコノミーをどう実現するか」新時代探る530 conference 2019が問いかける

サーキュラーエコノミー(循環経済)をテーマに5月末、東京・渋谷で開催された「530 conference 2019」。企業やNPO/NGO、自治体、フリーランスや学生など幅広い年齢層の約300人が参加した。ミレニアル世代中心のコミュニティ「530week」が主催したイベントでは、「企業はどう戦うべきか」「今の時代に求められている豊かさとは」などと問いかけながら、これからの経済や社会を共創する、時代の新しいつくり方を提案していく会議となった。(サステナブル・ブランド ジャパン編集局=小松遥香)

企業とNPO/NGOとの連携が新たな潮流を生む

「社会課題に対していかにアンテナを張るか。早くアンテナを張るほどリスクマネジメントになり、新たなビジネスチャンスになる。これからは、社会課題への関心が高い若い人たちに選ばれる企業になることが重要になる」

基調講演に登壇したモニター デロイト ジャパンリーダーの藤井剛氏はそう語った。

そして、NPO/NGOについて「社会課題の最前線にいる」とし、「NPO/NGOは日本企業にとってオープンイノベーションの対象になる。新規事業を考える時に、当たり前のようにNPO/NGOと連携するという風になると、社会は大きく変わっていくのではないか」と話した。

藤井氏は、こらからの企業の戦い方についても触れ、「機能や品質、価格で戦い、競合他社とも戦うという従来の方法では限界がある。エゴシステムからエコシステムへと、会社の戦い方を変えていかなければならない。大義を持つ、ルールをつくっていく、取引先や他社、政府、NPO/NGOと一緒に世の中の空気や市場をつくる仕掛けをしていくという戦い方が求められている」と指摘した。

このほか、「530 conference 2019」では「再生型サプライチェーン」「回収とリサイクル」「製品寿命の延長」「シェアリング・プラットフォーム」「サービスとしての製品」の5つをテーマにしたトークセッションとワークショップが別々の会場で同時開催された。

環境課題に取り組むことが、企業を持続可能に

「再生型サプライチェーン」に登壇したのは、大川印刷(横浜市)の大川哲郎社長とスターバックス コーヒージャパン サプライチェーン本部 品質保証部店舗衛生・環境推進チームの普川玲氏。

1881年に創業した大川印刷は、1990年代に環境経営に転換した。「『環境問題』は、実は人権と平和に関する問題だ」と大川社長は切り出し、2013年、大阪の印刷会社で印刷機に付着したインクを早く洗浄するために使用する有機溶剤に含まれていた化学物質が原因で社員16人が胆管がんを発症した事例を紹介した。

大川印刷では、石油系溶剤を含まないインキで94%の印刷物を印刷し、森林の国際認証「FSC認証」の紙で61%の印刷物を印刷しているという。「同業他社の工場と比べ『空気がきれい』と従業員が話している」と、大川社長は胸を張った。工場の電力は、再生可能エネルギーを100%使用している。

大川社長が、環境経営に取り組む背景には苦い経験がある。老舗企業の6代目として跡を継ぎ、経営が窮地に陥った時期があった。「経営を持続可能にしていくために、環境課題に取り組む」という信念は、この時に導き出した答えだった。

スターバックスの普川氏は、店舗で使った牛乳パックやコーヒー豆かすの循環型リサイクルについて紹介した。

同社では、牛乳パックをすべてリサイクルし、店舗の紙ナプキンとして再利用している。さらに、コーヒー豆かすを2通りの方法でリサイクルする。全国1400店舗中250店舗のみでの取り組みというが、特殊な技術を用いて牛の飼料にし、その牛乳を店舗で使用するほか、堆肥にして野菜を栽培し、その野菜をサンドイッチに使用している。

コーヒー豆かすのリサイクルは、普川氏がコスタリカのコーヒー農園を訪れたことがきっかけで始まった。「手間をかけてつくられたコーヒー豆が、日本に来て飲んですぐに捨てられることが残念で、何かに使えないかと思った」と説明した。

大川社長の話と同じく、普川氏の話もまた環境負荷を下げる事業活動を行うことがサプライチェーン上で働く「人」を思いやる行動に繋がっていることを示していた。

シェアリングエコノミー時代の、新しい豊かさ

「シェアは、これからの時代において『幸せ』に欠かせないワードになる」

内閣官房シェアリングエコノミー伝道師の石山アンジュ氏は、「大量生産・大量消費、資本主義が最も浸透した社会のなかで疲弊や限界が生まれ、『本当の豊かさや幸せはなにか』という問いが生まれた。そして、新たな豊かさを基準にしたイノベーションが発達してきた」と話した。

シェアリングエコノミーが広がる背景には、テクノロジーの発展によって、世界規模で多くのものをシェアできるようになったことがある。「個人が企業を介さずに、個人と個人があらゆるものを貸し借りしたり、売買したりする経済を生み出せるようになった」と石山氏はいう。

シェアリングエコノミーの利点について、「経済的なもの以外に、この経済に参加することで、人々の幸福度や生きがいの向上に寄与できる」とし、「個人主義が行き渡った世界では、誰かに共感してもらいたい、同じ価値観を持つ人とつながりたいという思いが生まれる。個人主義からみんな主義に移ってきているのではないか」と指摘。「豊かさのシフトが起きている」と話した。

共に登壇したのは、フードシェアリングサービス TABETEを運営するコークッキング川越一磨社長。TABETEは、飲食店や販売店でフードロスになる恐れのある料理をアプリで出品・購入できるサービスを提供しており、年間1兆9000億円もいわれるフードロスによる経済損失の解決策の一助となっている。

TABETEについて、「安売りなどのブランディングはしていない。困っている店をユーザーさんに助けてもらう『マッチングのプラットフォーム』」と川越氏は説明。現在、同サービスの利用者数は12万人に達している。

川越社長は、「意味消費の時代になっている。ものが溢れている時代に、意味のないものにお金は払わない。なにを食べるか決まらない日にTABETEを見ると、困っている店があり、買う意味を見出すことができて良いという人がいる」と話した。

石山さんは、日本でシェアリングエコノミーがさらに拡大するためには、個人間の物のやりとりにおいて発生するトラブルに対する懸念や見知らぬ人とシェアをすることへの不安感を払しょくする必要があるという。

そして、法整備の必要性についても触れ、「企業がサービスを提供して買ってもらうという概念のもとで法律がつくられている。個人が何かを有償で提供してお金を得るための法律が不十分。個人間の経済に対して、まずは国として、ルール整備が必要なのではないか」と投げかけた。

企業の事業モデルをサーキュラーエコノミー化するワークショップ

トークセッションと同時開催されたワークショップでは、NPO法人ゼロ・ウェイストアカデミー(徳島・上勝町)の坂野晶理事長がファシリテーターを務めた。坂野理事長は今年1月に開催されたダボス会議の共同議長に、若手リーダーの一人として選ばれた。

ワークショップは、サントリーやコロナ・エキスラ、渋谷キャスト、リコー、花王が提供した実際の事業モデルをサーキュラーエコノミー化するというもの。

坂野理事長は、「サーキュラーエコノミーはイノベイティブ(革新的)でクリエイティブ(創造的)でファンな(楽しい)もの。ぜひ創造力を働かせ、楽しみながらワークショップをしていきましょう」と呼びかけた。

参加者らは、自ら企業を選ぶことができ、それぞれのテーブルで他の参加者や各企業の担当者を交えて、「企業のコアバリューは何か」「サーキュラーモデル実現のために鍵になるヒト/モノ/コトは」といった質問の並ぶワークシートをもとに話し合いながら、事業をサーキュラーモデルに落とし込んだ。最後は各グループの代表が事例を発表した。

同ワークショップは、日中を通して3回にわたり繰り返し実施された。参加者らはいくつかの企業の事例をサーキュラーエコノミー化することで、自分自身にもサーキュラーエコノミー思考を落とし込むことができる仕組みになっていた。

小松 遥香 (Haruka Komatsu)

Sustainable Brands Japan 編集局デスク。アメリカ、スペインで紛争解決・開発学を学ぶ。「持続可能性とビジネス」をテーマに取材するなか、自らも実践しようと、2018年7月から1年間、出身地・高知の食材をつかった週末食堂「こうち食堂 日日是好日」を東京・西日暮里で開く。