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途上国で環境課題解決のフォーラム、日本企業が主導――宮内淳・日本UNEP協会理事

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東南アジアを中心とした途上国の各国で、日本企業が主体となり環境課題を解決するフォーラムを開催する――。そんな画期的なプロジェクトが動き始めた。発端は国連環境計画(以下、UNEP)の普及活動をする日本の一般社団法人、日本UNEP協会の発案だ。同協会の宮内淳理事に、プロジェクトの真意と日本企業のグローバル化について聞いた。

UNEPとは――
国連環境計画(United Nations Environment Programme)。環境問題に取り組む国連の中核機関として1972年、国連人間環境会議(開催:ストックホルム)の決議により設立(UNEP日本語情報サイトより抜粋)。UNEPの意思決定機関である国連環境総会(UNEA)は、全国連加盟国によって構成されている。日本UNEP協会はUNEPの活動を理解、普及拡大し、新たなプロジェクトを日本から発信するために、2015年に一般社団法人として設立された。

――日本UNEP協会発の、新しいプロジェクトが立ち上がりつつあるとうかがいました。

宮内:はい。グローバルの環境課題の解決に向けて、東南アジア各国を中心に、複数国でフォーラムを開催するという計画です。まだ案の段階(編集局注:4月中旬に取材)で発表できることは少ないのですが、日本UNEP協会はその中核を担う役割になります。

――UNEPは日本企業にどのような期待をしているのでしょうか。

宮内:UNEPは日本企業の技術力を高く評価していますが、もっとグローバルに進出してほしいと考えているようです。ですので、日本の製品、ノウハウを開発途上国に行き渡らせるということに力を注いでいます。

計画の重要なポイントは、日本の企業が主体となることです。日本UNEP協会の会員企業が、それぞれの持つ取り組みテーマを途上国各国で開催するフォーラムで発表し、コネクションを作り、その成果は企業のCSR活動の成果に直結します。このプロジェクトにより、企業は各国の行政と直接つながりを持つことができます。

フォーラムのテーマは多岐にわたる予定です。有力な候補としては、水俣病を経験している日本だからこそノウハウのある「水銀フリー」です。ただ「水銀を使わない」だけではなく、「使ってしまった水銀をどう処理するか」といった課題に対しても、日本の研究や技術、取り組み事例を役立てることができます。

プラスチックの課題が話題になっていますが、それ以外にもグローバルの環境課題は山積みです。開発途上国で、日本企業が課題解決の活動を本格化させるきっかけにもなります。

――途上国、日本国内の双方に向けて、課題の存在を広く認知することにもつながりますね。企業が参画するメリットは他にもあるのでしょうか。

宮内:日本企業が海外に進出する際に障害のひとつとなるのが、海外政府とのパイプを持っていないことです。ナイロビで3月に開催された第4回国連環境総会には、日本からの初参加として、日本UNEP協会だけが展示ブースを出しました。環境課題の取り組みという中では、日本企業の海外進出は遅れています。

海外の行政とパイプを持つということは上場企業でも難しいのです。今回、動き始めたプロジェクトはその機会をつくり、日本企業の環境課題の解決力をグローバルで生かす土壌となると考えています。

――企業側は乗り気になっていますか。

宮内:はい。まず日本UNEP協会の会員企業が中心となって協議会をつくります。この協議会は、いずれはUNEP本体とも連携を取りながら進む計画です。企業の反応はとてもいいです。キーポイントは「企業が考え、自ら動くこと」ですので、省庁主導ではなく、スケジューリング等も含めて、あくまで企業が主体となります。

企業と国の間にUNEP協会が入ることにより、途上国政府と日本企業が対等に話をすることができるようになりました。環境課題解決の動きや日本企業の取り組みを、世界に広げるためのスタートに立てたと思います。

――日本企業のグローバル化について、宮内さんはどのようにお考えですか。

宮内淳・日本UNEP協会理事

宮内:そもそも、国際化とはどういうことでしょうか。海外で政治家になった日本人はほとんどいません。東南アジアの政治家で多いのは、華僑です。海外の国営企業や地場産業のトップにも日本人はほとんどいません。それでは日本が本当に国際化したとは言えません。

これは持論ですが、国際化とは、文化を広げることです。バブル期に、日本は他国の文化を買うことに注力し、文化を売ることをしませんでした。「カラオケ」や「和牛」を世界に広めたのは中韓の企業、あるいはカナダやオーストラリアの企業です。

今の時代はまた、日本の企業が世界に出るチャンスです。本当のグローバル化とは何かを企業が改めて考える時期だと思います。海外の行政や市民と日本企業が、より密接な結びつきを持つことが、双方のメリットになるのではないでしょうか。