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NGO「東京五輪で違法木材」、SMBCなど関与か

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建設が進む新国立競技場

新国立競技場など2020年東京五輪関連施設の建設で使用された輸入木材が、東京五輪組織委が定めた持続可能性に適合せず、違法木材であった可能性が高いと国際NGOが指摘した。報告書は三井住友フィナンシャルグループ(SMBC)、住友林業、王子ホールディングスの関与を指摘し、改善を求めた。(富永周也)

この報告書は、環境NGOレインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN、本部・米サンフランシスコ、日本代表部・東京都新宿区)などが共同で11月12日に発表した。RANのほか、WALHI(インドネシア環境フォーラム)など3つのNGOが作成にかかわった。

東京五輪と木材調達問題を追及してきたRANは「五輪は人類の達成と世界の連帯を祝う祭典。世界の遠い場所で起きている、人権侵害や環境破壊の上に建設されるものではない」とコメントした。

融資する銀行や投資家、取引企業に責任

報告書は二つあり、それぞれ「守られなかった約束」、「ペリラス:コリンド、土地強奪と銀行」とのタイトルが付いている。

「守られなかった約束」報告書では、韓国・インドネシアの複合企業コリンド・グループが新国立競技場など五輪関連施設向けに供給した輸入木材に焦点を当てた。この輸入木材が東京五輪の定めた持続可能性に適合せず、違法木材であった可能性が高いことを指摘した。

報告書はまた、コリンド社の違法行為や人権侵害への関与に融資し、そこから利益を得る銀行と投資家に責任があることも強調。インドネシア及び日本の関係当局に調査を含め、緊急かつ強力な措置を提言した。

さらに、悪質行為とのつながりが認められた東京五輪当局、インドネシアと日本の銀行や企業にはコリンド社との取引の即時解消を求めている。

「ペリラス」報告書では、コリンド社の違法行為や人権侵害への関与に融資し、そこから利益を得ている銀行と投資家に責任があることを強調した。その中で、「三井住友フィナンシャルグループ、住友林業、王子ホールディングスがコリンド社の事業拡大に重要な役割を果たしてきた」と指摘した。

コリンド社への財務調査や海外ペーパーカンパニーの調査では「さらに多くの反倫理的行為や違法行為の事例が明らかになった」という。中にはシンガポールのペーパーカンパニーを通じて融資契約や財務諸表に関する虚偽の情報や、誤解を招く情報を提供したことも含まれている。

三井住友銀行は今年6月、石炭火力発電、パーム油、森林の3セクターについて融資方針を制定した。だが、RANのハナ・ハイネケン氏は「SMBCは東京2020ゴールドパートナーであるにもかかわらず、コリンドの子会社に融資しただけでなく、コリンド社の取引先の住友林業や合弁パートナーの王子ホールディングスの主な資金提供者でもある」としている。

さらに、「東南アジアの熱帯林をリスクにさらしている企業への最大の資金提供者だ」と批判した。SMBCの融資方針についても「森林と人権をしっかり守るために強化されなければならず、顧客企業の事業だけでなく、そのサプライチェーンについても考慮に入れる必要がある」と警鐘を鳴らした。

報告書の調査結果は、NGOによって6月から11月にかけてコリンド社に提示された。これに対しコリンド社は「全ての法律および規制に完全に準拠して事業を行っている」と主張するにとどまった。報告書にはコリンド社のほか、他企業の回答も記載されている。

オランウータン生息地の木材も

東京五輪の会場建設について調査した「守られなかった約束」では、コリンド社の合板工場が「違法かつ持続不可能な方法」で伐採した木材を調達し、同社工場から供給された合板がコンクリート型枠として東京五輪施設の建設に使われていたことを裏付ける証拠がまとめられている。

今年5月、コリンド・グループのバリクパパン・フォレスト・インダストリーズの工場で製造された合板が、東京五輪バレーボール会場となる有明アリーナで見つかり、この合板は住友林業によって供給されていたことが判明した。

コリンド社がインドネシア環境林業省に提出した申告書によると、同工場の2016年と2017年の製造原料となった木材の約4割が、森林の土地利用転換による木材で、中にはボルネオオランウータンの生息地からの木材も含まれていた。

ボルネオオランウータンは国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストで「近絶滅種」に指定されている。RANは「五輪施設の建設に使われたコリンド社の合板には、北マルク州で違法伐採された木材が含まれている可能性もある」と指摘している。