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スタバ、京都議定書20周年に一斉消灯でエコ再考

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スターバックス コーヒー ジャパンは京都議定書採択20周年にあたる11日、同店の約600店舗や東京スカイツリーなどのランドマーク施設を一斉消灯するイベントを開催した。九都県市と連携し、明かりがないことを楽しむことでエコやライフスタイルの再考を呼びかけた。同社の水口貴文CEO(最高経営責任者)はSB-Jの取材に対し「前向きなインパクトを社会に広げることが、ブランディングにも重要」と、同社のサステナビリティへの思いを語った。(オルタナ編集部=沖本啓一)

全国600店舗と32のランドマーク施設がライトダウン

カウンターとショーケース以外の明かりが消された店内

消灯イベント「 “Nothing” is “Charming”(ナッシング イズ チャーミング)」が行われたのは全国のスターバックス600店舗と、スカイツリー、横浜ランドマークタワーなどの九都県市の32の協力施設。当日の19時~20時の間の約30分間、最低限の明かりを残し、看板や店内照明などを消灯した。九都県市内の481店舗だけで、参加者は2万人以上に上った。当日は限定コースターの配布や、消灯時に使用するランタンの制作ワークショップも行われた。

スターバックス コーヒー ジャパン広報部の佐藤瞳さんは次のように説明する。「京都議定書をきっかけに、世界では『DO YOU KYOTO?』と言えば『環境に良いことをしていますか?』というエコの合言葉になっています。その合言葉に応える形で、2015年11月、京都市とスターバックスが連携し、エコアクションを提案・発信する「YES, WE DO KYOTO!」プロジェクトを立ち上げました。このプロジェクトの、市民参加型ワークショップで生まれたエコアクションの一つが、“Nothing” is “Charming”です」

最初は「スターバックスから椅子をなくし、コミュニケーションを活性化する」というアイデアだったが、2016年に「明かりをなくす」イベントになり、今年初めて、京都から全国に広げて開催することになった。

SNSでの投稿も呼びかけた。インスタグラムではイベントハッシュタグ(#nothingischarming #ライトダウンポートレイト)で合計1300件以上の写真が投稿されている。

今回のイベントの他、「コミュニティ コネクション」と呼ばれる、全国の店舗が自由に発想して地域の人とつながりを築く活動がある。昨年度は全国の店舗で約8000回実施したという。同社の環境への取り組みは「エコや環境について、スターバックスらしく、みんなで楽しみながら考え、実践する機会を提供することを意識」(佐藤さん)して企画、実施している。

その思いを水口貴文CEOに聞いた。

「ポジティブなメッセージでブランドへの共感を」

スターバックス コーヒー ジャパンの水口貴文CEO(最高経営責任者):消灯された上野恩賜公園店で

――消灯イベントというコーヒーに直接関わらないサステナビリティの取り組みのメリットは何でしょうか。

水口:コーヒー自体に関しても倫理的な調達や環境面での基準クリアなどの取り組みをしていますが、環境面でのリーダーシップを取ることは事業全体でのミッションです。それをコーヒー以外でも表現することは、当社にとって自然なことです。

この活動が、直接的にどれくらいの収益になるのか、わかりません。しかし視点を広く持てば、お客様やパートナーから共感してもらえる会社であり続けることが、とても重要です。スターバックスというブランドに大きな意味で共感して頂き、店舗に足を運んでもらうきっかけになるということが大切です。

ランタン制作のワークショップでは、従業員(パートナー)が積極的に参加者と関わっていた

――人と人、店舗と地域を繋げる取り組みはとてもスターバックスらしく感じます。

水口:当社のCSRを実施するのは専門部署のみではありません。今回のイベントで言えば、参加した約600店舗のパートナーが全員で実行し、パートナーもイベントを楽しんでいます。人と人の繋がりを広げるということが、全パートナーのバリュー(価値観)として根付いています。

この場で体験してもらうことがとても大事ですが、発信も積極的に行いたい。社会にいきなり大きなインパクトを与えることは難しいかもしれません。しかし、水面に投げた小さな石が波紋を広げるように、インパクトが広がっていけばと考えています。

――今後の取組みへの姿勢をお聞かせください。

水口:頑張るというというよりは自然に、一歩一歩、着実に前進し、メッセージを発信し続けたい。「今どこにいるか」よりも、少しずつでも前に進むことが大切です。

「ライフスタイルを振り返るきっかけになりたい」

消灯でどれだけCO2排出量を抑えられるか、ということは、イベントの主眼ではない。水口氏の言う「インパクト」とは、間接的であっても人から人へと広がり、継続して社会に根付く影響のことだ。

インタビューの最後に、水口氏はワークショップで制作した折り紙のランタンを手に取り、「折るのは結構難しかったです」と笑った。「モノがあふれ、モノ以上に情報があふれる今の時代に、『何かがない』時間は、大切で楽しい。そういう時間をあえて持つことによって、『ある』ことへの感謝ができます。ライフスタイルを振り返って、『水道を止めよう』とか『電気を消そう』といった、誰かの小さな行動のきっかけになればすごくいいと思います」(水口氏)

沖本 啓一(おきもと・けいいち)

オルタナ編集部
好きな食べ物は鯖の味噌煮。