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福岡の「市民発」の企業、持続可能な地方創生目指す

福岡県嘉麻市で先ごろ発足した「株式会社かま」の株主は嘉麻市の市民だけで構成している。事業計画の内容は再生エネルギー事業、嘉麻市内でのライドシェア普及事業など大規模かつ多岐に渡っているが、あくまで「市民会社」を自称し、市民目線で事業を遂行していくのが狙い。原動力は代表の有田栄公氏が培った人の縁だ。現在構想中の20年計画で目指すのは、「持続可能な真の地方創生」のモデルケースとなることだ。(オルタナ編集部=沖本啓一)

社員21名の中小IT企業、有田電器情報システム(福岡・嘉麻)の代表取締役社長・有田栄公氏は20年来、嘉麻の「町おこし」に携わってきた。内外からボランティアを集め、イベントやお祭りを企画した。市民からの寄付金や自治体、商工会からの補助金を利用し、「イベントが盛り上がれば人は増える」と考えていた。

しかし、どれだけ祭りに人が集まり、ボランティアから「充実していた」という声があっても、2006年に4万5千人だった嘉麻市の人口は、2017年に3万7千人に。「このままでは10年後、市の財政も成立しなくなり、故郷がなくなるかもしれない」(有田氏)と、危機感が募った。

「それまでやってきた祭りなどの町起こしは、その場の満足感はあったが、誰の懐も痛まなかったし、『自分の余った時間』を使うだけで、誰にも責任がなかった」と有田氏は話す。強烈な反省があった。

変化のきっかけは財務省福岡財務支局が昨年9月に主催した「九州の未来力2030~地域金融ワークショップ」だった。集まったのは嘉麻市の金融機関、経済団体、民間企業等の40代の中堅世代。有田氏も参加し、6人が1班となり地域の経済や、地域金融の課題や地域の発展を話し合った。このワークショップでの出会いが、「株式会社かま」設立に繋がった。

「打ち上げ花火のような催事ではなく、『カネ』の再投資を繰り返す事業として地域を盛り上げなければ、持続ができない。そのことを痛烈に感じた」(有田氏)

ワークショップでは地域金融の力をどう地域の発展に生かすか、話しあった。それは「嘉麻市での事業構想」だった。金融や通信など、それぞれが得意な分野を生かした事業計画を出し合った。発表した内容は、財務省福岡財務支局の後押しで実現に向かって動き出す。

事業は嘉麻市民のみが株主となる「市民会社」で行う。これによって会社の成長が市民の幸福に直結する。市内の生活をより持続可能にし、海外ともシームレスに繋がる地域とする、再生可能エネルギー事業やライドシェア導入事業、地元農産品の越境EC(国をまたがる、海外向けのネット通販)などの事業に取り組む。

資金は地域金融からの融資に頼る。資金額が大きければ、翌年度の事業の再投資が可能になり、事業は持続型の地方創生となる。少子化で苦しむ地域銀行などにとっても、新たな融資先の選択肢として「市民会社」が増えることはメリットになる。

「事業は20年単位の長期計画で行う。マニュアル化し、日本中の同じような地域にノウハウを伝える。まずは『かま』が、実験場となる」と有田氏は話す。観光資源のない地方で、土を耕すように街を活性化し、生活自体に魅力を持たせる「持続可能な真の地方創生」のモデルケースを目指す。

有田氏は「ワークショップでの出会いが奇跡的。紆余曲折はあると思うが、必ず成功すると考えている。地方創生と企業経営に違いはない」と確信に満ちた声で話した。

沖本 啓一(おきもと・けいいち)

オルタナ編集部
好きな食べ物は鯖の味噌煮。