• 公開日:2017.10.05
生ゴミをほぼ完全分解、間伐材も有効活用:掛川

    「キエーロ掛川」。容器の中の土に生ゴミを埋める。

    静岡県掛川市と地元のNPO法人「時ノ寿(ときのす)の森クラブ」は4月から、「キエーロ掛川普及事業」を行っている。「キエーロ」はバクテリアの力で土に埋めた生ゴミをほぼ完全に分解するコンポストの一種。掛川市民がキエーロを購入する場合、購入費用の8割以上を市が負担する。この半年間で市内の240戸が導入し、取り組みは定着しつつある。容器には地元森林の間伐材が使用され、地域の課題解決にも一役買っている。(オルタナ編集部=沖本啓一)

    コンポスト(生ゴミ処理器)には段ボールを使用するタイプや、土中のミミズを利用するタイプなどがあるが、「キエーロ」は黒土などに住むバクテリアが生ゴミを分解する。適切に使用すれば、匂いもほぼ出ず、虫も寄ってこない。容器の中の土に生ゴミを埋めておけば、通常3-4日で完全に分解され、消えてしまう。

    「キエーロ」を普及させる取り組みは全国の自治体で実施されている。掛川市では継続的に行っている家庭ゴミ減量の取り組みの一環として、4月に採用された。地元のNPO法人「時ノ寿の森クラブ」との協働で、市民への啓発、告知とアフターケアを市が担当し、受注、生産、発送を「時ノ寿の森クラブ」が担う。購入費用の24000円のうち、20000円の補助金が出るため、掛川市民であれば4000円で導入が可能だ。

    掛川市役所環境政策課の岡本佳通さんは「市とNPO法人が役割を分担することで、ユーザーが個別に補助金の申請をしなくてもよくなり、使う人も楽に導入できます。地域にある森林保全の課題解決の助けになればと、時ノ寿の森クラブに声をかけました」と経緯を説明した。

    間伐材を使用した「キエーロ掛川」の製作は地元住民による手作業。

    掛川市の中心部から15kmほど離れた山間部、大沢集落は、1970年代に人が離れ、廃村となった。手入れがされなくなった字名「時ノ寿」の森は長らく放置され、荒れていた。集落の最後の一戸の住民だった松浦成夫さんは、森の再生を目指し、2006年に「時ノ寿の森クラブ」を発足した。

    「小規模な森林では林業が産業として成立せず、森林が放置されてしまう。手入れのために間伐を行っても木材の使い道がなく、流通にもコストがかかる」と松浦さんは話す。これまでにも「森の集会所」の建設などで、間伐材の需要をつくり、森林の保全活動につなげる取り組みを多く行ってきた。「キエーロ」の容器に間伐した杉を使用することでさらに需要拡大を見込む。

    掛川市では家庭から出るゴミのうち25%が生ゴミだ。松浦さんは「各家庭の生ゴミをほぼゼロにすることで地域のCO2排出量を大幅に減らせます。時ノ寿の活動とリンクすれば、調達から社会的課題の解決に貢献するプロダクトになります。社会の中で間伐材を使ってもらうにはデザインが必要です。このような取り組みを掛川市以外にも広めたい」と意気込む。

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