第1回グリーン・オーシャン大賞表彰式を開催
第1回グリーン・オーシャン大賞・金賞を受賞したボーダレス・ジャパンの鈴木雅剛・代表取締役副社長(右)と、審査員を務めた長谷川直哉・法政大学人間環境学部教授
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大賞にボーダレス・ジャパン
オルタナはこのほど、社会課題起点のビジネス創出事例を表彰する「グリーン・オーシャン大賞」の表彰式を開いた。大賞には、9つの社会的事業を展開するボーダレス・ジャパン(東京・新宿)が輝いた。同大賞は、2017年に創刊10周年を迎えた雑誌「オルタナ」の記念事業として、法政大学イノベーション・マネジメント研究センターの協力を得て実施された。
「グリーン・オーシャン戦略」とは、オルタナがつくった造語。持続可能な開発目標」(SDGs)において推奨されている、「アウトサイド・イン」(注1)のアプローチで、新たなマーケットの開拓と社会的課題の解決の「両立」に取り組むマネジメント方針を指す。
オルタナでは2016年12月から2017年1月にかけ、公募した。集まった事例の中から、長谷川直哉・法政大学人間環境学部教授、後藤貴昌・サステナブル経営研究所所長、森摂・オルタナ編集長らが審査した。大手企業部門と中小企業部門に分けて、それぞれ金賞(大手・中小1社。この内大賞1社)・銀賞(大手・中小2社)・銅賞(大手・中小2社)の計10団体と優秀賞・優良賞23団体を決めた。
大企業と中堅・中小企業、合計33社が受賞した=5月31日、法政大学ボアソナードタワースカイホールで
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大手部門金賞には衛生改善に挑むLIXILが受賞
大賞/金賞に選ばれた、ボーダレス・ジャパン(東京・新宿)は、「社会起業家のプラットホーム」を掲げ、9つの事業を展開している。バングラディシュを筆頭に、アジア諸国の課題をビジネスの手法で解決するエネルギッシュな活動が評価された。
大手企業部門の金賞には、「2020年までに、1億人の衛生環境を改善する」というコミットメントを軸に、プラスチック製の簡易式トイレ「SATO (Safe Toilet/安全なトイレ)」を開発している、LIXIL(東京・江東)が選ばれた。途上国の女性や子どもに安全な衛生施設を届けるプロジェクトを展開する。
優良・優秀賞に選ばれた企業による5分間プレゼンテーションも行われ、各社の多彩な事業が紹介された。(写真はセールスフォース・ドットコムのディレクター遠藤理恵氏)
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パネルディスカッションでは、社会課題をビジネスに取り込む各社の実践やその戦略などが議論された。写真奥から、セールスフォース・ドットコムの伊藤孝執行役員、LIXILの富田常務役員、ボーダレス・ジャパンの鈴木副社長、長谷川教授、オルタナの森
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ブランド戦略と社会的課題の解決を両立する挑戦
表彰式後にはパネルディスカッションを行った。テーマは、「企業は社会課題をビジネスにどう取り込むか」。
ボーダレス・ジャパンの鈴木雅剛・代表取締役副社長は「ソーシャルインパクトを最も重視している。新しいマーケットを考え抜き、ソーシャルの観点とビジネスの観点をつなぎ合わせ、新たなビジネスモデルを構築するということを繰り返してきた」と、自社の事業創出のあり方について説明した。
LIXILの取り組みについて、パネリストの長谷川教授がマネジメント層の「経営構想力」について質問すると、同社の富田健介・常務役員(ソーシャルトイレット部部長)は、「SATOのユーザーは将来マーケットになる潜在ニーズがある。衛生環境が改善し、将来的な発展が見込める国々に暮らす未来の顧客に対し、所得向上に応じてソリューションを提供し、ブランドを作っていることを信じている」と語り、長期的かつグローバルなブランド戦略と社会的課題の解決を同時ににらんだ戦略のもと、事業を推進している点について言及した。
受賞者の一覧・事例紹介は、「オルタナ48号」にて詳報されている。
(注1)アウトサイド・インアプローチとは