
資源循環のためのインフラ構築などを手がけるECOMMIT(エコミット、鹿児島県薩摩川内市)は2026年1月、CCO(Chief Circularity Officer/最高循環責任者)を新設し、上席執行役員の坂野晶氏が就任した。同社によると、CCOの設置は日本初。サーキュラーエコノミーへの取り組みが世界的に加速する中、広義のサステナビリティではなく「資源循環」に特化した役職をあえて置くことは、同社の強い意思表示でもある。
2007年の創業以来、回収・選別・再流通のインフラ構築に18年を費やしてきたECOMMIT。「捨てない社会をかなえる」というビジョンのもと、生活者の行動変容から政策提言、ものづくりの変革まで、その射程は多方面に広がっている。坂野氏にCCO就任の意義や同社の展望を聞いた。
CSOではなく「CCO」をあえて選んだ理由
——日本初のCCOを新設されました。多くの企業が置くCSOとの違い、そしてCCOの役割について教えてください。
CSOはサステナビリティ全般を会社の中で推進していく広い役職です。その中にサーキュラリティという要素は内包されるとは思うのですが、今回あえてそこに特化し、突き詰めることを明確化したというのが表面的に分かりやすい変化です。
われわれの本業自体がまさに資源循環のインフラをつくるということで、サーキュラーエコノミーの推進は全社を挙げてやっているものではあります。ただその中でも、われわれが向かっていく方向やどうあるべきなのかを、事業としても組織としても、より先鋭化していくことが必要だと思っていました。そこを担う役割として、あえてサーキュラリティという名称にして打ち出したのが今回のタイミングです。

私にはCCOとして、大きく2つのミッションがあります。1つはインパクトの定義と対外コミュニケーションです。2024年末に初めて公開した「インパクトプログレスレポート」がその一例で、会社として何を目指していて、現在地はどこで、どんなインパクトを起こしていくのかを社会に向けて発信しています。
もう一つが「パブリックアフェアーズ」です。行政や省庁との対話、業界団体等を通じた政策提言、自治体との連携など、特定のステークホルダーに向けてコミュニケーションを行っていく仕事です。CCOというポジションで、これらをより明確に、より先手を打ってやっていきます。
——社外への効果はどのように捉えていますか。
「サーキュラーといえばあそこ(ECOMMIT)ね」と言ってもらえるようになることは大事なポイントだと思っています。私自身、いろんな「帽子」を持ちながら、広くサーキュラーを進めるための活動を続けています。「坂野晶がほぼイコール、サーキュラー屋さん」という感じで、言い方を選ばずに言うと、ECOMMITがやっている中に私のミッションがあるというよりは、私が目指しているサーキュラーの実現の中の大事なプレイヤーの一つとしてECOMMITがある、という視点で普段生きているんです。
CCOという役職は海外で少しずつ出てきてはいるのですが、日本ではまだなかった。そこを開拓し、知見を共有していくことも大事な役割だと思っています。
リユースにこだわる理由
——事業の全体像について伺います。フリマアプリや一般のリサイクル業者との違いはどこにあるのでしょうか。
他のリユース業態は、例えば高級ブランドのバッグなど、もうかると分かっているものを扱うケースが多い。われわれが取り扱っているのは、金額に換算すると比較的小さいけれど、まだ状態が悪くないから次の誰かに使ってほしい、というようなものです。これまでであれば、ごみとして捨てられてきた範囲のものまで幅広く多品目を扱っています。

1個ずつの商品価値は小さくても、大量に集めて大量に選別し、欲しい人たちにマッチングする。その仕組みをつくることで、全体としてビジネスが成り立っています。ただそのためには、選別の場所も持たなければならないし、トラックも必要で、たくさんの人が要る。投資が先行する、かなりアセットが重たいビジネスモデルなんです。
だからこそ他に(同業者が)あまりいない。ビジネスとして難しいと知っているから普通はやらない。そこをやり切ってきたのが、18年間の積み上げです。
リサイクルではなくリユースにこだわる理由も明確です。リサイクルの場合、素材を切り刻んでほぐして再生するプロセスで大量のエネルギーがかかりますし、どうしても素材のロスも出る。一方で衣類や日用品がそのままの状態で次の人に渡れば、エネルギー負荷や、焼却と比較した場合のCO2排出量は圧倒的に小さい。それが環境的なメリットです。
事業性という面では、リサイクルは出口、つまり再生材を売る側でいまだにお金になりにくいのが現状で、どうしても入口側(集める側)からコストを回収しないと回らない。リユースは売れる先がしっかりあるので、集めるところではむしろお代をいただかなくてもよく、場合によっては、回収拠点に買取という形で少しお渡しすることも可能です。だから回収拠点を一気に広げられる。これがリユース事業の構造的な強みです。
「パストする」を当たり前に
——消費者向けサービス「PASSTO(パスト)」について教えてください。
われわれの「敵」は同業他社ではなく、「ごみ箱」なんです。今捨てられているものを循環に回すためには、燃やすごみに出すよりも循環に出す方をより身近にしなければならない。
CEOの川野輝之がよく言うのですが、買うのは本当に楽になりましたよね。ワンクリックで翌日に物が届く時代に、手放す側が全然楽じゃないのはなぜだ、と。環境省の調査でも、着終わった衣類をどうするか聞くと、7割近くの人が燃やすごみに出すと答えていて、その理由は「手間がかからないから」。だから生活動線の中に循環の選択肢を増やすことが私たちの使命です。

PASSTOは「PASS TO(次の人に渡す)」を縮めた造語です。商業施設やマンション共用部への回収ボックス設置から、LINEヤフーと連携したスマートフォン一つで自宅まで集荷に来てくれる仕組みや、自治体と組んだリユース品回収の日まで、複数の形で展開しています。現在は全国約6000拠点まで広がりました。
さらに「パストする」という動詞としても定着させたいと考えています。「ググる」のようなイメージで。インスタグラムなどでも、自分のパストのストーリーを語ってもらう取り組みを積極的に進めています。
アパレル業界の「川上」を変える
——企業向けの取り組みについても聞かせてください。
最近力を入れているのが「CaaS(カース)=Circularity as a Service」という新モデルです。これまでの資源循環は、静脈産業(回収・リサイクル側)と動脈産業(ものをつくる側)がある種分断されていましたが、今のサーキュラーエコノミーの大きな流れは、ものをつくる側が最後まで循環に責任を持つようにしましょう、ということです。
われわれはそこに向けてサービスを提供するイネーブラーを目指しています。具体的にはアパレルブランドの店頭回収ボックスの裏側を担い、集まった洋服を選別して、そのブランドの基準に従って認定中古品として店頭に戻す仕組みをつくっています。公開パートナーでいうとアダストリアさん(GLOBAL WORKなどを展開)などと連携しています。公開していないパートナーブランドも多数あります。

1着が2回、3回と売れるようになれば、ブランド側のもうけ方も変わるし、ものづくりも変わります。極端に言うと、なるべく薄くすぐ擦り切れるように作るより、耐久性を上げた方が確実に回収されて2回目の収益につながる。バージン資源の大量投下や大量消費・大量廃棄の構造的な解決につながる可能性がここにあると思っています。
複数の「帽子」を使い分ける
——坂野さんは徳島県上勝町でのゼロ・ウェイストの活動など、公共・非営利セクターでの実績も豊富です。一般社団法人「ゼロ・ウェイスト・ジャパン」の代表理事も務められています。そんな中、ビジネスの現場に身を置く意義をどう考えますか。
地域でできることをとことんやるアプローチは今も続けていますが、一つの施策を入れて変化が見えるまで3年、地域全体を変えるには10年ぐらいは考えないといけない。数を増やすことが難しいし、限界もある。だからゼロ・ウェイスト・ジャパンとしては、資源循環に特化して地域に伴走する人材の育成も始めます。
ECOMMITがやっていることは、地域にとっては一つのソリューションかもしれませんが、同時に100地域で展開できるポテンシャルがある。それがまさにビジネスの力です。圧倒的なスピードで広げていく可能性を持っている。
そして対政府のコミュニケーションでも、複数の帽子を使い分けられるのが強みです。個社の意見として政府に伝えるよりも、業界団体や非営利の立場からの声のほうが受け入れられやすい場合もあります。ゼロ・ウェイスト・ジャパンとして、よりニュートラルに社会全体の課題を語り、ECOMMITとして具体的な実装を示す。いろんな立場を変えながら、どこをどう動かすと良いのかを考えてやれるのが一番の強みですね。
2030年、オセロがひっくり返る
——最後に、今後の展望を聞かせてください。
物流や選別拠点のDX化を進め、東京サーキュラーセンターを効率化のモデル拠点にしていくことが直近の大きな課題です。現在の選別フローをDX化するだけで効率が4倍ほどになると試算しており、モデルができれば横展開も見えてきます。

また海外に目を転じると、われわれのリユース商品を一番買っていただいているのがタイをはじめとするアジア諸国の取引先です。現地でのさらなる循環を実現するためにも、海外展開は長期的な方向性として必須と考えています。
資源循環の分野は今まさに「潮目」が近いと感じています。例えば環境省が地域の資源循環施策への支援を増やしていて、そういう支援があると、プレイヤーが増えて、お金の流れができてくる。地域をオセロの駒に例えるなら、2030年には2、3ラインぐらい、一気にひっくり返っているのではないでしょうか。
ECOMMITとしては、日本で年間約50万トン廃棄されている衣類のうち、現在われわれの回収量は1〜2パーセント。それを8〜10パーセントまで引き上げたい。そのためには自社だけでは到底無理で、ものをつくる側とも連携しながら、社会全体で循環を設計していく必要があります。CCOというポジションで、そこに向かって先手を打っていくことが私のミッションです。
| 【参考サイト】 PASSTOについて https://www.passto.jp/ 自治体のゼロ・ウェイスト推進を支える伴走者育成プログラム「ZERO WASTE FUTURES」 https://zwjapan.org/news/zerowastefutures/ |
眞崎 裕史 (まっさき・ひろし)
サステナブル・ブランド ジャパン編集局 デスク・記者
地方紙記者として12年間、地域の話題などを取材。フリーランスのライター・編集者を経て、2025年春からサステナブル・ブランド ジャパン編集局に所属。「誰もが生きやすい社会へ」のテーマを胸に、幅広く取材活動を行う。












