
共働き世帯の増加や調理の時短ニーズを背景に、家庭用冷凍食品の市場は年々拡大を続けている。一方で、食の選択肢の広がりはフードロスやプラスチックごみの増加といった環境課題にも直結する。冷凍食品業界全体でサステナビリティへの取り組みが加速する中、味の素冷凍食品は新たなスローガン「えらぶだけでサステナブル」を発表した。その背景にあるのは、生活者が普段の暮らしを変えることなく、同社の商品を選ぶだけで環境貢献につながる仕組みを構築するという考え方だ。
消費者の負担をなくす「ノーチェンジ&ノーストレス」
味の素冷凍食品は2026年3月18日、東京都内で記者発表会を開催。冒頭、執行役員の鳥垣淳子氏が登壇し、新スローガン策定に至った背景を明かした。「環境貢献への取り組みは、言うは易し、行うは難し。それを企業側からのアプローチによって、生活者が自然に環境に貢献できる仕組みをつくることはできないか。それが、私たちの環境配慮の取り組みを進化させる出発点だった」
この方向性を打ち出すに当たり、同社はワークショップを通じて生活者のインサイトを探った。戦略コミュニケーション部長の源田達章氏が紹介した調査では、環境への取り組みに対するポジティブな意識がまず挙がる一方、深掘りすると「犠牲を払う」「変わらないといけない」「実感がない(無力感)」「スケールが大きすぎる」といったネガティブな声が続いたという。
この分析から生まれたコンセプトが「ノーチェンジ&ノーストレス」だ。「変わらないといけない」という意識を「変わらなくていい」へ転換し、生活者が普段通りの暮らしを続けながら自然に環境への配慮につながるプラットフォームの構築を打ち出した。

取り組みを可視化するため、同社は環境アクションを「いつもの暮らし」「やさしい社会」「未来の環境」という3つのバリューに整理。さらに、企業目線の数値目標だけでなく、「自分にもできるかも」「無理なく無駄が減っているかも」といった消費者の実感度を測る独自の「お客様実感スコア目標」を新たに設定し、2030年度までに各項目で50%以上の達成を目指すという。
ギョーザ国内4工場へ拡大する「資源循環スキーム」
続いて、具体的な環境アクションの進化として資源循環スキームの拡大が発表された。原材料部長の高橋政光氏が登壇し、その詳細を説明した。
同社は2021年度から4年連続で、国内全6工場から排出されるキャベツの芯や成型不良などの食品残渣(さ)の資源化率100%を達成し、飼料や肥料として再利用してきた。しかし今回の取り組みは、単なる資源化から循環へと一歩踏み込んだ内容だ。工場の製造過程で生じる食品残渣を堆肥化・飼料化し、その堆肥を使って地域のパートナー生産者がキャベツやニラを栽培。それを再び、原材料として工場で活用するというサイクルだ。

高橋氏はこのスキームの難しさについて、「生産者にとっての栽培リスクや輸送コストの問題などのハードルがあり、実現には生産地との日頃からの深い連携と信頼関係が不可欠だった」と率直に語った。2023年の四国工場でのたまねぎへの適用を皮切りに、九州工場、中部工場と段階的に拡大。2026年1月には関東工場でもスタートし、「AJINOMOTO ギョーザ」を製造する国内4工場の全てで資源循環スキームが整った。高橋氏は「まだ全体の使用量から見るとごく一部だが、着実に範囲を広げ、持続可能な調達の一つのモデルとして定着させていきたい」と力を込めた。
「食料システム法」4計画全て認定は国内唯一
さらに源田氏から、農林水産省が定める食料システム法に基づく計画認定制度において、同社が国内初となる4計画全てでの認定を取得したことが報告された。
同法の計画認定制度は、食品の付加価値向上を目的に「生産者との安定的な取引関係の確立」「流通の合理化」「環境負荷の低減」「消費者に選ばれるための情報提供」の4分野を対象とする。資源循環スキームの拡大に加えて、トラックなどで行われている貨物輸送を環境負荷の小さい鉄道や船舶へと転換する「モーダルシフト」の推進、さらには自然冷媒への転換などの取り組みが評価されたという。
また、消費者への情報提供と教育の一環として、学校法人角川ドワンゴ学園との共創プロジェクトも発表された。若い世代に環境活動を自分ごととして捉えてもらい、次世代の視点から価値ストーリーを形成していくことを目的とする。教育機関との連携プログラムは同社初の試みという。
業界全体で加速するサステナビリティへの挑戦
持続可能な社会の実現に向けた動きは、冷凍食品業界全体で加速している。例えばニチレイフーズは、パッケージに使用されるプラスチックの削減や、工場設備における自然冷媒機への切り替えを計画的に実施。また、ニッスイは水産エコラベル(MSC・ASC)認証の取得を推進するなど、各社がそれぞれの強みを生かした環境対策を講じている。

こうした業界の潮流の中で、味の素冷凍食品が今回打ち出した「えらぶだけでサステナブル」は、生活者に負担を強いることなく、日々の消費行動そのものを環境貢献に直結させるという点で非常に特徴的だ。一企業の環境対策という枠を超え、農業生産者を含むサプライチェーン全体の巻き込みや、次世代の教育、そして消費者の日常に溶け込む形でのアプローチは、今後の食品業界におけるサステナビリティの新たなスタンダードになり得る取り組みとして注目される。
眞崎 裕史 (まっさき・ひろし)
サステナブル・ブランド ジャパン編集局 デスク・記者
地方紙記者として12年間、地域の話題などを取材。フリーランスのライター・編集者を経て、2025年春からサステナブル・ブランド ジャパン編集局に所属。「誰もが生きやすい社会へ」のテーマを胸に、幅広く取材活動を行う。













