• 公開日:2026.02.25
貨物も環境も守る。JALカーゴサービスが現場主体で挑んだ、バイオマスストレッチフィルムの導入
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players#15_株式会社JALカーゴサービス

JALグループは2050年のCO2排出量実質ゼロ(ネット・ゼロエミッション)実現に向け、機内・ラウンジから貨物領域まで新規石油由来の使い捨てプラスチック削減策を推進しています。同社グループ貨物輸送部門の中核会社である株式会社JALカーゴサービス(以下、JALカーゴサービス)でも、環境配慮素材への切り替えを進めてきました。今回、これまで機能面等の問題から切り替えが難しかった貨物固縛用ストレッチフィルムについて、環境配慮の観点から、マスバランス方式によるバイオマス素材(バイオマス・エボリュー®)を採用したストレッチフィルムを導入しました。

今回は、現場の課題と素材選定、試験のプロセス、導入後の変化について、JALカーゴサービスの土屋さん、大山さん、JALカーゴハンドリングの清水さんにお話をお伺いしました。

話し手

土屋 雅之(つちや まさゆき)
株式会社JALカーゴサービス 企画部 経理・調達グループ グループ長

大山 ゆり子(おおやま ゆりこ)
株式会社JALカーゴサービス 企画部 経理・調達グループ リーダー  

清水 雄大(しみず たけひろ)
株式会社JALカーゴハンドリング 成田運送第2部 輸出第2グループ グループ長  

JALグループの環境方針と、物流現場が抱えるプラスチックの課題

JALグループは、2050年のCO2排出量実質ゼロ(ネット・ゼロエミッション)実現に向け、機内・ラウンジ・空港・貨物などあらゆる領域で新規石油由来の使い捨てプラスチック削減に取り組んでいます。特に「3R(Reduce・Reuse・Recycle)+1R(Redesign)」の考え方を軸に、機内・ラウンジ領域では2019年度に1967t使用していた使い捨てプラスチックサービス用品の削減を進め、2024年度末時点でその96%を削減しました。すでにラウンジ領域では2023年度に対応を完了し、機内領域でも2025年度までに新規石油由来の使い捨てプラスチック全廃という目標を達成する見込みです。

また、空港・貨物領域では、2025年度までに「環境配慮素材配合へ100%変更」という目標を掲げ、代替素材の検討と導入が進められてきました。この貨物領域で環境対応の取り組みを推進しているのが、成田空港をはじめとした主要空港で貨物・郵便のハンドリングを担うJALカーゴサービス社です。

※環境配慮素材:バイオマス・再生プラ・認証紙など、新規石油由来の原料不使用もしくは低減したアイテム

大山さん JALカーゴサービスは、JALグループの国際貨物運送部門の中核会社として、多種多様な貨物と郵便のハンドリングを行っています。日本航空便だけでなく、受託している約40社の外国航空会社の国際貨物・郵便も取り扱っており、1日に百数十便の膨大な量の航空物流に対応しています。

多くの貨物を扱うことは、それだけ多くの資材を消費することでもあります。だからこそ、JALグループの中期経営計画ローリングプラン2025で掲げている「貨物資材への環境配慮素材配合100%」の達成に向けた取り組みの1つとして、2025年10月、マスバランス方式のバイオマス素材によるストレッチフィルムの導入を開始しました。

マスバランス方式:原料から製品への加工・流通工程において、ある特性を持った原料(例:バイオマス由来原料)がそうでない原料(例:石油由来原料)と混合される場合に、その特性を持った原料の投入量に応じて、製品の一部に対し、その特性の割り当てを行う手法。(環境省バイオプラスチック導入ロードマップ)

取材に応じた、(左)土屋さん、(右)大山さん

「変えたいけれど変えられない」。ストレッチフィルムの素材転換の壁

「貨物資材への環境配慮素材配合100%」という目標に向けて、どのようなことが課題となっていましたか?

大山さん 輸出入貨物には、実に多くの石油由来のプラスチック資材が使われており、環境負荷の観点からも改善が求められる領域でした。

そして、実際に環境対応を進める中で、これまで大きな壁となっていたのがストレッチフィルムでした。他のプラスチック資材の多くは再生材などに切り替えることができたのですが、ストレッチフィルムだけは機能面の課題もあり、環境配慮素材への切り替えがなかなか進まない状況でした。

(左)土屋さん(中央)大山さん(右)清水さん

清水さん 貨物の積み付けや保管時の固縛に使用するハンドリング資材であるストレッチフィルムは、異なる形・サイズ・重量の貨物を安全に運ぶために欠かせない資材です。重さや形状がバラバラで荷姿が一定でない航空貨物において、強度・伸縮性・粘着性・透明性を兼ね備え、どのような形にも柔軟にフィットできるストレッチフィルムは、貨物をダメージから守るための落下防止措置として、欠かせない存在です。

土屋さん 当社では環境に配慮したストレッチフィルムへの切り替えを目標に、再生材が含まれた素材などをいくつも取り寄せて現場で試してきました。しかし、再生材を配合するとフィルムが切れやすくなったり、伸びが悪くなったりしたため、「どのような形にも柔軟にフィットして貨物を固縛する」というストレッチフィルムの機能を十分に果たさず、安全性と作業効率の面で素材転換が難しい状況が続いていました。

清水さん 現場では日々の業務で廃棄せざるを得ない大量のプラスチックごみを目の当たりにし、環境配慮の取り組みの重要性を肌感覚で理解しているので、こうした状況に対して、私たち自身も歯がゆい思いがありました。

貨物資材から出る大量のプラスチックごみ

具体的には、どのようなハードルがあったのでしょうか。

清水さん 従来のストレッチフィルムが有する、伸縮性・粘着性・透明性・強度といった機能がどれかひとつでも欠けると、「貨物を安全かつ迅速にお客さまへお届けする」という私たちのミッションが果たせなくなります。これらの機能を全て維持させながら、環境配慮素材に切り替えるという点に大きなハードルがありました。

土屋さん さらに、「軽さ」と「薄さ」もストレッチフィルムに求められる重要な要素です。しかし、その全てを兼ね備える製品が、なかなか見つかりませんでした。当社で使用しているストレッチフィルムは非常に薄いものです。しかし再生材をフィルムに配合すると、厚みが約3倍になるものが多く、フィルムの機能性や作業効率の課題に加え、ロール状で納品されるフィルム1本当たりの巻数が減ってしまいます。それに伴い、巻き芯(コア)や梱包材が従来よりも必要になるため、環境に配慮した取り組みを進めようとしているのに、逆に廃棄物が増える、という矛盾が生じることも分かりました。

大山さん さらに、当社は成田において10箇所程度へ個別納品する必要があり、その納品スキームも障壁の1つになりました。環境配慮製品を取り扱っておられるフィルムメーカーさまの中には、複数箇所に且つランダムな全拠点への納品対応は難しいとのお声をいただきました。

バイオマスストレッチフィルムの使用状況を見学する様子

マスバランス方式によるバイオマス素材をストレッチフィルムに採用した経緯を聞かせてください。

大山さん きっかけは、本社から「三井化学さまのマスバランス方式を使った資源を使用することで環境に配慮したストレッチフィルムができるのではないか」と紹介をされたことで、「突破口になるかもしれない」という期待が生まれました。

土屋さん ただ、最初は正直不安も感じており、「本当に従来と同じ機能が出るのか」「お客さまの荷物を安全に運べるのか」という懸念は拭えませんでした。

そこで三井化学さまや、フィルムメーカーさまと何度も打ち合わせし、試作品をつくり、現場で徹底的に実証テストを重ねた結果、これなら導入できるという確信を持つに至りました。

清水さん これまでに、おそらく10種類以上の環境配慮型ストレッチフィルムのサンプルを現場で実際に試してきましたが、今回のバイオマス素材のストレッチフィルムは、従来のものと「使用感がほぼ変わらない」ということが最大の評価ポイントでした。作業の途中で切れないですし、運ぶ時や巻く時の重量感と手ごたえも従来品と変わらないため、作業スピードが落ちない。現場ではそれが重要なポイントです。

実際に現場からは「現在使っているものと遜色なく使えている」との評価が寄せられました。

大山さん 採用の決め手は大きく3つあります。1つ目は、従来品と遜色ない使用感が得られるということ。2つ目は、SAF(Sustainable Aviation Fuel:廃食油などのバイオマスを原料とする持続可能な航空燃料)を製造する際に副産物として得られるバイオマスナフサを原料として有効活用できる点。SAFと同じ由来の植物原料からできたバイオマスストレッチフィルムを、航空貨物の資材として活用できることは、SAFを使用する私たちにとって社会的な観点からも意義深いことです。そして3つ目は、原料供給が安定しており、長期的に使い続けられることです。言ってみれば、環境配慮と安全・確実な物流品質を両立できる、現時点で最適な選択肢であると考えました。

バイオマスナフサ:再生可能なバイオマス(植物など生物由来の有機性資源)から生成された石油由来ナフサ相当の炭化水素(炭素原子と水素原子からなる化合物)。

導入後に見えた変化と現場の声。年間50tのCO2排出量削減へ

実際にバイオマス素材のストレッチフィルムを導入した所感を聞かせてください。

大山さん 今回、マスバランス方式を採用したバイオマス素材のストレッチフィルムを導入したことによって、CO2排出量は年間で約50t削減できる見込みです。これは、中期経営計画ローリングプラン2025で掲げている「貨物資材への環境配慮素材配合100%」の達成につながる、大きな前進だと捉えています。

清水さん 現場では実証テストの時と同様に、「(従来のものと)本当に変わらない」「普通に使える」という声も上がっていますが、ほとんどのスタッフは従来品との使用感の違いについて語ることはありません。毎日頻繁に使用する資材なので、使い勝手が悪ければ、必ず改善の要望があがってくるはずですが、本格導入後も「改善要望がない」ということが、現場からの高評価の証ではないかと思います。

土屋さん 素材が変わっても作業スピードが落ちていないことが、プロジェクトの成功を物語っていると感じます。今回の導入で「バイオマス素材でも品質を落とさずにここまでできる」という実績ができたので、現場と一緒に、次の改善やさらなるサステナビリティ推進に向けた対話がしやすくなったことも、成果の1つだと思います。

(Photo Courtesy of JAL)

導入後、社内外からはどのような反応がありましたか?

土屋さん 今回の取り組みについては、社外からも高い関心を寄せていただいておりますが、まだ認知度が低いと感じていますので、JALグループが「貨物領域でも環境配慮を徹底している」という点で、国際的なパートナーから評価していただけるよう、引き続き当該資材をアピールしていきます。 

大山さん JALグループ全体の方針に対し、現場が主体となって取り組んだことにも大きな意味があると思っています。現場の生の声が企業さまに伝わり、企業さまの知識やスキルを最大限に活かすことで今回のような新たな環境配慮品を完成させることができました。

これまでストレッチフィルムは「変えたいけれど変えられない」領域でしたが、今回の経験を通じて「諦めなければ道は開かれる」「変える方法は必ずある」と思えるようになりました。今後も様々な挑戦が続くと思いますが、企業さまにお力添えいただき安全と品質を維持した資材を使用することで、当社のお客さまの想いを世界に届けていきたいです。

導入後の変化について語る大山さん(中央)

資源循環への挑戦と、これから目指す未来

サステナビリティ推進に向けた、今後の展望を聞かせてください。

大山さん 現在は、廃棄したプラスチックを回収して成田空港内で使用するごみ袋などにリサイクルしていますが、今後は、自社で使用した資材を循環させて、再び自社の資材として生まれ変わらせる取り組みを行なっていきたいです。

土屋さん クローズドループ・リサイクルの実現のためには、まだ課題は残されています。そのひとつが「素材の回収と循環」です。例えばストレッチフィルムを回収して再生利用するためには、ラベルやテープなどの混入物を取り除く分別の仕組みが必要ですが、現場ではまだ完全には徹底しきれていません。

ただ、ケミカルリサイクルの実用化と技術開発に伴い、これまでリサイクルすることが難しかった状態のプラスチックも循環させられる未来が見えてきています。三井化学さまとも、次は回収スキームまで含めて取り組みたいという話をしています。

清水さん 完璧を目指さなくても、まず一歩を踏み出してみることの重要性。これが今回の取り組みを通じて感じたことです。現場でも、最初は「本当に変えられるのか?」と懐疑的な見方もありましたが、実際に試すことで解決すべき課題が明確になり、改善の道も開けます。行動してみて初めてわかることがたくさんあります。今後はこの取り組みを社外にも広げていきたいです。物流は多くの企業が関わる仕事ですから、私たちだけでなく関連する企業の皆さまにも環境配慮の重要性をご理解いただき、業界全体で協力し合える体制を作っていくことが目標です。

大山さん 航空会社の役割は、単なる輸送ではなく、人や地域をつなぐ社会インフラです。だからこそ、その価値を未来につないでいくために、環境負荷を低減し続けることが必要です。

今回の取り組みは小さな一歩かもしれませんが、その一歩の積み重ねが社会全体の流れを変えると信じています。

土屋さん 環境配慮は特別な活動ではなく、日々の業務の中に自然に溶け込んでいくものなのだと、今回のチャレンジを経てあらためて感じています。小さな改善でも、それが積み重なると大きな変化になります。身近なところからチャレンジする、その一歩が尊いのではないでしょうか。


取材時のダイジェスト版動画も提供しています。ぜひ、こちらからご視聴ください。

※本記事は三井化学株式会社のオウンドメディア『素素』からの転載です

三井化学では、「世界を素(もと)から変えていく」というスローガンのもと、バイオマスでカーボンニュートラルを目指す「BePLAYER®」、リサイクルでサーキュラーエコノミーを目指す「RePLAYER®」という取り組みを推進し、リジェネラティブ(再生的)な社会の実現を目指しています。カーボンニュートラルや循環型社会への対応を検討している企業担当者様は、ぜひお気軽にご相談ください。

<BePLAYER®/RePLAYER®>
https://jp.mitsuichemicals.com/jp/sustainability/beplayer-replayer/beplayer

<素素(soso)>
https://jp.mitsuichemicals.com/jp/sustainability/beplayer-replayer/soso/

<ダウンロード資料>
https://jp.mitsuichemicals.com/jp/sustainability/beplayer-replayer/soso/whitepaper/

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